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長野駅前のイタリアン

2009.11.21

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昨日は夕方から所要で長野市へ出掛け、一段落したのが午後9時半過ぎでした。
早速帰ろうと急いで長野駅に向かったものの、新幹線も在来線も5分前に出たばかり。
新幹線は今のが最終だし、在来線はこのあと30分弱待たなければ来ないしで、上田に戻ってから取ろうと思っていた遅い夕食を長野駅前で取ってしまおうと思い立ち、ぶらぶら歩き始めました。

さて、どこかいいお店はないかと考えて、ふと一軒のレストランが頭に閃きました。
実は僕が大好きな上田にあるイタリアンレストランで料理の修業をしていた若いシェフが晴れて10月から独立し、長野駅前でお店をオープンしているはずなのです。

大体の場所は聞いていたので、行き当たりばったりでお店を目指したところ、長野駅からあるいてわずか1~2分のところにそれらしい風情の目新しいレストランが目に入りました。
入口横の小さな窓からこっそりと中を覗くと、懐かしのシェフの顔が目に飛び込んできます。
嬉しくなって思わず中に飛び込むとシェフも気が付いて下さり、ひとしきりの挨拶のあと、カウンターの片隅へと通されました。

店名は「オステリア・ガット」。
シェフと、もうひとり若きオーナーとのふたりで切り盛りする、素材と季節感とを大切にするイタリアン・レストランです。
ちなみにこの日は最終電車まであまり時間がないことを伝えて、前菜の盛り合わせとプリモピアットのパスタをお任せで注文。
どちらも予想に違わぬ素晴らしい出来栄えでした。

特にパスタのひと皿として出されたのは、「ピチ」と呼ばれる手打ちのパスタで、うどんのような太さとつるつるとしてコシのある食感は、今まで食べてきたパスタとはまるで別もの。
そこに牛肉を煮込んだミートソース風のラグーソースとが見事に絡んで、お皿は瞬く間に空になりました。

このふた皿に、ビールとお薦めのイタリアの白ワインと赤ワインとを各一杯ずつ合わせて小一時間、心地よい空間と暖かなサービスとともに、思いも寄らぬ素敵なひとときを過ごすことが出来ました。
今度機会があればぜひゆっくり、セコンドピアットの魚や肉そしてデザートまでゆっくりと楽しんでみたいと思います。

場所は長野駅前のロータリーを渡って、ホテルサンルート横の細い道に入り、ホテルの裏側を曲がったすぐのところです。
夜は25:00まで営業しているので使い勝手もいいですよ。

和田龍に合う一品

2009.11.15

お酒と料理との相性についてよく聞かれます。

そもそも「料理に合う」というのはどういうことでしょうか?
人によっては、「相性」なんてその人の感性によって違うもので、それをわざわざ押し付けるのは傲慢だという意見をおっしゃる方もいらっしゃいます。
それはそれでその通りだと思いますし、正しいご意見だと思います。

ただ「料理との相性」とは、お酒と料理とをより美味しく召し上がって頂くための、もっといえば1+1=3になるような味わいの広がりのひとつの情報です。
試して頂いたら、いつも以上にお酒や料理が進んだ、あるいはどちらもがいつも以上においしく感じられた、そんな驚きや発見を感じられて頂けたら本当に嬉しく思います。

料理に合う例を具体的に挙げてみて、と聞かれる事もあります。
そんな時に真っ先に挙げるのは、フライドチキン×コーラorウーロン茶です。
誰もが慣れ親しんでいるフライドチキン、ここにコーラを合わせると、油とタンサンという強いもの同士が調和して双方がよりおいしく感じられますし、他方コーラとは対極にあるウーロン茶を合わせると今度はチキンの油をきれいに洗い流してくれて、これまた次のひと口に繋がります。
難しく考えなくても、このように相性の良いものは身近にたくさんあるのです。

さて、それでは弊社のお酒と相性が良い料理をひとつ挙げよ、と言われたらそれは何か?
もちろん弊社のお酒自体が何種類もありますし、その中で料理を「ひとつ」ということ自体少し無理があるかもしれませんが、でもあえて掲げさせて頂きます。

それは「蕎麦」です。

和田龍酒造の酒は「蕎麦」に合います。
蕎麦そのものの相性はもちろんの事、つゆと絡んだ時の相性、あるいは天ぷらや野菜やお肉といった蕎麦に乗るタネとの相性、それぞれと合わせた時に醸し出す味わいがハーモニーとなって口の中に踊ります。

蕎麦王国の信州、上田にもたくさんのお蕎麦屋さんがあり、私自身連日のように蕎麦に慣れ親しんでいます。
そんな中、自分のお酒とお蕎麦とを合わせると「ああ、おいしいなあ」としみじみ思います。
もし機会があったら皆様もぜひお試し頂ければと思います。

マリアカラス

2009.11.07

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タイトルの「マリアカラス」、今回はソプラノ歌手のマリア・カラスではなく料理のマリア・カラスのお話です。

