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This is it

2010.01.12

とある日の夜、時間を縫って「マイケル・ジャクソン This is it」を観て参りました。

昨年の6月急逝したマイケル・ジャクソン、彼がその夏にロンドンで50回に渡って行なうはずだったコンサートのリハーサル映像と舞台裏を編集したのがこの映画です。
当初は2週間だけの限定公開と銘打っていましたが、年が明けてからもアンコール上映としてずっと公開されているという事は、かなりの観客動員があったという事でしょう。

正直なところ私自身はマイケル・ジャクソンの熱狂的なファンという訳ではなく、単にロックのライブ映画が好き、そんな理由で足を運んだ程度だったので決して期待はしていなかったのですが、いざ観てみるとライブ・ドキュメントとしては屈指の出来栄えで、エンドタイトルが上がっても興奮冷めやらぬまま映画館をあとにする事となりました。

何よりもマイケル・ジャクソンというアーティストの人間像が、リハーサル風景を通してきっちりと描かれているのが素晴らしい。
完璧主義で、音楽に関して一切の妥協を許さず、そして人間や自然への愛情に満ちている、そんな彼の魅力が数々の名曲に乗って余すところなく映し出されます。

彼が口パクでなく全曲しっかりと歌っている事や、バックの演奏が打ち込みや録音を流すのではなく生のバンド主体によるものである事にも驚かされます。
自分自身だけでなく共演するアーティストに対して、細部に渡り完璧な音楽を求めていく姿は、これまでの彼へのイメージが一変させられます。
また、厳しいオーディションで選ばれた11人のバックダンサーに対しては決して上からの目線ではなく、一緒にステージを造り挙げる仲間として対等に接しているマイケル・ジャクソンの姿勢にこれまた心打たれるのでした。

そして、こんな素敵で心躍るコンサートが実現していたらどんなに素晴らしかっただろう、たぶん観る人すべてがそう感じたに違いないこの映画は、大きな喜びとそして悲しみに満ちた傑作でした。

先にも記した通り、私はライブを描いた映画が大好きです。
特に1本挙げるとすれば、1982年に公開された「ザ・ローリング・ストーンズ レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」。
前年の全米ツアーを映像化した、巨匠ハル・アシュビー監督の作品です。

この時は友人に誘われて、当時の丸の内ピカデリー(大好きな映画館でした)にこの映画を観に行ったのですが、正直ブッ飛びました。
ローリング・ストーンズがどれだけカッコよくて魅力的なバンドに映ったことか、その衝撃は計り知れません。
この時は確か、映画館のスピーカーもこの映画用の特別なものに替えられていた事もあって、音響もそれは素晴らしいものでした。
そんなこんなで私はこの時から遅れ馳せながらローリング・ストーンズの熱狂的なファンになってしまい、日本公演も全ツアーに足を運ぶに至っています。
当時の映画館は入れ替え制がなくて、しかし普段は「絶対に2度続けて観ない」(感動が薄れるから)という自分への決まり事をあえて破って、2回立て続けに観て大興奮したのもこの映画です。
一昨年公開された同じローリング・ストーンズの「シャイン・ア・ライト」(マーチン・スコセッシ監督!)も傑作でしたが、自分自身の衝撃度から行くと前作のほうが遥かに上回っておりました。

同じライブ映画でちょっと毛並みが変わったものとして好きなのが、YMOの散開(「解散」ではなく)コンサートの様子を描いた映画「プロパガンダ」。
まあこれは私の熱狂的なYMO愛から来るチョイスなのですが、これをビデオで観るたびに、当時日本武道館での最後のライブが全席無料の招待制で、それに行きたくてそれこそ100枚を越える応募ハガキを送ったあの頃の思い出や空気がまざまざと蘇ってくるのです。(ちなみにハズレてどれだけ悔しい思いをしたことか。)

ダイエット

2009.12.11

人間ドックをきっかけに約10kg減量しました。
その時の出来事です。

その日受けた検査の結果、中性脂肪やコレステロールをはじめ多くの値が標準値を上回っており、担当の先生との問診で、とにかく減量するようにと言い渡されました。
「減量かあ・・・難しいなあ」と思っていたこちらの思いを見透かすように先生は、「何か目標があった方がやりやすいでしょうから3ヵ月後に再検査しましょう。それまでにしっかりと痩せてきて下さい」とピシャリ。
そして決め言葉として「まだ健康のうちに減量しましょう。何かあってからでは遅いですよ」、確かにその通りです。

