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初しぼり

2010.12.25

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待ちに待った「純米しぼりたて生原酒」が完成しました。

何とか年内に発売したいと切望してはいたものの、そこは生き物との勝負。
こちらが思うような酒質に仕上がるまで、じっと我慢の日々でした。
その甲斐あって、今年の初しぼりとなった今回のタンク、素晴らしい出来上がりです。

マスカットのようなフルーティな芳香。
旨味がたっぷり詰まった透明感ある味わい。
12月28日発売、季節限定の逸品です。
ぜひ味わってみて下さい。

そして「登水(とすい)」もいよいよ酒母(もろみの元になるもの)が立ちました。

今年の「登水」、2種類あるうち、従来の「吟醸酒」が変わります。
昨年度までの「全量山田錦/精米歩合59%」というスペックは変わりませんが、大きな違いはアルコール添加を止めてオール「純米酒」仕様となる事です。

ですので今年の「登水」は
・「山田錦/精米歩合59%純米酒」
・「美山錦/精米歩合49%純米酒」(こちらは従来通り)
以上の2種類となります。

これから2月に掛けて、「登水」もゆっくりゆっくり育っていきます。
出来上がりを乞うご期待ください。

写真上:「登水」の原料米「山田錦」
写真下:蒸し上がった山田錦に種麹をふっているところ

清酒製造の原理 入門編

2010.12.18

冬も本番となり、いよいよ仕込みの最盛期を迎えています。
当社の「純米しぼりたて生原酒」も年内の発売を目指して、もろみが順調に育っているところです。

そんな中、今日は日本酒ができる原理を簡単に説明したいと思います。
今人気の池上彰さんの「そこからですか?」(週刊文春)ではありませんが、初めての方にも理解できるようにお話し致します。

そもそも日本酒に限らず、お酒のアルコールはどうやってできるのでしょうか?

これは分かり易く言うと、「糖分(ブドウ糖)」を、微生物である「酵母」が食べて、「アルコール」と「炭酸ガス」というウンチに変える、そう考えて下さい。
これを「アルコール発酵」と呼びます。

<アルコール発酵とは>

糖分(ブドウ糖)→ アルコール/炭酸ガス
        ↑
        酵母


さて、続けます。
日本酒の原料はお米です。
ではお米の中に、アルコール発酵に必要な「糖分」は存在しているでしょうか?

お米をかじっても甘味がない事からも分かるように、お米そのものには糖分はありません。
つまり、糖分がない状態のままではアルコール発酵は不可能という事になります。

それではどうやってお米から糖分を発生させるのでしょう?
ここで大切な役割を担うのが「麹菌」です。

お米の主要な成分として「デンプン」があります。
このデンプン、実はブドウ糖がいくつも鎖状に繋がった物質です。

すなわち、ブドウ糖がいくつも連なったデンプンの、その鎖を断ち切ってしまえば、一個一個のブドウ糖に分解されるのです。
この「デンプンをブドウ糖に分解する」のが、麹菌が生成する「糖化酵素」と呼ばれる物質です。

このように、お米の主成分であるデンプンをブドウ糖に分解する働きを「糖化」といいます。

<糖化とは>

米中のデンプン → 糖分(ブドウ糖)に分解
        ↑
  麹菌が生成する糖化酵素「アミラーゼ」


以上でお分かりの通り、日本酒は「糖化 → アルコール発酵」という二段階を踏むことにより、原料のお米からアルコールの生成が可能になるのです。

もう少し掘り下げます。

日本酒の仕込み中、タンクには以下のものが投入されています。

・麹米
・掛米(ただ蒸しただけのお米)
・水
・酵母

同じタンクに麹米(=麹)と酵母が両方入っていますので、「糖化」と「アルコール発酵」が同時に進行します。
これを「並行複発酵」といい、日本酒製造の大きな特徴のひとつとなっています。

日本酒の「並行覆発酵」は、同じタンクの中でまず「糖化」が進むため、初期の頃は甘さが先行します。

「糖化」によりブドウ糖が多量に生成されると、今度は「アルコール発酵」がどんどん進行するので甘さが減少し、それに比例してアルコール度数が上がり始めます。

そして目指す甘辛度(=日本酒度)やアルコール度数、さらには酸度やアミノ酸度等、もろもろの要素を総合的に判断した上で、最終的に搾る時期を決めるのです。

街角のお店、雑記

2010.12.11

今日のお昼に「すき家」の牛丼を食べましたが、あまりの安さに改めて驚きました。
だって、牛丼の並盛りにサラダと味噌汁を付けて、しかもキャンペーン中だったので30円安くて、お会計は350円!
これでしっかり利益が出ているのですから大したものです。

