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酒造好適米

2008.12.13

清酒造りに特に適した米ということで、食糧庁が各都道府県ごとに品種を特定したものが「醸造用玄米」です。
これを酒造業界では「酒造好適米」と呼んでいます。

有名なものでは兵庫県の「山田錦」から始まって、現在約80種以上の品種が選定されています。
長野県の酒造好適米は「美山錦」「白樺錦」「たかね錦」「金紋錦」「ひとごこち」の5品種です。

食糧庁による審査基準は一般のお米に比べて極めて厳格で、各種基準を満たしたものの中から更に「特上」~「3級」まで等級が分けられ、それが価格にも反映してきます。

ちなみにこの「酒造好適米」は高価で収穫量も限られているため、酒造りにはこれ以外の、いわゆる「一般米」も多く使われている事を付記しておきます。
「一般米」だからお酒の出来が劣るという事ではありません。
「酒造好適米」は、より酒造りに適しているという事であって、「一般米」でも造り手の腕でいかようにでも素晴らしい酒は出来上がってきます。

さて、それではその「酒造好適米」の特徴とは何でしょうか?
ひとことで言うと、大粒で、心白が大きく、タンパク質や脂肪が少ない、といった事が挙げられます。

「心白」とは米の中心にある白色不透明の部分の事ですが、この「心白」の部分は、米の主成分であるデンプンの詰まり方が粗く、そして軟らかくなっています。
ですので吸水しやすく、麹菌の菌糸も中に向かって伸びやすい環境にあり、その結果、麹が酵素を生成する力も強くなり、その酵素が「デンプン」を「ブドウ糖」に分解する、いわゆる「糖化」が進みやすくなるのです。

また、なぜタンパク質が少ないほうがいいかと申しますと、米に含まれるタンパク質は、麹菌が生成する酵素によってアミノ酸に分解され、清酒の旨味成分にもなるのですが、このアミノ酸が多すぎると雑味となって酒質を損ねてしまいます。

いずれにしましても、このように厳格な基準を通った「酒造好適米」を、大吟醸酒クラスになると半分以下、更には監評会出品酒クラスになると6割以上削ってしまうのですから、清酒製造とは本当に贅を尽くした、それだけに一粒たりとも無駄に出来ない「魂」の作業と言うことができるでしょう。

アルコール発酵の停止

2008.12.06

親しい方から、アルコール発酵はどのようにして止まるのか、質問がありました。確かに言われてみれば、このことは分かっているようで実はあまり理解されていない事かもしれないと思い、今回はこの質問にお答えします。

今まで何度か触れている通り、「アルコール発酵」とは、微生物である「酵母」が、「糖分(ブドウ糖)」を「アルコール」と「炭酸ガス」に分解することを言います。
仕込みの間、清酒のもろみ中にあるブドウ糖は酵母によってどんどんアルコールに分解され、それに伴ってもろみのアルコール度数も高くなっていきます。(=糖分も比例して減っていき、すなわち日本酒度も上がっていきます。)
そしてアルコール発酵が止まるという事は、言い換えればもろみ中の酵母が無くなる、あるいは死滅する事を意味しています。
ではそれはどのように成されるのでしょうか?

まず酵母は、自身が生成したアルコールによって死滅します。
通常、酵母はアルコール度数が20度まで上がると完全に死滅すると言われております。
出来上がった清酒の原酒は16度~18度ですので、アルコール発酵の途中でほとんどの酵母が死滅すると考えられます。
また、醸造アルコールが添加されるお酒は、それによってアルコール濃度が一気に高くなるので、やはり酵母は一気に死滅します。

ただ、それでもまだ生き残っている酵母はいます。
上槽(お酒を搾ること)によってもまだ残存している酵母、加えて清酒の熟成に不要な不純物(=「滓(おり)」)を取り除くために「滓引き」が行われます。

「滓引き」とは、搾ったばかりのまだ白濁しているお酒を数日間静かに置いて、タンクの底に沈殿した「滓」を取り除く操作を言います。
清酒タンクの下部には、お酒を出し入れする穴が上下2個付いています。
上の口を「上呑(の)み」、下の口を「下呑み」と呼びます。
「滓引き」はその「上呑み」を使って、清澄な上澄みだけを静かに別のタンクに移す操作です。
この事によって、残存酵母もきれいに除去されていきます。
「滓引き」は清酒が健全に熟成するために、欠かすことのできない過程です。

食べちゃダメ!

2008.11.29

酒造りのこの時期になると、そこに携わる者は口にしてはならないと言われる食品があります。
私も大好物ですが、この時期は我慢して断念しています。
何だか分かりますか?

