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「和田龍 新酒を味わう会」

2009.06.06

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去る6月3日(水)、毎年恒例の「和田龍 新酒を味わう会」を今年も上田市内のパーティ会場にて開催致しました。
本年で23回目を迎えるこの会、日頃から公私ともどもお世話になっているお客様100名をお招きして、今年もお酒やお料理や音楽を存分にご堪能頂きました。

開宴時間の午後6時半、乾杯の前にまずはゲストによる音楽をお楽しみ頂きます。
今年お招きしたのは昨年に引き続き、日本におけるエレクトーン奏者の第一人者、神田将(ゆき)さん。
昨年ご出席された大勢の皆様から熱烈なアンコールを受けて、再度のご登場です。

エレクトーンというと、まだ多くの方は結婚式場などでBGMとして流れるあのフカフカした音を思い出されるかと思いますが、現代エレクトーンは全くの別物。
最新の電子技術を駆使し、たったひとりでフルオーケストラの演奏をすべて表現し得る、最新鋭の楽器なのです。
その演奏を初めて聴かれた方は、圧倒的な表現力と音色とに衝撃を覚えること請け合いです。

この日神田さんに演奏頂いたのは次の5曲。
・歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」(サン・サーンス)
・歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」(プッチーニ)
・歌劇「カバレリア・ルスティカーナ」より「間奏曲」(マスカーニ)
・「リバーダンス」(タップダンス劇「リバーダンス」より)
・「フィンランディア」(シベリウス)

これらの曲目が神田さんの軽妙なトークと共に繰り広げられ、エレクトーンの音色と神田さんのテクニックとに酔いしれた40分間でした。

そしていよいよ乾杯。
この日お出ししたお酒は下記の6点。
・和田龍大吟醸(冷蔵)
・登水(とすい)吟醸・原酒生酒(冷蔵)
・登水(とすい)純米・原酒生酒(常温)
・和田龍吟醸生酒(冷蔵)
・清酒和田龍(熱燗)
・和田龍にごり酒(冷蔵)

まず乾杯のお酒として「和田龍大吟醸」。
「新酒の会」ではありますがあえて1年半寝かせた「熟成酒」をお出しし、飲み頃のピークを迎えた大吟醸の醍醐味をお楽しみ頂きました。
お酒によって新酒で味わうもの、あるいは寝かせて味わうもの、そんなスタイルの違いがある事をお分かり頂ければと思いました。

続いて「登水・吟醸」と「登水・純米」は2本同時にお出しして、シャープな「吟醸」と柔らかな「純米」の味わいの違いを感じて頂きました。
特に「登水・純米」は、その膨らみを存分に感じて頂くために、「生酒」ではありますがあえて常温でご提供致しました。
冷たいままですと、どうしても甘さが閉じこもってしまい、このお酒の真価が発揮できないと思ったからです。

続いては当社の冷酒の定番、さらりと軽快で爽やかな「吟醸生酒」と、やはりすっきりした飲み口の当社のレギュラー酒「清酒和田龍」をこちらは熱燗にて、これまた同時にお出ししました。
今は燗と言うと「人肌燗」や「ぬる燗」に人気がありますが、「清酒和田龍」はその軽快な酒質からもあえて「熱燗」の方が真価を発揮すると考えまして、アツアツの「熱燗」にてのご提供です。

そして最後に「和田龍純米にごり酒」。
こちらはお肉やデザートと合わせて、締めの一杯としてお出ししました。
当社のにごり酒はあえて「にごり」をたっぷりと出しているので、こんなにごり酒は濃くて飲めないという方が半分、反面このにごり酒しか飲めないという方が半分の個性的なお酒です。
皆様はどうお感じになったでしょうか?

乾杯から場内は心地よいざわめきに包まれ、途中「和田龍グッズ」(「生酒グラスセット」・「和田龍エプロン」・「和田龍トートバッグ」・「和田龍豆樽」)が当たる抽選会を挟み、最後はアンコールによる神田さんの再度の演奏を聴きながら、時間を見ると時計の針は既に9時前を指しておりました。
皆様のおかげを持ちまして、今年も「和田龍 新酒を味わう会」が無事お開きとなりました。

皆様をお見送りしているとBGMとして流れてきたのが、神田さんの演奏による「タクシードライバー」のテーマソング。
個人的に大好きな1曲で、思わず心の中で「ブラボー!」を叫んでしまいました。