そういえば数日前、出張先での事です。
あれこれあって一段落したのが午後11時。
早速一杯飲みたくて、いつものように居酒屋を探して辺りを徘徊したのですがもうどこも閉まっていて、目に入ったのは「吉野家」の看板のみ。
仕方なく空腹を満たすために入店したところ、メニューの下にちっちゃく「日本酒」の文字を発見して早速注文。
コールスローサラダと牛キムチクッパを肴に(凄い取り合わせですけど)出てきた1合びんのお酒を飲みました。

驚いたのは、その日本酒がどこの物とも分からない安酒ではなくて、ちゃんとした新潟の本醸造生貯蔵酒だったこと。
へぇー、吉野家でもこういうところにこだわる時代になったんだと、妙に感動して味わいました。
ただグラスが臭かったのには閉口しましたけど。
そしてお勘定は、クッパ280円、コールスロー90円、お酒330円で、しめて700円!
こちらも安い。
これはこれで何だか新鮮な驚きでした。

思えば最近は、チェーンの居酒屋でもそれなりの日本酒の品揃えをしているお店が増えましたよね。
この前もお客様から、上田駅近くの全国チェーンに弊社の銘柄が置いてあったと聞いて驚きました。
納品している酒販店さんが勧めて下さったのでしょうね。
お酒の間口が広がる嬉しさも含めて感激しました。

逆に数年前の悲しくて笑える話。
蔵元数名と軽井沢に行った時のことです。
昼食を取ろうと、目に付いたラーメン屋に入りました。
せっかくだからラーメンを食べる前に一杯飲もうということになってつまみと一緒に頼んだお酒、これがはっきり言っておいしくない。
おばちゃんに「このお酒、何?」と聞いたところ、カウンターの上にどんっ!と紙パックの三増酒(多量の醸造アルコール、加えて糖類やアミノ酸を添加したお酒)を出してきました。

余計なお世話と思いつつ、「おばちゃん、軽井沢の人間なら、せめて地元のお酒を使ったほうがいいよ」とアドバイスすると「あたしゃ夏だけこのお店を出している横浜の人間だよ」という、洒落ているのか小憎らしいのか分からない答えが返ってきました。
おまけにお会計は、確かにお酒をそこそこ飲んだとはいえ、昼間からひとり5千円!でした。
いったい一杯いくらのお酒だったんだ?
ふざけんな。

もうひとつ。
普段外回りの最中、時間がない時に利用する立ち食いそば屋。
安いしお店のおばちゃんたちの愛想も良く、慌ただしい中にもひと息つけて、いつもおいしくお蕎麦を頂いています。
でもお願いです。
お店を出るときに大声で「毎度!!」は止めてもらえませんか。
恥ずかしいです。

マティーニ・イズム

2010.12.01

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親しい方から本を一冊プレゼントされました。
銀座「MORI BAR」オーナー兼チーフバーテンダーの毛利隆雄さんが書かれた「マティーニ・イズム」。

「MORI BAR」は銀座屈指の名店であり、毛利さんの代名詞とも言えるマティーニをはじめ、珠玉の数々のカクテルを求めて、今宵もたくさんのお客様がお店を訪れます。

私も以前この本を頂いた方と一緒に、2度お店にお伺いした事があります。

一度目は10年以上前。
実はこの時は散々でした。

一歩店に足を踏み入れた瞬間から、憧れの空間と目の前の毛利さんの存在に緊張してしまい、連れに勧められるままにガブガブ。
それまで何も食べていなかったこともあって、気が付いたら一気に酔いが回っており、あろうことかトイレに閉じこもったままの状態に。
結局連れに抱えられるようにして店をあとにしたのですが、自分の失態にしばらくは立ち直れませんでした。

それから数年後、やはり同じ方と再度「MORI BAR」のドアをくぐりました。
もう同じ轍は踏みません。
この時は終始リラックスした中で、カクテルのおいしさと、加えて毛利さんのお人柄の素晴らしさとに心打たれながら、大変楽しいひとときを過ごすことができました。

