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「カサンドラ・クロス」

2018.06.30

DVDでつい何度も観てしまうお気に入りの映画ってありますよね。
そんな1本の「カサンドラ・クロス」を、先日もまた観てしまいました。

初めて観たのは中学生の時。
上田の小さな映画館でした。

大好きな鉄道モノで、全編に渡って列車が舞台となる本作に大いに興奮して、その時買ったサントラのLPは擦り切れるほど聴きました。
ちなみに作曲は、映画音楽の世界ではジョン・ウィリアムスと並ぶ(と私は思っている)ジェリー・ゴールドスミスです。

物語はというと、ジュネーブのWHO本部を襲ったテロリストが誤って細菌を浴びてしまい、そのまま逃走してストックホルム行きの大陸横断特急に乗り込みます。
しかし、その細菌はアメリカが秘密裏で開発していたものだったため、アメリカ軍は列車を急遽ポーランドに向かわせ、途中、何十年も未使用のため老朽化した鉄橋「カサンドラ・クロス」で列車ごと転落させる事で、事実の隠蔽を目論みます。
それに気が付いた乗客が・・・。

私は大好きな1本ですが、でも世間や評論家の評判は決して高くない、いわゆるB級鉄道パニックアクションです。
クライマックスでカサンドラ・クロスから列車が落ちるシーンなんて、見るからにセットで、ものすごくチープ感が漂っているし。

でも好きなんだもの。

この映画を観るたびに驚愕するのは、こんなB級映画に出演している俳優の顔ぶれ。

リチャード・ハリス
ソフィア・ローレン
バート・ランカスター
エヴァ・カードナー
イングリット・チューリン
マーティン・シーン
リー・ストラスバーグ
O.J.シンプソン
レイモンド・ラブロック

ね、凄いと思いません?
しかも誰もがほぼ主役級。
何でこんなB級映画に出演を快諾したのか、観るたびに考え込む毎回です。
だって、ソフィア・ローレンやエヴァ・ガードナーがアクションしているんですよ。

とにかく私は大好きなんです、この映画。
また観ます。

「くちいわ」訪問

2018.06.23

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富山県と新潟県の境、富山県朝日町。

旧北陸本線(現「あいの風とやま鉄道」)の泊駅前に今年移転オープンした「酒蕎楽くちいわ」に行って参りました。

2年前、移転前に初訪問した時の様子は以下の通りです。

http://www.wadaryu.com/blog/archives/522.html

しかし店主の口岩さんは「ミシュラン北陸版」に選ばれた事に慢心せず、連日満席で賑わうお店を予定通り一時閉店。

ひと冬、新潟の酒蔵に入って酒造りを学び、この春、満を辞して新店舗をオープンしたのでした。

私もすぐに駆けつけたかったのですが、満席で予約が取れずに断念すること3回。
今回ようやく「くちいわ」訪問の願いが叶ったのでした。

口岩さんが目指す、蕎麦だけでなく酒も楽しめる「蕎麦屋」を堪能するために、車ではなくあえて新幹線と在来線を乗り継ぐこと2時間。
夜のオープンと同時に入ったお店は「くちいわ」ワールドに満ちていました。

座ったらまず「もり」を、と思っていた私の心を見透かすように、「和田さん、まず『もり』から行きませんか?」
それだけでシビれます。

香り高い口岩さんならではの蕎麦を堪能したあと、蕎麦前(酒肴)は口岩さんにお任せで。
と同時に、お酒もメニューの片っ端から制覇して空いていきます。

食事もだいぶ進んできたところで
「それでは次に天ぷら、いきます」

今日はメニューの隅に小さく書いてある「とうもろこしの天ぷら」が食べたいなぁと思っていたら、出てきたのはドンピシャ、そのもの。
えっ、何で分かるの?

そして「和田さん、締めの蕎麦は?」
「もちろん『かけ』で」
「ですよね」
もう以心伝心です。

「もり」とはまたひと味違った「かけ」の美味さを十分に味わったところで、時計は上田へ帰る終電の10分前。
時間の気配りにも感激です。

後ろ髪を引かれながら、店から30秒の泊駅で電車に乗り込み、糸魚川で新幹線に乗り継ぎ。
うっかり寝過ごして東京まで行かないように必死に睡魔と戦いながら、改めて「くちいわ」と口岩さんとの再開に酔いしれた一夜でした。

気力充実

2018.06.15

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1枚目:「利き酒選手権」の様子
2枚目:酒舗清水屋「大利き酒会」終了直後。
    写真中央がオーナーの小山英浩さん。
3枚目:笑四季酒造株式会社
4枚目:元坂酒造株式会社
5枚目:清水清三郎商店株式会社


週末から翌週に掛けて過密ではありましたが充実した毎日でした。

土曜日。

「アマチュア利き酒選手権上田予選会」兼「上田地酒の新酒を呑み尽くす会」開催。

定員の50人は、上田市内外から多くのお客様が参加して下さり、予約で満席。
まずは「アマチュア利き酒選手権」からスタートです。

2つのテーブルの6種類のお酒を、各5分ずつ利き酒してマッチングさせる形式で競い合うこの選手権は、1位・2位は県大会へ出場。
さらに県大会で優勝すると全国大会へと進めます。
ちなみに上田市からは過去に2人、全国大会優勝者!が出ています。