そしてそこからが更にサプライズ。
何と社長のお仲間がずらりとステージ前に勢揃いして、昨年も繰り広げられた、神田さんの伴奏による「青い山脈」の大合唱が今年も始まりました。
中には私がお招きした若いお客様の姿もちらほら。
大声で歌うその楽しげな皆様のお姿を拝見するに付け、何だかこちらまで無性に嬉しくなってきて、最後の最後にほっと緊張の糸が解けた一瞬となったのでした。

皆様のおかげで今年も無事終了した「和田龍 新酒を味わう会」、100名という大勢のお客様が集まって頂いた事への感謝の気持ちをしっかりと噛み締め、これからもおいしい日本酒をお召し上がり頂けるために頑張っていきたいと思います。

清酒の色

2009.05.30

お酒には色があります。
搾った直後のフレッシュなお酒でも、タンクの中を覗けばきれいな淡黄色が確認できます。
これが熟成を重ねていくと、タンク貯蔵でもビン貯蔵でも、少しずつ着色が増していきます。

熟成による着色の原因は今も完全には解明されていません。
しかし主に、清酒中の糖類とアミノ酸とが反応して着色物質を生み出す「アミノ・カルボニル反応」によるものとされています。

また、熟成中のお酒の温度が10℃上がると着色の速度は3倍速くなると言われています。
上でも触れましたが、糖やアミノ酸が多い、いわゆる濃度の高いお酒は、その速度は更に速くなります。
今、メーカーや酒販店がしっかり冷蔵管理をしているのは言うまでもなく品質管理が目的ですが、その中のひとつとして着色を極力押さえる事も含まれるのはもちろんです。

いずれにしましても、お酒には色はあるのです。
何が言いたいかというと、日本酒には程度の差こそあれ、ある程度の色があるのが自然で、決して無色透明ではない事をお分かり頂きたいのです。

お酒を無色透明で提供できるのは、ひとつに「炭素濾過」という技術を使うことに所以します。
「炭素濾過」とは、搾ったお酒に活性炭を入れ、炭素の表面に空いた無数の細かな穴に着色や雑味の原因となる物質を吸着させて、それをそっくり濾過してしまい、お酒に付いた色や雑味を除去する方法です。
同じお酒でも濾過する時期によって色や味は変わるので、その都度投入する炭素の種類や量を調整します。
この「炭素濾過」によりお酒は清澄でクリアな味わいとなりますが、炭素を入れ過ぎるとそのお酒本来の個性や味わいも削り取ってしまう、いわば諸刃の剣です。

昨今は、特にいいお酒になればなるほどこの炭素濾過を行なわない、即ち「無濾過」にこだわる蔵元が増えています。
蔵元の意識と醸造技術の向上、そして酒販店や消費者のニーズ、双方によって、搾ったまま極力手を加えないお酒が支持されるようになってきた事が一因です。
そして何度も申しますが、それに伴い「お酒には本来色がある」という事が一般的に認識されてきた事は本当に嬉しい限りです。

ちなみに弊社は、レギュラー酒クラスでは「炭素濾過」を行なっております。
広く顔の見えないお客様にも安定した品質のお酒をお届けしたいと思うからです。
しかし反面、炭素濾過を行なわないお酒は、多少の差こそあれ色があるにも関わらず、それに関するクレームが一切来ないのは本当に嬉しい限りです。
これは流通の先頭に立っている酒販店や飲食店の皆様がしっかりと説明して下さっている事と、消費者の皆様も日本酒を理解しようと勉強して下さっているおかげだと思っています。

憧れのグランメゾン

2009.05.23

先日出張で東京へ行った折、日頃から公私ともども大変お世話になっている方からランチのお誘いを頂きました。
喜び勇んで、待ち合わせ場所のJR有楽町駅で落ち合いそこから歩いてほんの数分、連れていって頂いた先が・・・思いも寄らぬ感動の一軒でした。

有楽町「アピシウス」。
フランス料理界を代表する老舗のグランメゾンです。
同じ銀座・有楽町地区では「レカン」「ロオジェ」などと共にいつか一度は行きたいと思っていた憧れのお店だっただけに、まさかその日が今日訪れようとはと、地下へと続くお店の入り口に立った時は夢見心地でした。

