だいぶ前の話ですが、出張で東京へ行った時のことです。
時折伺う銀座のワインバーに、真夜中にひとり、ふらりと立ち寄りました。
いつもならば豊富なグラスワインの中から2~3杯飲んで帰るのですが、この時はふと思い立って、このお店には日本酒は置いてないのか聞いてみました。
今思えばかなり酔っていたとはいえ、ワインバーで随分無茶な注文をしたものです。
しかしオーナーのGさんはにこっと笑って「そういうお客様を待っていたのですよ」とセラーの片隅をガサゴソ探して、おもむろにカウンターの上に1本の瓶を置きました。
それは私も大好きな、北陸の某蔵元の純米吟醸酒でした。
Gさんは未開封の栓を空けてお酒をグラスに注ぎ、黙って私の前に差し出しました。
いつ来るか分からない日本酒を頼むお客、なのにそのお酒は飲み手に心地良い最適な温度で提供され、随分と感激したものです。
それからしばし日本酒談義に花が咲き、私はいつもにも増していい気分でそのお店をあとにしました。
今思うと、それはまるでお酒とバーを描いたマンガ「レモンハート」の一コマのような出来事でした。
そのお店はその後もお客様を増やされ、今も大変繁盛されています。
先日、その系列のビストロオープンのお知らせが届いたのを機に思い出した出来事です。