利き酒が終了して採点をしている間に「上田の新酒を呑み尽くす会」が始まりました。
各社の限定酒と美味しい料理がテーブルに彩を添えます。

そして宴たけなわとなったところで、いよいよ結果発表。
今年は何と1位が4人!
ジャンケンで県大会を決めて頂く、レベルの高い接戦となりました。

日曜日。

小海町と佐久市に2店舗を展開する酒舗清水屋さん主催の、毎年恒例の「大利き酒会」。

清水屋さんとお取り引きがある酒造メーカー各社が全国から集まります。

この会の特徴は、参加されるお客様は「マイ猪口」を持ってくる事。
皆さん心得たもので、お酒を注ごうとすると、その手元の華麗なお猪口に感嘆の声を出してしまう事もしばしばでした。
旧知の方、初めてのお客様、皆さんと会話が弾んであっという間の4時間でした。

月曜日~火曜日。

早朝から、長野県酒造組合青年部に当たる「若葉会」の研修旅行。
ちなみに私は万年旅行幹事で気が抜けません。

今年の見学先は

・笑四季酒造株式会社(銘柄「笑四季(えみしき)」)
・元坂酒造株式会社(銘柄「酒屋八兵衛」)
・清水清三郎商店株式会社(銘柄「作(ざく)」)

以上の3蔵でした。

どの蔵元も、設備や製造技術ももちろんですが、各々が持つポリシーやストーリーが非常に明快かつ簡潔で、自分たちが進むべき方向をしっかりと見定めている姿勢に大いに刺激を受けて帰って参りました。

さあ、気力充実。
これからも頑張るぞ!

「奇蹟」

2018.06.08

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私の小さな書斎の机の上に置いてある、2枚のフォトスタンド。

2枚とも、中上健次の中期の傑作「奇蹟」の冒頭です。

1枚は中上の故郷、紀伊半島の新宮を妻とともに訪れた時に、地元の方のご厚意によって入手できた、直筆原稿のコピー。
まさに「奇蹟」と言ってよい宝物です。

もう1枚は同じ箇所を文庫本からコピーしたもの。

昨夜もひとり椅子に座って、この2枚を飽きることなく眺めていました。

「俺の小説は喫茶店文学だ」
そう豪語し、集計用紙と万年筆だけを持って、喫茶店の片隅で何時間も文字を書き続けた中上健次。

酒を飲んでは無頼で破天荒な日々を繰り返し、しかし故郷新宮と、自らの被差別部落(=「路地」)出身で複雑な家系をモチーフに、ひたすら濃密で繊細な文学を生み出し続けました。

隙間なくびっしりと文字が書き込まれたこの原稿を眺めていると、そんな彼の生きざまが滲み出てくる気がして、いつまでも飽きることがないのです。

これはこれで楽しかったランチ

2018.06.02

相性の悪い店というのはあります。

東京渋谷のCホテル内にある中華レストラン「C」。
中国料理界では有名な大御所の弟子がトップシェフを務め、料理は旨いが値段もそれ相応(つまり高い)。
でもそれを承知で、このお店の料理を一度味わいたくて初めて入ったのはしばらく前の事でした。

その時は料理以前に、我々の席を担当した黒服の態度の横柄さに閉口し、支払いの際には、ポイントが付くと思って出したそのホテルのカードを「当店ではポイントは付きませんから」と、一瞥しただけで返すでもなく、トレイの上にカードを放っておかれたあの不快さは今でも忘れません。
あのまま私がカードを取らなかったらどうなっていたでしょうか。

しかし先月、そのホテルの喫茶で大切な方と打ち合わせをする前に、ランチを取るためにその中華レストランに入ったのは、ホテル内の他のお店はすべて満席だった、それだけの理由でした。

メニューを渡しに来た黒服に、あと1時間しかない事を告げ、その上で彼が選んだコースメニューを選択したにも関わらず、料理は遅々として運ばれてきません。
残り15分を切ったところでまだメインもデザートも出てこない事に痺れを切らし、「もうここまででいいから」と伝えると「あ、1時30分まででございましたね。急がせます」と優雅に振る舞う彼は気を利かせたつもりだったのでしょうが、この時点で君は全然気を利かせてないからね。

そしてほぼ同時に出てきたメインとデザート。
メインの炒飯を瞬時でかっ込み、デザートのプリンはひとくち手を付けただけで即会計。
「すみません」のひとこともなく、そのかわりに「当店は少し前からホテルポイントが付くようになりました。もしカードがございましたら」と言われた滑稽さに、カードを出しながらむしろ笑ってさえしまった、ある意味貴重なランチでした。

料理そのものは秀逸なのに、「人」で美味しさって変わるんですね。

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