記事一覧

テキスト新調

2010.01.30

ファイル 154-1.jpg

写真の3冊は私にとって酒造りにおける座右の書です。
左側から
・酒造講本
・清酒製造技術
・国税庁所定分析注解
どれも真新しく見えるのは、このたび改訂版に買い換えたからです。

この3冊を初めて手にしたのは、私が学校を卒業して入った国税庁醸造試験所(現在は独立行政法人「酒類総合研究所」)の季節講習でした。

あれから約20年、青い表紙の「酒造講本」は、5年前から通い始めた「南部杜氏協会夏季酒造講習会」のメインテキストになっていたのを機に新版に買い替えました。
また、赤い表紙の「清酒製造技術」はこのたび「改訂版」が発売されたのを知って注文し、ついでに「所定分析法注解」も、こちらはほとんどページをめくる機会はなくなっているのですがせっかくだからと新版を発注して、発売元の日本醸造協会から届いたのが先日のことです。

既にぼろぼろになった古い3冊に比べると、当たり前ですが新しい本は染みひとつついていなくて、インクの匂いが立ち昇ってくるようで新鮮な感動に駆られます。
もちろんテキストはあくまでもテキストであって、酒造りの世界は正解のない手探りで未知の世界です。
ただその中でも、常に学ぶ姿勢を忘れてはならない、そんな気持ちの現れのひとつとして、リニューアルされピカピカになったこれらのテキストを折に触れ紐解いていきたいと思います。

おいしさの値段

2010.01.22

またひとつ、素晴らしい日本酒に出会えました。
「獺祭(だっさい)純米大吟醸45」(720ml/1,890円)。
価格まで記したのは、極めてコストパフォーマンスにも優れているからと思ったからです。

「獺祭」は今回が初めてではなく今までにも何本も飲んではいるのですが、今回の「純米大吟醸」をひと口飲んだ瞬間、改めてこのお酒の持つおいしさや魅力に圧倒された思いでした。

含んだ瞬間にまず感じるサラリとした舌触り、次に口の中で転がすと口いっぱいに広がる滑らかで上品な味わい、さらには強すぎず弱すぎずきれいに膨らむフルーティな含み香、それらが渾然となって口の中で踊り、そして飲み込むとスッと消え去ります。
そしてこれが1,890円!
見事なコストパフォーマンスです。

私が日頃からお世話になっている「獺祭」取扱い酒販店さんや飲食店さんから、蔵元の旭酒造株式会社の方針や酒造りの方向性は常々伺っていてその素晴らしさには心打たれていたのですが、今回その思いを新たに致しました。

ちなみに私も自社のお酒に関しての「コストパフォーマンス」、すなわちその味わいに対してお客様が妥当もしくは安いと感じて頂ける価格の設定にはいつも頭を悩ませております。

片やそのお酒の製造原価、片や自分が味わいから弾き出した販売価格、そのギャップに悩む事がしばしばで、必然的に利益を圧縮せざるを得ない結果となります(笑)。
もちろん製造原価分をしっかり価格に転嫁すれば済む話かもしれませんが、このスペックでこの味わいのお酒をこの値段で売りたいという自分のボーダーラインはどうしても譲るわけにはいかず、そのたびに葛藤する毎回です。

でもありきたりの言葉ですが、そうした苦労も、お客様の「おいしい」というひと言、あるいは「このおいしさでこの値段?安いね」のひと言ですべて吹っ飛びます。
これからもそのようなお酒を出荷できるよう頑張ります。

ちなみに予備知識として。
原価の中には酒税も含まれます。
酒税は製造場からお酒が出荷された時点で課税され、製造者が納税義務を負います。
税額は清酒・ビール・ウイスキーなど酒類によって異なります。
清酒の場合はアルコール度数に関係なく1キロリットル当たり120,000円と決まっており、換算すると一升瓶(1.8L詰)で216円、四合瓶(720ml詰)で86.4円、それぞれ酒税が掛かっています。
参考までにどうぞ。

さて、もうひとつお知らせです。
「和田龍純米にごり酒」が1.8L、720mlとも在庫わずかになりました。
3月もしくは4月には新酒に切り替わる予定ですが、それまでに一時品切れも予想されます。
取扱店様等、ご不明な点はお問い合わせ下さい。
これからもご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

