思いも掛けぬ懐かしい方のご来社がありました。
敬愛する城悦男氏がオーナーシェフのフレンチレストラン「VINCENT ヴァンサン」でソムリエを務められていたTさんでした。
彼と出会ったのは私と妻がまだ20代の頃です。
身分不相応でガチガチに緊張した我々の心を解きほぐしてくれたのは、Tさんのエレガントな笑顔でした。
本物の「接客」とはどういうものか、Tさんからはたくさん学ばせて頂いた気がします。
その後、Tさんは別の有名なフレンチレストランへ移られ、その後の消息は不明でした。
それが先日、突然のご来社。
「ヴァンサンでお世話になったTですが、覚えてますか?」
ええ、ええ、覚えていますとも。
あれから20年以上経ちますが、全然変わられていません。
逆に、よくぞ私を思い出してお越し下さいました、という感激の思いでいっぱいでした。
聞くと、今も変わらず都内のフレンチ・レストランで接客されているとの事。
今回は長野県内のワインのシャトー巡りが目的で、途中で私のことをふと思い出してお立ち寄り下さったそうです。
しばし思い出話で花が咲きました。
当時のエピソードをひとつ。
20代後半で妻と訪れた時、高いワインは注文できない我々の懐具合を察して下さったTさんは、「ご予算の中で素晴らしい赤ワインがあります。今は無名ですが、この先きっと評価が上がります。ぜひ飲んでみてください」
ぶっちゃけて言えば、その時の値段はフルボトルで1万円強でした。
その時Tさんに剥いで頂いたエチケット(ラベル)は大切に持ち帰りました。
「シャトー・テルトル・ロートブッフ 1987」。
このワインが世界の注目と高い評価を得ることとなり、価格も一気に高騰したのは、その直後のことでした。