その晩から、今から思うと自分でも驚くほど節制して減量に励みました。
妻にも協力してもらい、基本的には徹底したカロリー計算による食事制限を行ないました。
そうすると1週間ほどでみるみるうちに効果が出始め、そうなると俄然面白くなってきて、日々減少する体重計の目盛りを励みに、3ヵ月後には8kgの減量に成功しておりました。

さて再検査の日。
検査を終えていよいよ問診です。
名前を呼ばれて診察室に入ると、人間ドックの時とは別の、田村正和を彷彿させる中年のダンディなドクターが座っていました。
「さて、ではまず検査の結果を診ましょう」、低い声でそう言いながら示された検査結果は、嬉しい事にほぼすべての値が標準値に戻っていました。
ただひとつ、γーGTPを除いて。

すかさず先生もそれに気付いて「γーGTPがかなり高いね?」と問いかけてきます。
私としては、それは仕方がないだろうという思いと共に「いえ、実は私はお酒の仕事をしているので」と言い訳をしたその瞬間、先生がひと言。
「二流だな」
「はっ?」
「二流だと言ってるんだよ」
先生の少し怒気を含んだその言葉の意味が分からず、しばし唖然。
すると先生が言葉を継いで「仕事を言い訳にして体調管理も出来ない者を二流と言うんだ!」
返す言葉も見つからず、謝っても仕方がないのに「すみません」と、その言葉を発するのが精一杯でした。

でも確かに言われてみればその通りで、それまでは、お酒に毎日囲まれているのだからγーGTPの値だって多少高くて当たり前、そう思っていた自分が恥ずかしくて、思わず下を向いてしまいました。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、先生は「さて、それで君はこの3ヶ月で何キロから何キロになったんだ?」と核心に迫る質問をしてきます。
私は少し気を取り直して、でもたった今受けた衝撃を消す事ができずに謙虚な面持ちで「はい、74.8kgが67.4kgになりました」。
そう答えた瞬間「おめでとう!」
「はっ?」
その瞬間、先生が右手を差し出して私に握手を求めてきます。
「よく頑張った!」
ダメだ、この先生、カッコ良過ぎ。
恐る恐る手を握り返しながら顔を上げると、先生はにこやかにそしてダンディーに笑っていました。

それを機に、体重と健康管理にはしっかりと気を遣うようになりました。
おかげ様で体重のリバウンドもありません。
加えて言えば、γーGTPもほぼ標準値まで戻りました。
やればできるじゃん、なんて自分を励ます毎日です。

マリアカラス

2009.11.07

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タイトルの「マリアカラス」、今回はソプラノ歌手のマリア・カラスではなく料理のマリア・カラスのお話です。

先日、東京六本木「レストランヴァンサン(VINCENT)」で、とある記念のパーティがありました。
この「レストランヴァンサン」のオーナーシェフ城悦男氏は、私にフレンチの世界の素晴らしさを知らしめて下さった方であり、いつもお目にかかるたびにその人間的な魅力に引き込まれています。

さてこの日のパーティ、主催者に促されて乾杯の音頭を取った城シェフの挨拶が素敵でした。
「今のこの時代、料理にしても何にしても、ともすれば時代の最先端を行こうとして、そのスタイルは刻々と変化しています。しかしそんな中、私は何と言われようと、自分が学んだ古き良き時代のクラシック・フレンチのスタイルを変える事なく、これからも頑張っていきたいと思います。乾杯!」

料理もその言葉通り、ソースと食材とがしっかりと融合したクラシック・フレンチの王道を行くものでした。
私がこのお店に行く時は必ず予約する2品もしっかりと登場しました。
アミューズ・前菜に引き続いて登場したその1品目は、まず個人的に日本で一番おいしいと思っているコンソメスープ。
この日コンソメは「牡蠣のコンソメ ロワイヤル風」でした。

