上田市出身の落語家、三遊亭きん歌がこの秋真打に昇進し、晴れて三遊亭鬼丸(おにまる)を名乗ることになりました。
師匠は落語協会会長の三遊亭圓歌。
二つ目昇進と同時に「きん歌」に改名してから苦節10年、その二つ目離れした話芸に私も魅了されていたひとりなので、この日を今か今かと待っておりました。
ちなみにきん歌と私との個人的な出会いは数年前。
それまでもきん歌は、折に触れ故郷の上田で落語を披露したり地元メディアに登場したりしていたのでよく知っていたのですが、ある日そんな彼から連絡があり、ちょっと相談があるとの事で我が社を訪ねてきてくれました。
しばし四方山話で盛り上がったあと、きん歌曰く、今度自分が高座を務める落語会で趣向を凝らしたい、ついては協力してはもらえないだろうか、との事。
その頃から寄席通いが大好きだった私は一も二もなく快諾し、早速ふたりで打ち合わせに入りました。
その趣向とは、次の落語会で「禁酒番屋」というネタを披露した際に、お客様に独自のラベルを貼ったお酒を配りたいというものでした。
「禁酒番屋」、簡単に説明します。
家中の席で酒による殺傷事件が起こった事から藩士一同に禁酒令が発せられ、酒の持ち込みを禁じるための禁酒番屋なるものが設けられました。
そんな中、大酒飲みの藩士近藤は大胆にも酒を持ってくるように酒屋に命じ、それを受けた酒屋はあの手この手で禁酒番屋を突破すべく策を講じます。
まず最初に考えたのが、酒をカステラと偽って持ち込む方法。
しかしカステラを重そうに運ぶ仕草でバレそうになり「これは水カステラというもので」と必死に誤魔化そうとするも・・・。
そんな噺になぞらえて、きん歌のアイディアで用意した一合徳利のラベルは、ズバリ「水カステラ」。
そしてビンの裏側には「但し、御門をお通りの際はお気を付けて下さい」。
ユーモアとウイットに富んだこのお酒は、落語会の帰りにお客様に配られました。
そんなきん歌との邂逅があって月日が経ち、そして迎えた先月。
彼が支援者の方々と一緒に、待ちに待った真打昇進の挨拶にやってきました。
ようやくこの日が来たかという嬉しさが胸に込み上げ、気が付けば私も心の底から何度も何度も「おめでとう!」の言葉を繰り返しておりました。
その直後、上田市内の宴会場で「真打に昇進するきん歌を応援してやろう会」が開催され、予想を遥かに上回る200名が会場に駆け付け、会場は蒸せ返るような熱気に包まれました。
(写真は、その場で挨拶するきん歌)
そして8月には東京で「三遊亭鬼丸真打昇進披露の宴」が開かれ、9月から10月に掛けて都内4つの寄席で40日に渡り真打披露興行が行なわれます。
私も早く彼を「師匠!」と呼べる日を、そして真打披露興行では「待ってました!」の掛け声を掛けられる日を、そして彼との話の中でも出た「芝浜」をはじめ三遊亭鬼丸の大ネタを聴く事ができる日を、今から首を長くして待っています。
鬼丸、頑張れ!