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焼酎とお米

2008.09.24

このたび大変問題になっている残留農薬米の件ですが、清酒・焼酎業界には激震が走りました。
弊社にも問い合わせがあり、その都度お客様に「安全宣言」を出すなど、対応に追われました。
事態はようやく収束に向っていますが(善し悪しは別にして)、この一件に絡んで時折聞かれたことに、芋などの本格焼酎にも米を使っているのですか、という質問の声がありました。
今回はそれについてお話しします。

余談ですが、米焼酎・芋焼酎・麦焼酎などの「本格焼酎」は、酒税法上はしばらく前まで「乙類しょうちゅう」と呼ばれていましたが、平成18年の酒税法改正で「単式蒸留しょうちゅう」と名称が変更されました。

さてその本格焼酎、米焼酎以外の焼酎にもお米は使われています。
それは原料中のデンプン質をブドウ糖に変える「麹」が必要なためです。

以前このブログでも触れましたが、「アルコール発酵」の原理とは、ブドウ糖が酵母の力でアルコールと炭酸ガスに分解される事をいいます。
しかし、例えば清酒だと原料となるお米には糖質がないため、米中のデンプンをブドウ糖に変える必要があり、その役割を果たすのがお米に麹菌を生やした「麹」なのです。
麹が生成する糖化酵素「アミラーゼ」がデンプンを分解してブドウ糖を作り出し、そこで初めて酵母による「アルコール発酵」が可能になります。
図式では以下の通りです。

デンプン → ブドウ糖 → アルコール・炭酸ガス  
       ↑       ↑
  麹が作る糖化酵素  酵母

これは焼酎にも当てはまり、芋や麦といった原料で仕込む前に、まずアルコール発酵に必要なブドウ糖を作り出す「麹」、ひいてはお米が必要なのです。

ただ、清酒と焼酎では用いられる麹菌の種類が違います。
清酒製造に使われる麹菌は「黄麹菌」ですが、焼酎には多量のクエン酸を生成する「白麹菌」が使われています(また沖縄の「泡盛」に使われるのは「黒麹菌」です)。
このクエン酸が、もろみの雑菌の繁殖を押さえる大切な役割をします。
ちなみに清酒では、同じ役割を果たすのが乳酸です。

本醸造って?

2008.09.16

秋の気配がいよいよ感じられ始めた今日この頃。
信州上田という場所柄もあり、弊社にも多くの観光のお客様がご来店されます。
そしてお時間があるお客様には、(もちろん運転されないことを確認差し上げた上で)心行くまでお酒のご試飲をして頂きます。
その際にお客様からいろいろなご質問を頂くのですが、正直に申し上げますと、お酒のラインナップもいろいろある中で一番お客様にとって分かりにくく、私も説明しづらいのが「本醸造」というお酒です。

ちなみに「本醸造」の酒税法上の定義は以下の通りです。
・原材料は米・米麹・醸造アルコール。
・精米歩合は70%以下。
・香味・色沢が良好である。
・醸造アルコールの量は白米の重量の10%以下(白米1トンに対して100%アルコール116.4リッター以下)とする。

全然分からないでしょう?
特に4点目。
要は添加する醸造アルコール量を普通酒よりも少なめにしっかり制限してますよ、という事なんですけど、お客様にとってはまるっきり意味不明ですよね。

例えば「吟醸酒」なんかは、「精米歩合60%以下。すなわちお米の4割を削って6割以下の大きさにしたお米だけを使用したお酒は全部『吟醸酒』です。でもその味わいは千差万別。あとはお客様の好みでお決め下さい」なんて説明できるのですけれど、「本醸造」は捉えようがなくて難しいです。
「本醸造」の定義にある「精米歩合70%以下」のお酒なんて、今は当たり前ですし。