何日も手間隙かけて出来上がる黄金色に澄み切ったコンソメ、そのカップの下にぶつ切りの牡蠣を浮かべた洋風茶碗蒸しが沈んでいます。
運ばれてきた瞬間からテーブル一帯にコンソメの芳香が漂い、ひと口運ぶと、ブイヨンや野菜の味わいが渾然一体となったその清澄な味わいに陶然とします。
そしてしばらくするとブイヨンから出るコラーゲンが唇をペタペタと覆い、これが城シェフのコンソメである事を実感するのです。

そしてもう1品が、魚料理に続いて出された城シェフのスペシャリテ「子羊のパイ包み・マリアカラス風」です(写真)。
これは城シェフがパリの「マキシム・ド・パリ」で修行していた時に、実際にマリア・カラスがリクエストして好んで食べた料理です。
また城さんが帰国後、銀座「レカン」でシェフを務めていた時に、現在「シェ・イノ」の井上旭シェフとともに、押しも押されぬひと皿にした事でも有名です。

写真でお分かりの通り、子羊の真ん中にフォワグラを詰め、周りにパイを巻いて火を通すのですが、この火加減が絶妙!
しかもそこにかかった黒トリュフの入ったペリグールソースがこれまた素晴らしくて、城シェフの別名「ソースの城」の面目躍如です。

ミディアムレアに焼けた子羊はジューシーで肉汁あふれ、パイのサクサクとした食感、そして香り高く芳醇なソースの味わいとあいまって陶然、最後はソースの一滴までパンで掬い上げて食べてしまい、あとに残るのは洗ったかのごとくピカピカの皿のみです。

その後もフロマージュ、デザート、プティフール(小菓子)と続き、午後7時前から始まったパーティは時計を見ると午前零時。
心地よい余韻を残しながら、本当にあっという間のひとときはお開きを迎えたのでした。

今年も龍勢祭

2009.10.12

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毎年10月の第2日曜日。
埼玉県秩父市下吉田(旧吉田町)で、今年も400年の伝統を誇る「龍勢(りゅうせい)祭」が開催され、私も参加して参りました。

青空が広がる快晴のもと、前日にテレビ東京「アド街ック天国」の「西秩父」編で、ほぼ全編を通してこの「龍勢祭」が紹介された事もあってか、例年をはるかに上回る多くの観客が周囲を山に囲まれた下吉田の地を訪れました。

会場の一角に位置する椋神社に奉納する神事として執り行われるこの「龍勢祭」。
地元の27つの流派が独自の伝統に則って、松の木に火薬を詰めたロケット(=龍勢)を1ヶ月掛けて作り上げ、それを山の中腹に建てられた発射台から15分に1発ずつ打ち上げるという、壮大で他に類を見ないお祭りで、埼玉県の無形文化財にも指定されています。

点火と同時に導火線を伝わるバチバチッっという火花が会場一帯に鳴り響き、その直後ゴーッ!という巨大な轟音とともにロケットが大空目掛けて打ち上がります。
そしてロケットが上空に達したところで、中に仕込まれたパラシュートが開いて悠然と舞い降りてくると大成功、会場一帯は大歓声と大きな拍手に包まれます。
ただしどの龍勢も成功するとは限らず、中には点火の瞬間、あるいは打ち上げの途中で爆発してしまうロケットもあとを絶たず、だからこそ見事に打ち上げに成功した龍勢には流派を越えて惜しみない拍手が送られるのです。

私と龍勢祭との繋がりは今からさかのぼる事10年ほど前、流派のひとつ「光和雲流」を構成する和田若連の皆様と廻り会えたのがきっかけでした。
「和田」と「龍」繋がりで「和田龍」の私をお仲間に加えて頂き、それからずっと私も和田若連のハッピを着させて頂いて、毎年この日を心待ちにしています。
昨日も午後4時半に打ち上げとなった和田若連の龍勢ロケットは、轟音を鳴り響かせて見事に垂直に打ち上がり、まさしく「龍」のように舞うその姿を目の当たりにしながら、私も興奮と感動に打ち震えました。
そしてそれは、発射からわずか数秒間のために全身全霊を傾ける龍勢に携わる皆さんの心意気に、改めて敬意の思いを新たにしたひとときでもありました。

