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しぼりたて生原酒

2009.02.07

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本年度の「和田龍純米無濾過しぼりたて生原酒」、季節限定で発売中です。

今年もいい出来です。
まず香りですが、顔を近付け深く吸い込むと、フルーティな芳香がふわりと感じられます。
柑橘系というよりは、バナナや桃を思わせる甘く優しい香りが、心地よく鼻腔をくすぐります。

続いてひと口含むと、まずは新酒ならではのフレッシュな軽快さが感じられます。
ほのかな渋味や苦味も合わさった新酒ならではの味わいが、さらりと舌の上を流れます。
そのあとすぐに、ふわりと柔らかな味わいが口の中いっぱいに広がります。
上品な甘さと適度な酸とがあいまったふくらみあるボディが、口の中で踊ります。
ゴクリと飲み込んだあとも香りと味わいの余韻が心地よくあとを引き、またひと口運びたくなること請け合いです。

この「しぼりたて生原酒」、今の時期でしたら鍋料理との相性は抜群です。
具財は肉でも魚でもどちらでもOK。
お出汁も含めて鍋料理が持つ力強さと、このお酒が持つ繊細かつ力強いスタイルとが見事にマッチする事と思います。
ふたつを合わせることによって料理とお酒、両方の味を引き立たせ、そしてお酒で口中を洗い流したあとはまたひと口、次の料理を運びたくなってしまうのです。

和田龍純米無濾過生原酒

・1.8L:2520円 / 720ml:1260円(どちらも税込)

・原材料:米・米麹
・精米歩合:70%
・使用酵母:協会901号
・アルコール度数:18.9度
・日本酒度:+3
・酸 度:2.0
・アミノ酸度:1.8

「夏の闇」

2009.01.31

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清水の舞台から飛び降りたつもりで購入してしまいました。
開高健「夏の闇・直筆原稿」。
限定700部。

何気なく朝刊を読んでいたらこの本発刊の記事を目にして、そうしたら居ても立ってもいられずに、発行元の開高健記念館まで問い合わせのメールを出していました。

ご存知のように開高健(かいこう・たけし/本名です)は日本を代表する現代小説の第一人者です。

サントリー勤務時代には、既に小説家としての片鱗を垣間見せる名キャッチコピーをいくつも生み出し、同時期、絵画の先生とそこへ通う生徒との交流を通して生徒の自己解放と現代社会への痛快なまでのアイロニティを描いた傑作「裸の王様」で芥川賞を受賞しました。

その後、朝日新聞の臨時特派員としてベトナムの戦地へ赴き、200名のうち生還者わずか十数名という壮絶な体験をもとに描いた3部作のうちの第2作が今回の「夏の闇」です。
ちなみに開高健はのちのエッセイで、「ベトナムで生き残れたことで、その後の人生は余禄と思っている」といった内容の発言をしていたと思います。

円熟期を迎えた開高健は、緻密で濃密な作品を発表する傍ら、自身の趣味でもある「食」「酒」「釣り」を題材とした良質なエッセイやノンフィクションを次々に執筆、時代の寵児として益々注目を浴びるところとなります。

「週刊プレイボーイ」で「風に訊け」というコーナーを受け持ったのもこの頃で、読者からの質問に開高健が痛快無比な回答を数々残したこのシリーズは単行本にもなっています。
私の記憶に残っているひとつとして「開高先生は血液型はお信じになられますか?」という質問に対して、「お信じにならない。血は信じるが型は信じない」。
思わず痺れました。

残念ながら癌を患い58歳の若さで急逝、しかしその功績は現代文学に多大な足跡を残し、氏が住んだ茅ヶ崎には「開高健記念館」が開設させています。

開高健が愛用の万年筆で記した原稿は、一文字一文字丁寧で読み易く、これもエッセイで読んだのですが、氏は小説の執筆に行き詰ると原稿を一々冒頭から丁寧に書き直していたそうです。
そしてその事によって、それから先の展開が思い浮かぶのだとか。