あえて「本醸造」を私なりにお客様に分かりやすく説明するとすればこんな具合でしょうか。
「原材料の一部である醸造アルコールを添加する量を制限したお酒です。これをじゃぶじゃぶ入れ過ぎてしまうとコストの安い三増酒になってしまうのですけど、しっかりと造り上げたお酒に少量を入れることでそのお酒に軽快さが増して、飲みやすくさらりと飲み飽きしないお酒になるのです」
時にはこんな説明も加えます。
「醸造アルコールはコーヒーで言えばミルクの役割でしょうか。例えばブラックのコーヒー(=純米酒)は豆の味わいや風味がストレートに分かりますけれど、それが強いとか苦手と感じるお客様もいらっしゃいます。そんな時、ごく少量のミルクを加える事で、コーヒーそのもののスタイルは残したまま味わいは優しく、そして飲みやすくなります」

でも結局一番お客様に分かって頂けるのは、「本醸造」がどういう定義なのかではなくて、我が社の「本醸造酒」はこういう特徴です、というそのものズバリの説明なんですね。
「お酒本来の味わいをしっかりと残しながらも、口当たりは軽快で喉越しも抜群。ですので何杯飲んでも飲み飽きしません。
これからは『食欲の秋』ですから食事と一緒に召し上がって頂けると料理もお酒もより一層引き立ちますよ。せっかく信州上田にいらっしゃるのですから名産の松茸をはじめとしたキノコ料理、あるいは香り高い新そば、かような素材本来の持ち味をしっかりと活かした料理と合わせて頂ければ相性抜群です。和食だけでなくバターやクリームを使った洋食にもよく合います。例えばこの季節の鮭を使ったムニエルなんかもいかがでしょうか?」
こんな具合です。

和Cafe&和Diningオープン

2008.09.09

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この7月、東京の代々木上原に素敵なお店がオープンしました。
和Cafe&和Dining「木花(このはな)」。

昼間はカフェとして、純国産天草100%使用の寒天はじめ、どの素材も上質の国産を使い、ひとつひとつ手作りで生み出されたオリジナルのスイーツやあんみつ・しるこ・パフェなどを気軽に楽しめるお店です。
またテイクアウトも用意されています。

夜は和食処として、天然鯛・比内地鶏・旬の野菜など、こちらも素材と産地にとことんこだわった「和」の料理の数々がメニューを飾ります。
出自のしっかりとした食材と、そして経験に裏打ちされた料理長の技術とのコラボレーションで作られるお皿の数々は、どれも和食のおいしさ、素晴らしさを改めて感じさせてくれる逸品ばかりです。
もうひとつ特筆すべきはお酒のラインナップ。
日本酒・焼酎・ワイン・梅酒など、厳選された数々のお酒が、コストパフォーマンス抜群の価格で提供されます。

サービスも担当する女性オーナーの若松さん、「なだ万」に長く在籍し和食の腕を磨き上げた料理長の月山さん、そして手間隙かけて丁寧にスイーツを作り出す和菓子職人の後藤さん、この若い3名の「和」が店内の空気としてさり気なく滲み出ていて、それがまたこのお店の居心地のよさに繋がっています。
お近くの方はぜひ一度、気軽に足を運んでみてください。
小田急線代々木上原駅から徒歩3分です。

「木花」
渋谷区西原3-2-4 フロンティア代々木上原1F
営業時間 11:00~22:30
定休日 火曜日
電話番号 03-6903-4506

東広島「2008酒まつり」

2008.09.03

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毎年10月に行なわれている東広島市の「酒まつり」、今年も10月11日(土)・12日(日)に開催され、弊社も出品します。
平成2年から始まったこのイベント、会場の西条中央公園には全国の地酒約900銘柄が一同に集まり、例年20万人が来場するという、そのスケールの大きさに圧倒されます。

