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ヴィンテージ・ポート

2013.01.19

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写真はヴィンテージ・ポートとして名高い「GRAHAM(グラハム)」です。
でも残念ながら中身は空です。
ちょっとしたきっかけで空ボトルを手に入れ、今は事務所に飾ってあります。

ポートワインはその名の通りポルトガルが産地で、発酵途中のワインにブランデーを加えて発酵を止め、上品な甘さと旨みを引き出したワインです。
その中でもヴィンテージ・ポートは、優れたブドウが獲れた年だけ収穫年度を付ける事が許された、長期熟成のワンランク上のポートワインです。

写真のボトルは、ボトルそのものが手作りと思われます。
その丸みを帯びた触感は、作り手の温もりさえ感じられる気がして、ずっと触っていても飽きることがありません。
たとえ中身が空でも、そのボトルには長年の歴史の風格が漂い、事務所の一角を彩ってくれています。

ちなみに私は1963年生まれですが、この年のフランスワインは大ハズレ。
しかし反面、1963年のヴィンテージ・ポートは近年まれに見る大当たりの年で、また何かの折には口にする機会に恵まれたいものです。
しかし現在、世界中を探したとして、1963年のヴィンテージ・ポートは一体どれだけ存在するのでしょうか?

器用さより誠実さ

2013.01.12

しばらく前に品川のグランドプリンスホテル高輪に泊まった時の出来事です。

チェックインの際、フロントで「本日は特別期間としてお部屋の冷蔵庫のドリンクが全てサービスとなっております」と、嬉しい言葉を頂きました。
心弾ませて部屋に入り、冷蔵庫を開けると・・・ん?空っぽ。
何も入っていません。

このホテルではしばらく前からドリンクの常備を取り止めており、いつもは冷蔵庫が空である事は知っていました。
ですので、これはフロントの勘違いとして受け流そうとしたのですが、どうも納得できません。

翌朝悩んだ末にオペレーターに電話を入れました。
出たのは、たどたどしい口調の若い男性でした。
「フロントに電話を回してください」
そんな私の依頼を、思いも掛けず彼はさえぎりました。
「もしよろしければ私にご用件をお話し頂けますか?」

正直、以外でした。
彼を単なるオペレーターと思い、しかもそのたどたどしい話し方から彼をサービスマンとして少し見下してしまった自分を、あとで私は大いに恥じる事になります。

それではと、私は事の顛末を彼に伝えました。
すると彼は「私がすぐにお調べ致しますのでしばらくお待ち頂けますか?」
そう言って電話を切りました。

再び電話が鳴ったのはわずか数分後の事でした。
彼はまず今回の不手際を詫びました。
その上で彼は続けました。
「お客様には間違いなく今回ドリンクのサービスが付いております。しかし清掃の者がドリンクを冷蔵庫に入れ忘れてしまったようなのです。これからすぐに冷蔵庫の補充に伺いたいのですがよろしいでしょうか?」

何より嬉しかったのは、彼の言葉ひとつひとつに間違いなく誠意とお詫びの気持ちが込められていた事です。

「事情は分かりました。全部のドリンクは要りません。今からミネラルウォーターだけ届けて頂けますか?」
そう伝えたあと、部屋のベルが鳴るのに時間は掛かりませんでした。

ドアを開けると、まだ初々しい黒服の男性がミネラルウォーターを持って立っています。
彼は丁重なお詫びとともに名刺を差し出したので見てみると「客室係」となっています。

「先ほど電話に出たのはあなたですか?」
「はい、私です」
「大変誠実で迅速な対応、ありがとうございました」

彼の気持ちに応えるために私も名刺を渡そうと彼を部屋に入るように言い、名刺を取って引き返すと、彼は靴を脱いで靴下姿でドアの内側に立っています。
これは客室係としての決まりなのでしょう。
しかしこのシチュエーションでは、そんな姿ひとつでさえも彼の誠実さの現われのような気がして、何だか心洗われる思いでした。

チェックアウトの際、もちろんこの一件はしっかりとフロントにも伝わっていました。
スタッフの女性が私の目を見てお詫びを述べるのを聞きながら、「クレームこそ最大のチャンス」という言葉を改めて思い返している自分がいました。
と同時に、上辺の器用さより、不器用でも誠実な姿勢こそが相手の心を動かす事を改めて実感した、そんな今回の出来事であり、客室係との出会いでした。

始まりました。

2013.01.05

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「登水」の仕込みが始まりました。

写真は「山田錦」の酒母の仕込みの初日。
掛米(麹米に対して、蒸してそのまま使用するお米のこと)を投入した直後です。

男の決断

2013.01.03

あけましておめでとうございます。

先日、日頃から大変お世話になっているS酒店のKさんを訪ねました。
そこで感動の報告を聞きました。

何とKさん、今年の初夏、現在の店舗からはるか離れた某駅前に2号店の出店を正式に決めたとのことでした。
(正式決定なので他の方に話してもらってもいいよとの事でしたが、当のご本人を差し置いて私がしゃしゃり出るのも筋が違うので、ここではイニシャルとさせて頂きます)

Kさん曰く。

思い立って半年でここまで決めてしまったけれど、やらないで後悔するのは嫌なので前へ進む決断をした。

こんな時代だからこそ、酒屋が酒で食っていけることを自分が率先して証明したい。

近い将来、子供たちが自分の背中を見て親父のあとを継ごうと思える、そんな仕事をしていきたい。

このような内容を熱く語るKさんを見ながら、私も感動で胸が熱くなってくるのが分かりました。

Kさん、男です。
Kさんと私はほぼ同い年、そんなKさんが男の決断をするのを目の当たりにして、私も大いに刺激を受けました。
そして、このような方が隣にいる幸せを噛み締めて私も一歩一歩前進していかねば、そう改めて誓った新年のひとときでした。

超甘口の逸品

2012.12.31

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またまた凄いお酒を飲んでしまいました。
偶然にも先月にも取り上げたのと同じ銘柄「郷乃誉」から、今回は「超甘口」です。

日本酒度は驚くことに、何と「-40」!
アルコール分も「無濾過生原酒」で「11度以上12度未満」ですから、たぶん良質のもろみを早い段階で搾ったのでしょう。

ご紹介頂いたのは長野県須坂市丸本酒店のご主人、水本さん。
「郷乃誉」をこよなく愛する、私にとっては20年来のお付き合いになる兄貴分です。

この「超甘口」、さらには720mlで240本限定、価格も4,410円(税込)と、何もかもが桁外れです。
水本さんをご訪問した際に勧められ、驚きとともに持ち帰り、封を開けたのが翌々日の晩でした。

グラスに注いで、まずは香り。
ほのかに漂う上品でクリーミーな上立ち香は、まさに「郷の誉」そのものです。

そしてひと口含んだ瞬間、「-40」の数字に違わず、舌の上を一気に甘さが覆います。
しかし・・・この甘さが全くくどくないんですね。
とても軽やかで上品で、サラッと舌を通り抜け、そして喉に抜けます。
あとにはふくよかな甘い余韻が口の中に残るばかり。
気がつくと、もうひと口含もうとしている自分がいました。

妻も一緒に試飲したのですが、妻は私以上に感激し、「これおいしいよね」と言いながら、彼女ももうひと口。
合わせる料理次第では、相乗効果でもっとおいしさが増すこと請け合いです。

日本酒の可能性の奥深さを改めて思い知らされた今回の1本でした。

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