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9点の答案

2013.05.22

高校時代は今でも印象に残る個性的な先生が数多くいましたが、政治経済のT先生もそのひとりです。

授業という枠での「政治経済」を越えて、いわゆるナマの「政治経済」の見方を教えてくれていたのだと、今となってはよく分かります。

ある時は政治経済関連の100冊の本が印刷された紙を配って、「この本をすべて買いなさい。100冊買えばもしかしたら1冊読むかもしれないが、買わなければ1冊すら読むことはない」、この教えは今でも私の心の拠りどころになっていて、買うか買わないか迷った本は片っ端から買うことにしています。
なので書架は本で溢れているのですが・・・。

そのT先生が定期試験で出した問題。
「新聞の読み方を書け。」

その時の試験は、何とたったこの1問、そしてたったこれだけの文章でした。

正解は、客観的に書かれていると思い込んでいる新聞にも実は各紙にイデオロギーがあり偏向性がある。
であるから、それをしっかりと踏まえた上で読む事こそ肝要である。

書き方はどうあれ、それに近い内容が書かれていれば合格点がもらえました。

それを、問題の意味を履き違えて、私のように必死に優等生のフリをして、「新聞は社説から読みます。そのあと経済面・社会面を読んで、チラッとスポーツ面にも目を通して、テレビ欄はあまり読みませんが時々参考にします」などという、バレバレの嘘を書いたりすると・・・。
今でも忘れません。
返ってきた答案用紙には100点満点中「9点」の数字が光っていました。

でもこの設問から学んだ教えも、その瞬間から脈々と自分の中で息づいてきた事が、社会に出てから理解できました。

余談ですが、大学生の時の中国語の試験で、これまたさっぱり問題が解けず、苦し紛れに「四面楚歌。援軍不来。我敗退也。」と書き込んで、あわよくばこのウイットに点数をくれるのではないかと期待していた答案に書き込まれていたのは、「ご愁傷さまです」という教授のたったひとことでした。

有名人遭遇

2013.05.08

東京の学校に通う娘から、今日凄い人だかりで、誰がいるのかと思ったらトム・クルーズだったとの電話がありました。
そういえば今朝のテレビでトム・クルーズが映画の宣伝で来日しているニュースを思い出しました。
私にとってのトム・クルーズは何と言っても「トップガン」なのですが(古い?)、娘にはどう映ったのでしょう?

私が偶然遭遇した有名人でとにかく感激したのは、新宿の紀伊国屋書店でのレナード・ニモイ。
「スタートレック」でミスタースポックを演じたあの人です。
ちなみに「刑事コロンボ」では「溶ける糸」で犯人役の医者を演じています。
あの時はジャンケンで勝った数名がサインをもらえるという事で私も参加したら、何と勝ち抜け!
「スタートレック」の本にサインをしてもらいながら、今ミスター・スポックが目の前にいると思った瞬間、感動と興奮で目が眩みました。

続いては妻の話になりますが、夜の東京駅でのこと。
上田へ帰る新幹線に乗ろうとしたら、妻が大ファンの中島みゆきそっくりの女性がマネージャーらしき女性と一緒にホームを歩いていたそうです。
勇気を出して「中島みゆきさんですか?」と尋ねたら連れの女性が瞬時に「違います!」と答えたらしく、語るに落ちるというのはまさにこの事。
妻曰く「絶対に本人に間違いない」という彼女は東北新幹線に乗り込んだそうで、HPを調べたら翌日は仙台でコンサート。
ビンゴ!ですよね。

笑えるところでは、かなり前ですが、上田市民体育館へ新日本プロレスを観に行った時の出来事。
トイレで私が用を足していると、いきなり隣にニューっと立って用を足し始めたのが何と藤波辰巳。
しかも藤波さんは試合直前とあって例の黒いトランクス姿のまま。
圧倒されて思わず出るものも止まっちゃいました。

そして忘れられないのは、聖飢魔Ⅱのライブのあと、妻と一緒にデーモン閣下に会わせて頂いたひととき。
3人だけの個室で緊張しまくる私。
かろうじて今日のライブの話や相撲の話(笑)で間を持たせるも、心臓はバクバク。
そんな空気を察してか、デーモン閣下が「一緒に写真を撮ろう。カメラは持ってる?」と気を利かせて下さったのですが、あいにくカメラは持ち合わせていません。
そんな時、当時CMに出ていた閣下に向かっていきなり妻がひとこと。
「『写ルンです』は持っていらっしゃらないのですか?」

新幹線の車内にて

2013.04.28

先日、新幹線に乗った時のこと。
隣に座っていた若いサラリーマンがずっとパソコンを打っていました。
最初は気にせず読書に没頭していたのですが、そのうち彼の打つキーボードの音が気になって仕方なくなりました。

決して乱雑な打ち方ではないんです。
でも延々と途切れなく隣でキーボードをカタカタ打っている音を意識し始めるともうタメです。
読書も散漫になり、文字をただ目で追うだけで、内容が頭にまったく入っていきません。

よほど注意しようかとも思いました。
でも一般的な見地からすると、パソコンを打つ音が果たして騒音に入るのかどうなのか今ひとつ確信が持てず、止めてくれと言い出せない自分がそこにいました。

仕方なく、自分が席を移れば問題は解決すると本を閉じた時、彼のキーボードを打つ音が止み、パソコンを鞄にしまう姿がありました。
ようやく訪れた静寂・・・ほっと安堵です。
しかし私が神経質過ぎるのでしょうか。
車内で、しかも2人掛けの席の隣でキーボードを打ち続ける音、皆さんはどう思われますか?