日本で唯一お酒に関する国の研究機関である「独立行政法人 酒類総合研究所」があることでも知られる東広島市、酒どころ広島県が活況を呈している様子が伝わってきますが、実は私にとっても広島県は大変思い入れが深い場所であります。
と申しますのも、私が公私ともどもお世話になっている若手の蔵元が何人か広島県にいらっしゃるのです。
福山市「天寶一(てんぽういち)」、呉市「宝剣」、東広島市「富久長」、東広島市「加茂金秀」、これらの蔵元がその方々なのですが、皆さん経営者兼杜氏あるいは製造責任者として日々邁進されています。

私がこの方々と知り合ったのは数年前なのですが、いつもお目にかかるたびに日本酒に掛ける思いや製造技術のあれこれを教えて頂き、そして話すたびにたくさんの勇気と元気を頂戴しております。
毎年一度は、以前このブログでもご紹介した上田市の隣に位置する青木村田沢温泉「ますや旅館」に皆さんお越し下さり、名湯や素晴らしい料理を堪能しながら公私入り混じっての様々な話題で盛り上がります。
逆に2年前には、ぜひ一度広島まで勉強に来ないかというお誘いを頂いて私が広島の地に赴き、皆さんの蔵をひとつひとつ見学させて頂きながらたくさんの事を学ばせて頂きました。

かような訳で、私にとって広島とは、またひとつ思い入れの深い県であります。
余談ですが、尾道市を見下ろすようにそびえる山の頂上にある千光寺公園、そこから眺めた瀬戸内海の素晴らしい景色は忘れません。

苦汁の決断

2008.08.26

秋を目前に向え、清酒はいよいよ「ひやおろし」の時期になって参りしまた。
「ひやおろし」とは、冬に造った清酒をひと夏越えて寝かせ、秋口に入ってほどよい熟成状態で出荷する清酒のことを言います。
そして、酒税法上の厳密な決まりはありませんが、通常は、お酒を搾った直後に一度だけ「火入れ」をして出荷前には「火入れ」を行なわない「生詰」の状態のものを指します。

ちなみに清酒は普通、搾った直後に一回、そして出荷前にもう一回、合わせて2回「火入れ」と呼ばれる加熱処理を行います。
対して、一度も「火入れ」を行なわないものを「生酒」と呼び、搾った直後の「火入れ」は行なわず出荷前のみ「火入れ」を行なうものを「生貯蔵酒」と呼びます。
「生酒」「生詰酒」「生貯蔵酒」の違いはそこにあります。

さて、その「ひやおろし」ですが、弊社は今年も悩んだ末に発売を見送りました。
今「ひやおろし」は清酒の需要拡大のために、長野県酒造組合も発売日を9月9日に統一するなど業界上げての取り組みとなっています。
ですので当然弊社としても追従しなければならないのは山々なのですが、ではなぜ発売を見送ったか?
「ひやおろし」として製造・貯蔵したお酒がないからです。

上で申し上げた通り、「ひやおろし」の定義は「ひと夏越えて熟成したもの」そして「生詰酒」、たったこれだけですから、この条件に合致するお酒はもちろんあります。
でも、仮にその商品に「ひやおろし」の肩書きを付けて発売した時に、従来の商品と何が違うのか、この説明を自信を持ってすることができないと思ったのです。

例えば同じお酒でも、通常は冷蔵貯蔵しているものを、「ひやおろし」で出荷することを念頭に置いて一部を常温で熟成した、そしてその結果秋にこそ飲んでふさわしい味わいに熟成した、これならば胸張って商品として出荷できます。
そして多くの蔵元さんは、方法は違っていても、このように「ひやおろし」として出荷することを目的として、それ用のお酒を貯蔵管理している事と思います。
弊社は少量少品種のため、特に特定名称酒は一種類の数量が限定されていることもあって、それを更に「ひやおろし」として枝分けするという事が物理的にも気持ちの上でも困難なのが実情です。

ただ、「ひやおろし」を出してほしいというお客様の声がここに来て多く届いているのも事実です。
今年はこのような苦汁の決断をしましたが、来年は秋口にたっぷりと旨味が乗った「ひやおろし」のお酒を前向きに検討していきたいと思っています。

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