答えは納豆です。
お酒造りに欠かせない麹菌、そして納豆を作るときに用いる納豆菌、とぢらも同じ微生物なのですが、両者とも繁殖に適した温度帯が似通っていて、しかも繁殖力は納豆菌が非常に強いので、麹菌の中に納豆菌が入り込むと麹菌を駆逐してしまうのです。
もし朝食に納豆を食べて、うっかり体や洋服に納豆菌を付けたまま麹室に入ってしまうと、納豆菌が繁殖して麹そのものが汚染されてしまう、なんて事にもなりかねません。
今はたいぶ耐性の強い麹菌が出ていて、以前より納豆菌による汚染の心配はなくなりましたが、それでも心構えとして、そして万が一を考えて、納豆は食べないという考え方が一般的だと思います。

実際に納豆菌が繁殖するとどうなるのでしょうか?
こればかりは聞いたり調べたりするしかないのですが、麹菌が納豆菌に汚染されると、文字通りヌルヌルと粘り気が出て、しかも殺菌に対して非常に抵抗力を持つようになるので、一度麹室に繁殖してしまうと除去が非常に難しいそうです。

もし皆さんがこの時期、どちらかで蔵元見学をされる時は、朝から納豆は控えて下さいね。

信濃グランセローズ

2008.11.22

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2年前に発足した、北信越の6チームが競うBCリーグ(ベースボールチャレンジリーグ)、我が長野県では地元球団として「信濃グランセローズ」が活躍しています。
先日、私もPTA役員を務める地元の小学校に、「PTA講演会」の講師としてその「信濃グランセローズ」をお招きしました。
私が初めて球団にお声掛けしたのがちょうど1年前、球団からご快諾の返事とその後も大変誠意あるご対応を頂き、1年越しの準備を重ねてようやく迎えた今日この日でした。

お越し頂いたのは球団社長の三沢今朝治氏、そして選手を代表してピッチャーの小高選手・キャッチャーの中村選手・内野手の市川選手の3名でした。

ちなみに「PTA講演会」は普段は保護者のみを対象として行われるのですが、この日はせっかくこのようなゲストが来るのだからと、子供たちも一緒に参加しての開催となりました。

最初は三沢球団社長により、「夢をあきらめない」というタイトルでご講演を頂きました。

その三沢球団社長ですが、現役時代は東映→日拓→日本ハムで活躍され、その後は日本ハムファイターズのフロントに就任、中でも球団を北海道に移転させた時の中心人物として名を馳せていらっしゃいます。
また新庄が日ハム入りする際に最初にコンタクトを取ったのもこの方です。

タイトルの「夢をあきらめない」、これは信濃グランセローズの選手たちがいつかNPB(日本野球機構・いわゆる日本のプロ12球団)でプレーすることを夢見て日々どん欲に野球に取り組む姿勢を紹介しながら、また三沢社長ご自身のプロ生活を振り返りながら、皆さんも夢をあきらめないで頑張って下さい!という熱いエールによって締められました。

続いて今度は現役の選手3名が登場して、子供たち相手にミニ野球教室が開かれました。
まずは保護者も参加してのストレッチ教室、小高投手の巧みな話術に場内は既に湧いています。
そのあとは野球の基本ともいえるキャッチボールを見本を見せながら指導。
そしてバッテリーが実際にストレートや変化球を織り交ぜながら投球を披露して、そのスピードと迫力に場内からは歓声が上がりました。
さらには代表の児童たちがステージに登って、ゴロの裁き方、素振りの仕方など、選手からマンツーマンで教わったのですが、ここでも場内を飽きさせない選手の皆さんの話術で、皆が一体となって楽しむことができました。

最後は会場の出口で球団社長と選手の皆さんが子供たちとハイタッチ、楽しいひとときがあっという間に過ぎていきました。

日頃はなかなか触れ合うことができない本物のスポーツ選手と触れ合えたこのひとときは、子供たちにとっても貴重な思い出となると思います。
と共に、来季はまた少しでも球場に足を運ぶ親子が増え、信濃グランセローズ、ひいては長野という地域がより活性化することを願っています。

滓下げ

2008.11.15

お酒をビン詰めする前、「滓(おり)下げ」という作業を行うことがあります。
これはお酒に溶け込んでいるタンパク性の混濁成分を除去する作業です。
弊社も大仕込みのお酒で時間が立って熟成してきた場合に、酒質に応じて行う時があります。

火入れ(清酒を65℃前後に加熱して殺菌する作業)をして貯蔵したお酒は、その間に次第に透明感が悪くなり、時として薄く濁ってくる場合があります。
これは、お酒の中に溶け込んでいる糖化酵素(麹菌によって生成される。タンパク質の一種)が「火入れ」によって不溶性の物質に変性し、貯蔵中に濁りとなって出てくるからです。
この滓を沈殿させる作業を「滓下げ」といいます。

「滓下げ」の方法ですが、弊社の場合、柿シブとゼラチンといった「滓下げ剤」を使っています。
柿シブの持つタンニンはタンパク質を凝固させる力が強いので清酒中の滓を固め、そこにさらにタンパク性物質のゼラチンを投入することで、先程固まったタンパク質と一緒に絡めて、滓下げ剤自体を滓として沈殿させてしまうのです。

ただやはり、これは個々の考え方ですが、「滓下げ」は清酒中のタンパク質を除去するわけですから、酒質が多少なりとも変わることを考えれば、行わないことに越したことはありません。
最初に申し上げた通り、弊社の場合もあくまでも大きな仕込みでしかも熟成が進んだものに限定しており、吟醸クラスのものには行っておりません。
大切に醸したお酒をあくまでもその状態のままでお客様に提供する、そういう意味では「無濾過」に通じるところがあります。

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