「男たち、美しく」
新宿歌舞伎町入口のビルの屋上から吊り下げられた、このキャッチコピーが書かれた垂れ幕を目にした瞬間、キャスティングの凄さと意外性に感極まり呆然と立ち尽くしたのは、浪人生だった19歳の時でした。
そこに写し出されていたのはデヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティの4人の男たち、そしてその下には「戦場のメリークリスマス」とタイトルが掲げられていました。
折しもYMOがアルバム「テクノデリック」を最後にしばし活動を休止、しかし突如として自称「歌謡曲」路線に転向した「君に胸キュン。」を発表して、ファンの度肝を抜いた時期でもありました。
そして5月、指折り数えて映画の上映を待ち侘びた私が公開と同時に飛び込んだのは、今は無き渋谷駅前の「渋谷パンテオン」でした。
それから何回この映画を観に映画館へ足を運んだことか。
「ぴあ」でチェックしては都内の映画館を駆け回りました。
そしてその年の暮れ、YMOは「散開」。
この時のショックたるや筆舌に尽くし難く、ガックリと脱力した事を今でも覚えています。
翌年、坂本龍一がソロによる全国ツアーを開催。
その時、教授(坂本龍一の愛称)がYAMAHAと共同開発した世界初のMIDIピアノで演奏した「Merry Christmas Mr. Rawrence」を聴いて、ピアノにシンセサイザーの音源をインプットした、映画のサントラそのままの音の再現と演奏に、これまた凄まじい衝撃を受けました。
その足で楽器店に飛び込み、「戦場のメリークリスマス」のサントラ全曲をピアノ譜にした「Avec Piano」を購入、気持ちだけは坂本龍一とばかりに陰でこっそりと練習に励んだのでした。
そういえば当時「ビートたけしのオールナイトニッポン」で、ラロトンガ島でのロケの様子をたけし流に報告するのを聴きながら、次から次へと語られるエピソードに自室で爆笑していた事を懐かしく思い出します。
先週、大島渚が亡くなった翌日に、たまたま付けたWOWWOWで「戦場のメリークリスマス」が追悼放映されていたのを眺めながら、そんな思い出が次から次へと溢れてきて、こみ上げてくるものを押さえ切れませんでした。
大島監督、ありがとう。