お知らせ

2010.01.16

12月下旬に発売を開始した今期の「和田龍純米しぼりたて生原酒」ですが、おかげ様で大変好評を頂き、当社の在庫は1.8L・720mlとも残り僅少となりました。
取扱い酒販店様、あるいはご注文等お問い合わせは、当HPトップページ右下のアドレスからメールにて、あるいはお電話にてご一報下さい(日曜・祝日休)。
お買い求め頂きました皆様にはここで改めまして深く御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

This is it

2010.01.12

とある日の夜、時間を縫って「マイケル・ジャクソン This is it」を観て参りました。

昨年の6月急逝したマイケル・ジャクソン、彼がその夏にロンドンで50回に渡って行なうはずだったコンサートのリハーサル映像と舞台裏を編集したのがこの映画です。
当初は2週間だけの限定公開と銘打っていましたが、年が明けてからもアンコール上映としてずっと公開されているという事は、かなりの観客動員があったという事でしょう。

正直なところ私自身はマイケル・ジャクソンの熱狂的なファンという訳ではなく、単にロックのライブ映画が好き、そんな理由で足を運んだ程度だったので決して期待はしていなかったのですが、いざ観てみるとライブ・ドキュメントとしては屈指の出来栄えで、エンドタイトルが上がっても興奮冷めやらぬまま映画館をあとにする事となりました。

何よりもマイケル・ジャクソンというアーティストの人間像が、リハーサル風景を通してきっちりと描かれているのが素晴らしい。
完璧主義で、音楽に関して一切の妥協を許さず、そして人間や自然への愛情に満ちている、そんな彼の魅力が数々の名曲に乗って余すところなく映し出されます。

彼が口パクでなく全曲しっかりと歌っている事や、バックの演奏が打ち込みや録音を流すのではなく生のバンド主体によるものである事にも驚かされます。
自分自身だけでなく共演するアーティストに対して、細部に渡り完璧な音楽を求めていく姿は、これまでの彼へのイメージが一変させられます。
また、厳しいオーディションで選ばれた11人のバックダンサーに対しては決して上からの目線ではなく、一緒にステージを造り挙げる仲間として対等に接しているマイケル・ジャクソンの姿勢にこれまた心打たれるのでした。

そして、こんな素敵で心躍るコンサートが実現していたらどんなに素晴らしかっただろう、たぶん観る人すべてがそう感じたに違いないこの映画は、大きな喜びとそして悲しみに満ちた傑作でした。

先にも記した通り、私はライブを描いた映画が大好きです。
特に1本挙げるとすれば、1982年に公開された「ザ・ローリング・ストーンズ レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」。
前年の全米ツアーを映像化した、巨匠ハル・アシュビー監督の作品です。

この時は友人に誘われて、当時の丸の内ピカデリー(大好きな映画館でした)にこの映画を観に行ったのですが、正直ブッ飛びました。
ローリング・ストーンズがどれだけカッコよくて魅力的なバンドに映ったことか、その衝撃は計り知れません。
この時は確か、映画館のスピーカーもこの映画用の特別なものに替えられていた事もあって、音響もそれは素晴らしいものでした。
そんなこんなで私はこの時から遅れ馳せながらローリング・ストーンズの熱狂的なファンになってしまい、日本公演も全ツアーに足を運ぶに至っています。
当時の映画館は入れ替え制がなくて、しかし普段は「絶対に2度続けて観ない」(感動が薄れるから)という自分への決まり事をあえて破って、2回立て続けに観て大興奮したのもこの映画です。
一昨年公開された同じローリング・ストーンズの「シャイン・ア・ライト」(マーチン・スコセッシ監督!)も傑作でしたが、自分自身の衝撃度から行くと前作のほうが遥かに上回っておりました。

同じライブ映画でちょっと毛並みが変わったものとして好きなのが、YMOの散開(「解散」ではなく)コンサートの様子を描いた映画「プロパガンダ」。
まあこれは私の熱狂的なYMO愛から来るチョイスなのですが、これをビデオで観るたびに、当時日本武道館での最後のライブが全席無料の招待制で、それに行きたくてそれこそ100枚を越える応募ハガキを送ったあの頃の思い出や空気がまざまざと蘇ってくるのです。(ちなみにハズレてどれだけ悔しい思いをしたことか。)