ちなみにこの時読んでいた本は、高校生の時以来の再読となる村上龍の「コインロッカーベイビーズ」でした。
30年以上も前に寝食も忘れて熱中したこの小説の「熱」を、今の私がまた体感できるだろうか、それを確かめたくて久々に手に取ったのでした。

この本には忘れられない思い出があります。

発売当初、ハードカバーで上下巻2冊に分かれていた本作。
1ページ目から心を奪われ、むさぼるように読み続けて、ついに迎えた下巻のクライマックス・・・果たして結末や如何に。

しかし・・・えっ、最後の数十ページがバラバラ。
しかも存在しないページもある。

何と、あとにも先にも唯一経験した乱丁・落丁本だったのです。

呆然とする間もなく、とにかく続きが読みたくて、私は書店へ走りました。
立ち読みしようと思ったのです。

しかし書店を何軒回っても在庫は一冊もありません。
仕方なく私は購入したお店で交換を申し込むと、今度は上田市立図書館へ自転車を走らせました。
日本文学の棚を隅々から探して、ようやく見つけた時の嬉しさといったら。
やっと出会えたクライマックスの興奮は今でも忘れません。

ちなみに「コインロッカーベイビーズ」は、今読んでも、村上龍が20代後半に炸裂させた溢れんばかりのエネルギーに満ち満ちていました。

上田城の桜

2013.04.13

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我が社の隣にある、上田城跡公園の桜がピークを迎えています。
いつもより2週間も早い開花で、4月5日(金)~22日(日)まで開催中の「上田城千本桜まつり」も例年以上に大賑わいです。

上田酒造協会の出店にも連日大勢のお客様がお見えになり、各蔵のお酒を試飲しながらご購入頂き、ありがたい限りです。

公園内には多くの出店や屋台が軒を連ねていますが、中でも一番稼いでいるのは、猿回しの猿、ひろし君かな?

ちなみに上の写真は、先日飲み会の帰り道で、ぐでんぐでんに酔ったまま立ち寄った上田城櫓門(やぐらもん)前の光景です。
花見客も去ったあと、閑散とし始めた中でのライトアップされた桜が綺麗です。

写真下はまさにこれから猿回しが始まるところ。
ぐるりと取り囲んだ大勢の観光客からは、その都度硬貨だけでなくたくさんの紙幣がおひねりで飛び交っています。

「千年の愉楽」

2013.04.07

映画「千年の愉楽」を観てきました。

中上健次原作、そして若松孝二監督の遺作ともなった本作。

中上の永遠のテーマであった「血と地への回帰」を扱った、しかし逆に映像化が困難なこの小説を、若松監督がいかに作品として仕上げたか、それを考えただけでワクワクと興奮を押え切れない思いでした。

しかしいわゆるメジャー路線からはほど遠い作品なので、上田のシネコンでは掛からないだろうと諦めていたら、なんと長野市の古くからある映画館が上映をしているではありませんか。
拍手喝采!です。
という訳で、時間を縫って長野市まで飛んでいきました。

日曜の昼間だというのに、当日の観客は私を含めて5人。
でもこの閑散さが逆にこの作品には相応しい気もします。
ちなみに若松監督の前作「キャタピラー」を観た時は観客は私ひとりでした。

この映画で何より印象に残ったのは、中上健次が言うところの「路地」を見事に再現したロケ地、三重県尾鷲市の須賀利の集落です。

目の前は熊野灘の海、そしてすぐうしろは山に囲まれ、扇状に開けたこの小さな集落は、30年前に県道が通るまで自動車での行き来が出来ずに、舟だけが唯一の交通機関だった隔絶された地だったそうです。

当初予定していたロケ地が台風で撮影困難となり、急遽代替地として見つけられたこの集落は、しかし中上の「路地」を描き切るのに十分過ぎるほど十分な、見事な光景と空気とを備えていました。

高台に建つ、寺島しのぶ演じる主人公の産婆オリュウノオバの家と、そこから見下ろす集落の一帯。
そしてその小さな「路地」で繰り広げられる、オリュウノオバが取り上げた3人の若者の血と生と性。

私は実際に、中上健次が生まれ育った和歌山県新宮市の「路地」を歩いた事があります。
その時見た光景とは違っていても、この映画にはまさに中上が、そして若松が表現しようとした「路地」が描き切られていました。

もうひとつ大変感動した事があります。
それはこの映画のパンフレットです。

1,000円と値段は高かったですが、これほどまでに充実したパンフレットに出会ったのは久々です。
クランクインからの詳細な撮影日誌や完全版のシナリオまで掲載されていて、これで1,000円なら安いくらいです。
昨今の薄っぺらい、ろくに解説がなく写真だけが載っていて700円も800円もするパンフレットはぜひ見習ってほしいです。

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