先日、東京六本木「レストランヴァンサン(VINCENT)」で、とある記念のパーティがありました。
この「レストランヴァンサン」のオーナーシェフ城悦男氏は、私にフレンチの世界の素晴らしさを知らしめて下さった方であり、いつもお目にかかるたびにその人間的な魅力に引き込まれています。

さてこの日のパーティ、主催者に促されて乾杯の音頭を取った城シェフの挨拶が素敵でした。
「今のこの時代、料理にしても何にしても、ともすれば時代の最先端を行こうとして、そのスタイルは刻々と変化しています。しかしそんな中、私は何と言われようと、自分が学んだ古き良き時代のクラシック・フレンチのスタイルを変える事なく、これからも頑張っていきたいと思います。乾杯!」

料理もその言葉通り、ソースと食材とがしっかりと融合したクラシック・フレンチの王道を行くものでした。
私がこのお店に行く時は必ず予約する2品もしっかりと登場しました。
アミューズ・前菜に引き続いて登場したその1品目は、まず個人的に日本で一番おいしいと思っているコンソメスープ。
この日コンソメは「牡蠣のコンソメ ロワイヤル風」でした。

何日も手間隙かけて出来上がる黄金色に澄み切ったコンソメ、そのカップの下にぶつ切りの牡蠣を浮かべた洋風茶碗蒸しが沈んでいます。
運ばれてきた瞬間からテーブル一帯にコンソメの芳香が漂い、ひと口運ぶと、ブイヨンや野菜の味わいが渾然一体となったその清澄な味わいに陶然とします。
そしてしばらくするとブイヨンから出るコラーゲンが唇をペタペタと覆い、これが城シェフのコンソメである事を実感するのです。

そしてもう1品が、魚料理に続いて出された城シェフのスペシャリテ「子羊のパイ包み・マリアカラス風」です(写真)。
これは城シェフがパリの「マキシム・ド・パリ」で修行していた時に、実際にマリア・カラスがリクエストして好んで食べた料理です。
また城さんが帰国後、銀座「レカン」でシェフを務めていた時に、現在「シェ・イノ」の井上旭シェフとともに、押しも押されぬひと皿にした事でも有名です。

写真でお分かりの通り、子羊の真ん中にフォワグラを詰め、周りにパイを巻いて火を通すのですが、この火加減が絶妙!
しかもそこにかかった黒トリュフの入ったペリグールソースがこれまた素晴らしくて、城シェフの別名「ソースの城」の面目躍如です。

ミディアムレアに焼けた子羊はジューシーで肉汁あふれ、パイのサクサクとした食感、そして香り高く芳醇なソースの味わいとあいまって陶然、最後はソースの一滴までパンで掬い上げて食べてしまい、あとに残るのは洗ったかのごとくピカピカの皿のみです。

その後もフロマージュ、デザート、プティフール(小菓子)と続き、午後7時前から始まったパーティは時計を見ると午前零時。
心地よい余韻を残しながら、本当にあっという間のひとときはお開きを迎えたのでした。

和田龍純米酒

2009.11.01

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弊社の特別純米酒「上田獅子」が、装いも新たに「和田龍純米酒」として生まれ変わります。

長年ご愛顧頂いている「上田獅子」という銘柄、もちろんこちらにも多大な愛着があるのですが、私の中で「原点回帰」と申しますか、創業以来続いている「和田龍」という名前をもっともっと大切にしたいという思いが募りまして、新しい造りを前にレギュラーの純米酒の銘柄を変更することに踏み切りました。
ホームページ内の商品紹介も順次更新して参ります。

ちなみに写真の新しいラベルですが、今回の変更に先駆けて、ひと足早く新発売の「ひやおろし」で使わせて頂きました。
おかげ様でこのラベル、皆様からの評判も上々で、手作りで苦労して作成した甲斐があったと胸を撫で下ろしております。

ラベルの真ん中にある朱色のデザインは、日頃から弊社のラベルの文字を書いて頂いている書家の先生が「龍」をイメージして作って下さったデザインです。
「和田龍大吟醸」をはじめ、これまで他のお酒にも使わせて頂いているこのお気に入りのデザインを今回もど真ん中にインパクトあるように使用致しました。
上部左側に龍の顔があり、くるりと丸まる形で下に尻尾があります。

また「純米酒」の文字は母によるもの、紙の色・大きさをはじめ文字のバランスやレイアウトは妻によるものと、まさに経費を掛けない(笑)文字通りの手作りです。

なお、長年親しんで頂いている「上田獅子」の銘柄も、混乱を来たさぬよう、これからも併用して発売して参ります(お酒の中身は「和田龍純米酒」と同じものです)。
それでは心機一転、これからも宜しくお願い申し上げます。


<和田龍純米酒>

・使用米:長野県産美山錦
・精米歩合:59%
・酵 母:きょうかい14号
・アルコール分:15度
・日本酒度:+3
・酸 度:1.8

なお、新酒が発売される来年の春からは上記の内容は変わる可能性があります。

昨晩の酒

2009.10.24

昨日は親しい方と上田の街に繰り出して一杯。
その方と飲む時は、酒の種類が豊富というのがお店の選択基準なので、昨夜も上田駅から数分の、日本酒と焼酎がずらりと居並ぶ一軒に足を運びました。