階段を降りてエントランスから案内されるがまま、曲がりくねった長い回廊をゆっくり歩いた先に、華やかなメインダイニングが登場します。
途中の廊下やバーラウンジ、そしてメインダイニングに飾られた絵画や彫刻を眺めながら、これが噂に聞くユトリロ、シャガール、ワイエス、ロダン等々の本物かと、おのぼりさん状態で思わず回りをキョロキョロしてしまいました。

料理は今日はホストの方に完全にお任せ。
メニューは以下の通りです。

・オーベルニュ地方 フルム・ダンベールチーズのムースリーヌ 初夏のフルーツ添え
・海の幸のソーセージ仕立て アネットの香り
・茹でた北海道産ホワイトアスパラガス オランデーズソース
・和牛頬肉のプレゼ ブラックオリーブ風味 自家製のヌイユ添え
・デゼールとコーヒー

ちなみにホワイトアスパラガスはアラカルトメニューからの追加でした。
ここに、ワインを軽く飲みましょうということで選んで頂いたのが「ピュリニーモンラッシェ・プルミエ・クリュ・ピュセル 2002 ドメーヌ・ルフレーヴ」。
まさか今日ルフレーヴを飲めるとは思わなかったので感激に輪が掛かりました。

総じての感想ですが、やはり素材とソースとのマリアージュを大切にしたクラシックフレンチは素晴らしいと改めて実感致しました。
最近はどちらかといえば、素材重視のシンプルな調理法でソースも軽めの、いわゆる現代風フレンチが主流となっています。
しかし好みから言えば、クラシカルなソース(あるいはそれを発展させたソース)が、やはりしっかりと調理された食材と絡み合って真価を発揮する重厚なひと皿が私は好きです。
語弊を承知で言えば、フレンチなのかイタリアンなのか区別がつかなくなっている皿も多くなっている昨今だからこそ、クラシックなフランス料理とその進化にはなおさら新しい発見と魅力を感じます。

それらにしても店内が満席なのには驚きました。
不景気とはいっても魅力あるお店にはちゃんと人は集まる、不景気を言い訳にしてはいけない、そんな事を肝に銘じました。

ふたりでおいしい料理と楽しい会話とで過ごしたあっと言う間の2時間半、最後のプティフール(小菓子)に至るまでグランメゾンの魅力を堪能致しました。
食事を終えて地上に戻ると、燦々とした日差しが体に降り注ぎ、現実に戻った頭の中で、先程の午餐のひとときが夢のような時間として脳裏に焼きついたのでした。

春から初夏の旬

2009.05.14

春から初夏にかけての今の時期、旬の食材があちこちで出回るようになって、酒飲みには(もちろんそうでない方にも)たまらない季節がやってまいりました。

まず届くのは山菜の数々。
こしあぶら・こごみ・わらび・ぜんまいといった季節を感じる山菜の数々を皆様から頂戴します(本当は自分でも採りに行けばいいのですけどね、甲斐性なしの自分です)。
これを天ぷらやおひたしにして、独特の苦味や旨味を楽しみながらわしわし食べると、お酒の進むこと進むこと。
山国信州に住んでいる者にとっては欠かす事のできない旬の一品です。

そして同じ野菜からもうひとつ、アスパラガス。
同じアスパラでも特に私の大好物はホワイトアスパラ。
フレンチやイタリアンの春のメニューにこれが載り始めると居ても立ってもいられなくなってしまいます。
ちょっと贅沢をしてレストランへ出掛け、空輸されたフレッシュのホワイトアスパラにざっくりとナイフを入れた瞬間の嬉しさといったら。
以前、テレビの人気番組「料理の鉄人」にも三度出演した「レストランヴァンサン」の城悦男シェフに、坂井シェフとのワイン対決の際に登場した「ホワイトアスパラガスとオマール海老のコルトンシャルルマーニュソース」を再現して頂いたら、そのおいしい事!
「土の香り」で共通するアスパラガスとコルトンシャルルマーニュのソースのマリアージュの素晴らしさに陶然としてしまいました。

続いての旬の食材、岩ガキ。
このところ立て続けに2軒のお店で、メニューに天然の岩ガキの文字を見つけ、迷わず注文。
でも初夏から真夏が旬のこの岩ガキ、今年は少し早くないですか?と聞いたところ、どちらのお店からも「そうなんですよね」という答えが帰って参りました。
普通のカキよりもはるかに大ぶりでプリプリと、見るからにおいしそうなこの岩ガキ。
1軒目の居酒屋ではオーソドックスにポン酢で、そして2軒目のレストランバーでは大きな身をざっくり半分に切って、半身は何も付けずにそのまま、もう半身はこのお店オリジナルのエスニックソースで頂きました。
どちらも海のとろけるような旨味が凝縮して口の中に溢れ、普段の真ガキとはまたひと味違った濃厚な味わいを堪能致しました。