そして今回プレゼントで頂いた「マティーニ・イズム」。
毛利さんのバーテンダーとしての生きざまや、カクテルに賭ける思いや愛情が綴られていて、あっという間に読了してしまいました。

大変興味深かった内容をひとつ。

ある時毛利さんは、お客様から「今日のマティーニの味はおかしい」と指摘されます。

すぐさま原因を究明していくと、ベースとなる同じ銘柄のジンでも、1本1本の味わいにバラつきがある事に初めて気がつきます。
雑味が多く納得の行かないビンが実に多いのです。
片っ端からテイスティングしていくと、1ケース12本でまともに使えるのは1本という事態まで起こるようになりました。

日本の輸入代理店で納得の行く回答がもらえなかった毛利さんは、すぐさまスコットランドの製造元へ飛び立ちます。

訪れたメーカーで分かったのは、ジンのブレンダーはテイスティングを一切せずに、鼻で嗅ぐノージングだけで品質を決めているという事実。
それを知り、毛利さんは愕然とします。
そのブレンダーにいくらティスティングをお願いしても、彼は香りだけを嗅いで「パーフェクト」と叫び、ついにジンを口に運ぼうとはしませんでした。

以来毛利さんは、マティーニに使うジンをはじめとしてどの蒸留酒も開封する時は必ずテイスティングをし、自身の舌に合格したものだけを使用しているそうです。

毛利さんが1本1本、封を開ける際に味を確かめるのは有名な話ですが、その影にそんな理由があったとは初めて知りました。

それにしても、本書に掲載されているカクテルの写真を見ていると、すぐにでも実物を飲みたくなること請け合いです。
「MORI BAR」、久々に行きたいなあ・・・。

三遊亭鬼丸、上田凱旋

2010.11.25

このブログにもたびたび登場する上田出身の新真打、三遊亭鬼丸(きん歌改め)。
東京都内で50日にわたる真打披露興行を終え、このたび地元上田市のホールで凱旋公演を行いました。

http://www1.ocn.ne.jp/~kinka/profile.html

ちなみに東京での襲名披露興行には、私も出張に合わせて2度足を運びました。

1回目は上野鈴本演芸場で、この日が披露初日でした。
ネタは「錦の袈裟」。

初日という事もあってか、鬼丸は自分自身の立ち位置に少々戸惑っている様子で、何となく不完全燃焼に終わってしまった感のある高座でした。
余談ですが、私の左隣に落語通で知られる堀井憲一郎氏がメモを片手に座っていて、彼が鬼丸をどう評したのかも気になりました。

2回目の訪問はそれから1ヵ月後の池袋演芸場で、この日のネタは「御神酒(おみき)徳利」。
これは見事でした。
鬼丸の成長がしっかりと窺えました。
快活かつ朗々と噺す鬼丸のうしろに、確かに「御神酒徳利」の風景や人物が見えました。

そして今回の上田公演。
約500席の場内はびっしり満員で、鬼丸に寄せる期待の大きさが分かります。
入口では鬼丸のご両親や奥様がお客様をお出迎えしています。

そして開演。
師匠の円歌や兄弟子たちの高座が爆笑に包まれ、そして襲名披露の口上も無事終わり、いよいよ大トリで鬼丸の登場です。
ネタは「猿後家」。

裕福な商家の後家(未亡人)さんのたったひとつの悩み、それは顔が猿そっくりな事で、それゆえに「猿」に関する言葉は一切禁句。
このたびもうっかり植木屋が「サルスベリ」と言ってしまったばかりに出入り禁止となり、当の後家さんはショックで寝込む始末。
さあ、そこへ現れたのが雄弁で知られた源さん、番頭さんから頼まれて彼女の機嫌を直すべく乗り込むが・・・。

鬼丸迫真の、素晴らしい高座でした!
古典落語の面白さが鬼丸の語り口で更に増幅され、落語という芸の醍醐味を堪能致しました。

このあと埼玉でのもうひと公演をもって、長いようで短かった鬼丸の真打披露公演も一段落です。

さあ鬼丸師匠、いよいよこれからがスタートです。
これから先、鬼丸ならではの芸風をさらに確立するために、そしてひとりでも多くのファンを獲得するために、突っ走って下さい!

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