正月雑感

2010.01.03

あけましておめでとうございます。
今日は思いつくままに頭に浮かんだ事を書き連ねます。

年末も押し迫って、折ある毎にお越し頂く埼玉県のお客様Nさんがお見えになりました。
「しぼりたて生原酒」の発売を知って、信州で年越しをされるに当たり、わざわざお買い求めにお寄り頂いたのです。
ここ数年は年内に発売が間に合わず、Nさんにもご迷惑を掛けていたのですが、今年は何とか間に合ってホッとしております。
Nさんと談笑する事しばし、たくさんのお酒を積み込んで目的地に向かわれるお車を見送りながら、このようなお客様おひとりおひとりに支えられながら商売をさせて頂いている事に感謝の思いを新たにした一瞬でした。
今年もまた、弊社そして私を支えて下さる皆様の思いに応えるべく、いつも感謝の気持ちを忘れずに精一杯努力していきたいと思います。

さて迎えた新年、初詣を済ませたあと所要のため慌しく1泊で東京へ行って参りました。
夜半に着いた東京駅、その足でエキナカのショッピング街「グランスタ」に立ち寄りました。
ここは数え切れないほどの弁当・惣菜・スウィーツのお店で賑わっていて、見ていて飽きる事がありません。
ふと思い立ち、その中で出店している酒販業界では有名な「はせがわ酒店」に立ち寄り、今宵の寝酒を買い求める事にしました。

棚に並んでいたお酒を見比べながら選んだ1本は「醸し人九平次<rue Gauche>純米吟醸720ml」1,575円でした。
この愛知の酒「醸し人九平次」、もともと私は大好きな銘柄で、これまでもほぼすべての種類を飲み干しています。
今回この1本を選んだのは、①これまでに飲んだことのない「九平次」だった事、②「山田錦/精米歩合50%/1,500円(税別)」という魅力的なスペックがどういう味わいなのか試したかった事、③「アルコール分13度」に興味が惹かれた事、以上の3点でした。

さて、その晩早速開けたその1本、ひと口飲んだだけでその素晴らしさに感銘を受けました。
まず舌に感じるサワサワとしたガス感、そして「九平次」のスタイルに共通する力強さと繊細さとが兼ね備わったインパクトある味わい、甘さと酸とのバランスが見事なんですね。
そしてスッと切れるフィニッシュの心地良さ。
正直なところ、13度という低アルコールの日本酒でこれだけ素晴らしいものを飲んだのは初めてで、衝撃を受けました。
その証拠に、1時間もしないうちに四合瓶1本がカラになっておりました。
改めて日本酒の奥深さを勉強させて頂いた次第です。

続いては他愛もない話ですが。
翌日、JR山手線の原宿駅に降り立ちました。
いつものように新宿駅に向かって右側のドアで降りようとしていると・・・何と開いたのは反対側のドア。
驚きながらもすぐに合点がいきました。
明治神宮の初詣客に対応するために、正月だけ上下線のホームを分けて混雑を緩和させていたのですね。
そういえば原宿駅を通るたびに、使われていない野ざらしのホームが目に入りましたっけ。
こういう時のためにあのホームは存在していたのですね。
ただそれだけの事でしたが、何だかちょっぴり得をした気分になりました。

そして上田に帰る新幹線、東京駅に到着する新幹線からドッと帰省客が降りてくるのに反して、東京発の新幹線はガラガラ。
今回も自由席に乗ったのにも関わらず、最後まで私が座った車両は半分ほどの座席が埋まっただけでした。

それにしてもいつも感心するのは、東京駅の東北・上越・長野新幹線ホームの清掃スタッフ。
今到着した新幹線が出発するまでのわずか数分の間に、目にも留まらぬ速さで車内を清掃していくのです。

まず倒れている座席のリクライニングを元に戻すと、それを合図に機械操作で全ての座席が逆方向を向きます。
その間にもスタッフは車内に残されたゴミ屑を素早く広い、背もたれのテーブルをひとつひとつ開けては吹き上げ、床にモップを掛け、その間わずか8分程度。
ちなみに彼らの存在のおかげで、東北・上越・長野新幹線は4面のホームしかない中で、現在の過密ダイヤの編成が可能になったそうです。

さて、そしてここからです。
スタッフが車内の清掃を終えると、全員が外に出たあとに一列に並んで、ホームで待っている乗客に深々とお辞儀をするのです。
このサービスを実践しようと考えた方は素晴らしいですね。
たったひとつのお辞儀で、それまで待たされていたイライラが吹っ飛び、逆に「ご苦労様」というねぎらいの気持ちが自然と湧き上がってきて、気持ち良く乗車する事ができるのです。
長野新幹線が開通する前、やはり信越本線の横川駅で、「峠の釜めし」を売っていた売り子さんが特急「あさま」が発車すると列車に向かって深々と頭を下げていた光景と重なります。
気持ちのこもったお辞儀、これってやっぱりサービスの基本ですね。

ページ移動