そしてもうひとつ、コハダの新子。
先日、私がよく行く居酒屋のご主人から「今日素晴らしい新子が入ったからよかったらおいで」とお電話を頂き、仕事が一段落したところでお店へ直行しました。
ご主人がおっしゃるには、今日〆たばかりだからまだかなり酢が立っていると思うのでその状態がお好きな方は今日、もう少ししっかりと酢が馴染んだほうがお好きな方は明日以降をお勧めしています、とおっしゃっていました。
最初は新子をそのまま注文、今日〆たばかりというその新子は歯ごたえもさっくり、まだ生の状態が残っているので風味も豊かで、夏でも熱燗あるいはぬる燗が大好きな私としてはそれだけでお銚子が何本も空いてしまいました。
ただ、酢が立っている分やっぱり握りで味わいたい、そうご主人に伝えると、そうだよね、自分もそう思うよと言って早速出して頂いた新子の握りは、新子のキレの良さと酢飯の柔らかさとがあいまって口の中で解け合い、その調和に思わず「うまい!」と叫んでしまうひと品でした。

酵母の話

2009.05.06

「酵母」は微生物です。
自然界にはそれこそ数え切れないほどの酵母が生息していて、その中から清酒製造に合った酵母が選び抜かれて「清酒酵母」として使用されます。

次に、清酒製造における「酵母」の役割をおさらいします。
米中の主成分である「デンプン」は、麹菌が生成する糖化酵素によって「ブドウ糖」に分解されます。
そしてその「ブドウ糖」を取り込んで、「アルコール」と「炭酸ガス」に変える(=アルコール発酵)のが「酵母」の役割です。

その「酵母」はどうやって手に入れるのですか?という質問をよく受けます。
回答ですが、大多数の蔵元は「日本醸造協会」が培養・頒布する、いわゆる「きょうかい酵母」を使用しています。
またその他に、県の研究機関が独自で開発した酵母を使用する場合もありますし、また蔵元が自社のお蔵から自ら酵母を分離して使用しているケースもあります。
長野県でも10年以上前に県独自の酵母として「アルプス酵母」が開発され、今でも日々改良が加えられています。

さて日本醸造協会が分離・培養するその「きょうかい酵母」、ひと口に「きょうかい酵母」といってもその性質によっていくつもの種類があります。
香りはどんな香りでどのような立ち方をするか、酸はどれくらい生成するか、アルコールの発酵力はどれだけあるか、味わいはどのように仕上がるか・・・言い換えれば、自社の製造条件や最終的に求める酒質に合った酵母をしっかりと選ぶことが大切です。

古くからあるもので有名な「きょうかい酵母」としては、長野県の宮坂酒造から分離・培養され現在もオールマイティに使われている「きょうかい7号」、熊本県酒造研究所で開発され吟醸系酵母として名高い「きょうかい9号」、仙台国税局の小川鑑定官室長が分離した「小川酵母」の名前でも知られ淡麗な酒質を生み出す「きょうかい10号」などが挙げられます。

またよく目にする「きょうかい701号」「きょうかい901号」「きょうかい1001号」といった「末尾に「01」が付く酵母は、それぞれの酵母を変異させた「泡なし酵母」です。
もろみや酒母で高泡が発生しないように改良された酵母で、高泡が出ないことによる作業の平易化という利点がある反面、泡の状態を目で見て判断するという旧来からの五感による方法を用いることがてきないという短所もあります。
今は「きょうかい酵母」の半数以上を「泡なし酵母」が占めています。

また最近では、新しい「きょうかい酵母」として分離あるいは認定される酵母も次々に誕生しています。
秋田県が開発し、日本酒の芳香成分のひとつであるカプロン酸エチルを多く生み出す「きょうかい1501号」、同じくカプロン酸エチル高生産性で酸の生成が少なく、近年とみに使用する蔵元が増えている「きょうかい1801号」などがその一例です。

酵母だけがお酒の味わいを決めるわけでは決してありませんが、ラベルに記された酵母の種類を確認しながら飲む一杯も、ちょっとだけお酒に対する知的好奇心が増した気がして楽しいかもしれません。

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