いくつかの酒肴を頼んで、出だしからもちろん日本酒。
グラス一杯売りのところを、いろいろな種類が飲みたいからとわがままを言って大徳利で出してもらい、あとはお互いのグラスに差しつ差されつ。
今日のテーマは「純米吟醸を飲み比べる」です。

まずは、ふたりとも大好きな愛知県名古屋市のM酒造、当主の名前を銘柄にした「K」からスタート。
いつもの通り旨みがたっぷりと詰まった味わいは、酸もそれなりに強いのだけれど、何よりもバランスがしっかりと取れていてキレよく、旨口ながらすいすいと杯が進みます。
やはり素晴らしい出来栄えです。

次に頼んだのは福井県で全国区をひた走るK酒造の、蔵元そのままの銘柄「K」。
私が日頃から大好きな銘柄です。
何よりも、どのお酒を飲んでもしっかりとその蔵と分かる香りと味わいを醸し出している事にいつも感動します。
その中でもこの「純米吟醸」は、私が特に好きな一品。
私のベロメーターによる勝手な推測では、この「純米吟醸」、数年前まではねっとりと舌を覆う、どちらかというと重厚な味わいだったのを一変、味わいのベクトルはそのままで、軽快かつふわりと柔らかな口当たりに変更されたのではないでしょうか?
いずれにしても「K」ならではのおいしさはいつも健在、この日も堪能させて頂きました。

続いては長野県のお酒という事で、今ぐんぐんと勢いを伸ばしている奥信濃の蔵元T酒造店の、金紋錦で仕込んだ純米吟醸「M」。
しばらく前にこの蔵元の同じ金紋錦仕込み「ひやおろし」を飲んで、とろりとした旨みが口いっぱいに広がるその味わいに感動した覚えがありますが、このお酒も同様でした。
口に含んだ瞬間から深く芳醇な旨みがしっかりと感じられ、喉に消え去るフィニッシュでは余韻が心地よく残ります。
そのあと味を心地よく感じながら、ついもう一杯飲み進めてしまうのです。

そして同じ長野県は中信に位置する、明治を代表する文豪の作品名を銘柄にしたO酒造店の「Y」。
私は以前からここの蔵元の姿勢やお酒がとても好きで、今回もそんな思いを抱きながら頼んだ一杯でした。
飲んでみて感じるのは、やはりバランスの素晴らしさ。
甘みや旨みや酸がきれいに絡んで、しかもふわりと柔らかく、最後はスッと口中から消え去るあと味の素晴らしさ。
これまた飲み飽きしない(というのは私の目指すところでもあります)逸品でありました。

最後に頼んだのは、山廃仕込みで有名な石川県S酒造の銘酒「T」。
生酛仕込みや山廃仕込みのお酒というのは、最初は抵抗があるかもしれませんが、一度ハマるとそのままぞっこんになる不思議な魅力を持っています。
このお酒もそれに違わず、複雑かつ濃厚な味わいにシャープな酸がきれいに調和して、ダイナミックな日本酒の醍醐味を堪能できる、秀逸なお酒でした。

いつもでしたらまだまだ追加で頼みたいところですが、この日は飲み始めた時間が遅かったこともあって残念ながらタイムアップ。
文字通りほろ酔いでお店をあとにし、その晩の酒宴はお開きとなったのでした。

ちなみにその後、一度は帰途に着いたものの、そういえばここしばらく馴染みのバー「リビアーモ」(2008/2/25に登場)に行ってなかった事をふと思い出し、急遽Uターン。
久々のカウンターに腰を落ち着けて、まず頼んだローランドウイスキー「オーヘントッシャン12年」をストレートで。
あっという間にグラスが空になるのと同時に、締めの一杯で大好きな「マッカラン12年」をやはりストレートで注文。

ちびちびとグラスを舐めていると、オーナー兼バーテンダーの坂田さんが「実はここのところ2時間掛けてうどんを打っているのだけれど、よかったら食べません?」
迷う事なくお願いして待つことしばし、つゆに浸かった冷たいうどんが目の前に出されて、ひと口食べた瞬間、これがうまいのなんの!
きちんと麺に腰があるのはもちろんとして、こんなにしっかりと粉の味わいが口中に感じられるうどんを食べたのは久方ぶりでした。
噛めば噛むほど小麦粉の旨みが増してきて、本当においしい。
聞いたら塩はゲラントを使用しているとの事、彼らしいこだわりです。
加えて、つゆのおいしい事といったら。
しかも食べ進む途中でサプライズが。
彼がほんのわずかな泡盛をつゆに流し込んだその瞬間に味わいが一変、深みと旨みがいっそう増したつゆに感激しながらうどんを一気にかき込んでおりました。

もともと食事には定評があるこのお店ですが、まさかこんなにおいしいうどんまで食べられるとは。
和食と日本酒に始まり、最後もバーでうどんという思わぬ「和」の邂逅で締めを飾った嬉しい一夜でした。

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