1年が龍勢に始まり龍勢に終わるこの下吉田の地、翌日からまた来年に向けての龍勢がスタートを切りました。

映画2題

2009.10.05

しばらく前のオフの1日、久々に映画館のハシゴをしました。

1本目に観た作品は「サブウェイ123」。
今から約30年以上も前に製作された傑作「サブウェイ・パニック」のリメイク版です。

実は私は車や鉄道といった乗り物アクションが大好きで、小さい頃からこのジャンルには目がないのです。
お気に入りの映画を一部挙げると、「北国の帝王」「激突!」「ダーティメリー/クレージー・ラリー」「大陸横断超特急」「トランザム7000シリーズ」「コンボイ」「カサンドラクロス」「マッドマックスシリーズ」(特に2作目)「スピード」・・・どれもこれも
思い出すだけでその迫力が蘇ってきて、アドレナリン全開!の1本ばかりです。

さて、そして地下鉄パニック物の「サブウェイ123」。
しかし胸を昂ぶらせて乗り込んだ映画館は、日曜日の午前中だというのに客は数えるほどで、ちょっと肩透かしです。
自分のベストポジションに席を陣取って、いざ観終わっての感想は、うーん、微妙・・・。
でもこれは鉄道アクションを期待した者としての感想で、地下鉄職員のデンゼンル・ワシントンと、地下鉄をジャックするジョン・トラボルタとの攻防を描くサスペンス・アクションとしては、まあよく出来ているのではないでしょうか?
ただ「サブウェイ123」というタイトルの割に地下鉄がほとんど動かないのは不満(子供か?)。
それでもクライマックス、運転手がいない地下鉄が暴走するシーンはさすがに手に汗握りましたが、それよりは「フレンチ・コネクション」を彷彿させる、高架を走る地下鉄とそれを追う地上のパトカーのチェイスの方が数段カッコいいと思ったのは私だけでしょうか?
5点満点中☆☆☆です。

さて、映画館を変えて観た2本目は「サマーウォーズ」。
ひとこと、大傑作です!

この映画、実は上田市が舞台になっていて、全編を通じて上田のあちらこちらがスクリーンに登場します。
実在する上田の高校や市民祭りも登場して、上田市民にはたまらない1本です。
聞けば、この映画の製作前に結婚した細田守監督の奥様が上田市出身で、その時訪ねた奥様の実家で大家族の魅力に触れて、この映画を作るきっかけとされたのだとか。
そんなこんなでこの「サマーウォーズ」、公開前から上田市挙げての一大イベントとなっており、完成試写会を監督や声優の皆さんを招いて市民会館で開催したり、独自のポスターや観光パンフレットが有志で作られたり、全国から集まる「サマーウォーズ」ファンの皆さんを積極的に迎え入れたり、この夏は上田駅前をはじめとして街全体が「サマーウォーズ」1色となった感があります。

そんな中、遅ればせながら観た日曜日の夕方、公開から約2ヶ月も経つのに驚くことに映画館は立錐の余地もない程の超満員。
こんなことは私の知る限り久方ぶりで、上映前のその熱気にまずは心打たれました。

映画の出来は、本当に素晴らしかった!
繰り返しますが傑作だと思います。

まず、アナログの世界とデジタルの世界とを、どちらも同じボリュームで対等に描くことで、逆にデジタルが持ち得る弱さ、あるいはアナログが持ち得る強さをくっきりと際立たせており、その共存を勧善懲悪を越えた時限で観客の心を強く打つように描き切っている監督の力量に感心しました。
加えて、大家族を舞台にしながらも、ひとりひとりの登場人物を等身大で魅力溢れるキャラクターにきちんと仕上げていて、人間をしっかりと描き切っている。
そしてその個々が結び付いて、大きなひとつの人間力として発揮される魅力も余す事なく表現されている。
そんなエネルギーが全編を通じてスクリーンから溢れ出ていて、本当に感動的な1本でした。
採点は満点の☆☆☆☆☆です。

アニメ映画、侮るなかれ。
スタジオジブリの作品は今さら言及する必要もありませんが、私にとっては登場人物を全部猫にした「銀河鉄道の夜」以来のアニメ映画の傑作でした。

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