今回発行されたのは、そんな開高健の名著「夏の闇」の直筆原稿が全ページ再現された特別愛蔵版とのことで、在庫がまだある事を確認して早速申し込み、到着を指折り数えて待ちました。

そしてついに本が届いたその時、まず驚いたのはその大きさ。
正直なところ、直筆原稿に縮小を掛けたせいぜいÅ4判ほどのものと思っていたのですが、実際に届いたのは両手で抱えるほどの原稿用紙実寸大の大きなもの。
それが綴じられる事なく、一枚一枚独立した原稿用紙そのままの形で、しっかりと封をされて箱に入っているのです。
開ける時、思わず手が震えてしまいました(笑)。
そして丁寧に記された開高健の肉筆を目の当たりにして、開高氏の生前の息吹と、そして氏の作品と共に過ごしてきた私のたくさんの思い出とが瞬時に蘇った、そんな気がしました。

酒母とは?

2009.01.23

清酒の製造工程は非常に複雑で、初めての方にとってはなかなか理解できないであろう部分がたくさんあります。
そのひとつに「酒母」があります。
「酒母」とは何か、今回はそれを簡単にご説明します。

「酒母」とはひとことで言うと、もろみが健全に育つために、その前段階として造られる、多量の優良酵母と乳酸とを含む原液(語弊があるかもしれませんが)といえます。

他の酒類と異なる清酒の大きな特徴に「開放発酵」があります。
ワインやビール等は密閉されたタンクで仕込まれるのに対し、日本酒のタンクは開放された状態、つまり常に外気に触れた状態で仕込まれます。
という事は、清酒のもろみは育っている間、常に空気中の雑菌に汚染される危険に晒されている事を意味します。
その危険からもろみを守るために造られるのが「酒母」です。

原理としては、まず酒母中に多量の優良酵母を培養することで、空気中の雑菌よりも絶対的「数的優位」を保ち、さらには酒母中に多量の乳酸を含むことで、その乳酸酸性が雑菌の増殖を抑えます。
その「酒母」をもろみの仕込み初日に加える事により、もろみは薄まる事なく、つまりもろみ中の酵母は外敵から守られた状態で、健全なアルコール発酵を司ることができるようになるのです。

ちなみに乳酸は、麹の糖化力を弱めることなく、加えて他の有機酸に較べて雑菌を抑える力に優れています。
酒母中でその乳酸をどのようにして得るか、それが酒母、ひいては清酒そのものをふたつに大別します。

酒母中に自然界の乳酸菌を取り込んで繁殖させ、乳酸を生成する酒母を「生酛(きもと)系酒母」といいます。
これは古来から行われてきた方法で、多大な時間と労力とを必要とします。
詳しい説明は省きますが、よく耳にする「山廃酒母」もこの「生酛系酒母」に含まれます。

対して、最初の段階で乳酸を添加して乳酸を得る酒母を「速醸系酒母」といいます。
これは文字通り育成日数や労力も少なく、そして一定の品質が得られるもので、現在の清酒のほとんどはこの「速醸系酒母」です。

ただし、今の時代あえて手間隙掛けて、昔ながらの「生酛」に挑戦しようと果敢に挑んでいる蔵元がかなり増えています。

大賀ホール「春の音楽祭」

2009.01.17

ソニーの名誉会長・大賀典雄氏が私財を投じて軽井沢町に建造したコンサートホール、その名も「大賀ホール」、ゴールデンウイークに開催される毎年恒例の「春の音楽祭」、今年のラインナップは?と思いHPを覗いてみると、オーケストラの指揮が小林研一郎である事を発見し、「おっ」と思ったのでした。

ちなみにこの「春の音楽祭」、オーケストラをはじめとして、バイオリンやピアノのソロ、ウイーン少年合唱団によるコーラス、あるいは昨年は布施明で今年は渡辺貞夫などポップスやジャズ、連日様々なジャンルのコンサートが開催されます。
そうそう、大賀典雄氏ご本人もその中の1日で、オーケストラの指揮を振るのも恒例です。

そんな多彩なプログラムからオーケストラ編成によるコンサートはというと、2年前は金聖響、昨年は大友直人という名だたる指揮者が登場しているのですが、今年登場の小林研一郎、彼は私がまだ東京にいた頃、大好きで本当によく足を運んだ指揮者のひとりでした。
当時はまだお金がなくていつも一番安い席でしたが、それでも小林研一郎が生み出す演奏のダイナミズムと繊細さは、彼が演奏中に実際に吐き出す大きな息の音と共に、心の奥にいつも大きなインパクトと感動を残しました。

とりわけ思い出に残るのは、十八番であろうベルリオーズ「幻想交響曲」、チャイコフスキー「交響曲第5番」、マーラー「交響曲第2番<復活>」あたりでしょうか。
特に二十歳を過ぎた頃、東京文化会館とサントリーホールで連夜聴いたマーラーの「復活」はそれはそれは素晴らしく、不覚にも涙がこぼれそうになったのを覚えています。
余談ですが、小林研一郎は愛棋家としてもつとに有名で、その時は彼と交流のある将棋棋士の青野照市九段が私の隣に座っていて、恐る恐る声を掛けたのもいい思い出です。
また、今では随分とメジャーになったカール・オルフ「カルミナ・ブラーナ」を、まだまだ巷に知られていない頃から演奏していたのも小林研一郎ではなかったかと思います。

上田に帰ってきてからは久しく聴きに行っていない小林研一郎の名前を、思いも掛けず身近な会場で発見して、できればぜひ足を運んでみたいと思っています。
まだ曲目等は発表されていませんが、誰のどの曲を振るのでしょうか。

金紋錦100%を飲みました。

2009.01.11

自宅で晩酌する時は、できるだけいろいろな蔵元のお酒を飲んでみようと心掛けています。
今現在、食卓に並ぶのは全部で5銘柄。
長野県が2銘柄、富山県、静岡県、山口県が各1銘柄です。
これをずらりと食卓の脇に並べて、食事と一緒に飲み比べています。
ちなみに前回のブログで書いた広島のお酒は、3日間で空いてしまいました。

その中の長野県の銘柄で、今回久々に「金紋錦」100%のお酒を味わいました。
ちなみに「金紋錦」とは、山田錦とたかね錦とを交配させて作られた長野県の酒造好適米で、絶滅寸前であったのをいくつかの蔵元の熱意で復活するに至った、いまだに収穫量もわずかなお米です。

さて、飲んでみての感想ですが、ひと言、おいしい!です。
まず、生クリームを思わせるような柔らかな味わいが口いっぱいに広がって、それを口の中で転がしていると、その味わいが奥深くどんどん膨らんでいきます。
と同時に、きれいな「酸」を舌の上に感じて、そのバランスの良さに思わず唸ってしまいます。

そして驚いたのが料理との相性。
その日の食卓は、生産者直送の焼き海苔、ほうれん草のおひたし、そして猟をした方から直送して頂いた猪の鍋などを囲んでいたのですが、この「金紋錦」の原酒生酒はしっかりと個性を主張しながらもどの食材に対しても邪魔をしない。
本当にすいすいと食事とお酒とが進むのです。
肴をつまんでお酒を飲むと、両方の味わいがあいまっておいしさが増し、そしてお酒の酸で口の中がきれいに洗われて思わず次のひと口が進んでしまう、これが「相性が良い」という事なのかと感動することしきりです。
1時間後には飲み過ぎて、完全に虎になっておりました。
そしてこのお酒も、大切に飲みながらも結局3日で空になってしまいました。

もちろん「金紋錦」というお米も素晴らしいのですが、その個性をしっかりと酒質に反映させた造り手に対しても、改めて拍手!です。

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