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今さら「1Q84」

2017.05.21

村上春樹の新刊「騎士団長殺し」が刊行され、発売日には徹夜組まで出て社会的ブームになっている中、私もすぐに購入しました。

で、読み始めようと思ったところ、迂闊にも前々作「1Q84」を未読だった事に気が付き、「騎士団長殺し」で湧く世間に背を向けて、今ごろになって「1Q84」を読んでいます。
こんな奴いないだろうなあ、とか思いながら。

「1Q84」は単行本にして3冊、文庫本で6冊にわたる大長編ですが、そこは村上春樹。
ページをめくり始めたら止まらない面白さで一気読みで、あと6分の1を残すところまで来ました。

このあと時間を見つけてクライマックスまで一気読みしようと思っていますが、わくわくする思いと共に読み終わってしまう一抹の寂しさがある事も否定できません。

それにしても相変わらず村上春樹って素敵です。
彼の文章や物語の構成の魅力って、デビュー作の「風の歌を聴け」から一貫して変わらない・・・どころか、年齢を重ねるごとにどんどんパワーアップしていますよね。
前作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」も、読み終えた瞬間は村上ワールドの魅力と感動から抜け出せなくて、しばらく身動きできないほどでした。

ちなみに「1Q84」、たぶん多くの読者がそうしたように、私も堪らなくなって、作中に何度も出てくるヤナーチェクの「シンフォニエッタ」のCDを買ってしまいました。
毎日、車のカーオーディオで聴いています。
どうしてこういう曲を選べるのかなあ。

村上春樹はエッセイや紀行文も大好きですが、私が高校の時に何気なく買った村上龍との対談集「ウォーク・ドントラン」に随分と触発されたことを覚えています。

さあて、残り読むぞ。

車窓から。

2017.04.15

作家の伊集院静が書いていたエッセイで、東海道新幹線に乗っている間の3分の2は窓外の景気を見ている、という一文がありました。

それを読んで、そういえば最近は「景色を見る」という行為を忘れていた自分に気が付きました。

先日、上田から東京まで北陸新幹線に乗った時に、いつもならすぐにページを開く雑誌や単行本を封印して、しばし窓外に目をやり続けました。
高崎まではトンネルが多いんですけどね(笑)。

でも素敵なんです。

上田から軽井沢まではまさに信州ならではの引き締まった自然の風景。
それが碓氷峠を抜けて群馬に入ると、木々や山林にも暖かさが増して、平野が近いことが感じられます。
高崎からはまさに都会の中を疾走しますが、それでもところどころ田畑や山々が近付いてきて、都会の中での自然の息吹が感じられます。

飽きることのない、まさに1時間30分のドラマですね。
考えごともいろいろ出来るし。

何だか忘れかけていたものを取り戻した気がして、あたたかな気持ちに包まれ続けたひとときでした。

ただ、今回も2列うしろで若いスーツ姿の男性二人が、並んでパソコンをカタカタ打っている音には閉口しましたが。

「税制改正要望」作成

2017.03.31

昨年から上田法人会の税制委員長を務めています。

その税制委員長の一番大きな仕事が、今の時期、来年度に向けた「税制改正要望」を作成すること。
しかしこれが何といっても大仕事なのです。

なにせ「税制改正要望」と言われても、現在の税制すらチンプンカンプンの私。
どこから手をつけていいのかすら最初は分かりません。
ですので、必死に勉強をしたり、有識者の方からレクチャーを受けたりする訳です。

・財政健全化について
・社会保障制度に対する基本的な考え方
・消費税引き上げに伴う対応措置
・法人実効税率のあり方
・中小企業の活性化に資する税制措置
・事業承継制度について
 etc.

こんなテーマを自分なりに理解し咀嚼して文章化するのって、それはそれは大変なことです。
ですが、自分なりに推敲を重ねて、今年も何とか原案を作り上げることが出来ました。
かなりの苦労でしたが、出来上がってみると、現在の税制、ひいては国の財政について少し詳しくなっている自分がいて、ちょっと嬉しい思いです。

この原案はこのあと上田法人会での税制委員会→理事会→総会を経て長野県法人会、そして全国法人会へ提出されます。
途中、皆さんから出される意見やアドバイスをもとに何度も手直しをします。

まだまだ完成稿への道のりは遠いです。

最近のおすすめ

2017.03.11

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最近感動した本を何点か。

まずは漫画から。

卯月妙子「人間仮免中 つづき」。

数年前に発売された「人間仮免中」の続編ですが、これは凄い。

若い頃にはカルトAVにも出演して一躍有名になった筆者が、精神の病と闘いながらも、何十歳も年上の彼氏ボビーさんと日々を懸命に過ごす姿を、極めて明るいタッチで描いた自伝です。

特に、筆者が発作的に歩道橋から飛び降りて九死に一生を得てから(前作「人間仮免中」掲載)、ボビーさんの存在の大きさと生きる喜びとを実感するシーンは、涙なしには読めません。
漫画というジャンルを越えたノンフィクションの傑作です。

続いて蛭子能収「地獄に落ちた教師ども」。
35年ぶりに再販された、今をときめく蛭子さんの処女作です。

私が蛭子能収の存在を知ったのは今から35年前の浪人時代でした。
定期購読していた漫画評論誌「ぱふ」で、蛭子さんは「ガロ」系漫画家としてたびたび登場していて、本書を読んで大いに衝撃を受けたのでした。

当時は、こんなグロでシュールな作品を描いている蛭子能収とは一体どんな奴なんだと思っていたのですが、まさかあんなにいい人だとは(笑)。
先日ビレ・バンに並んでいるのを見つめて即買いでした。

もう一点は新書から、橋本崇載「棋士の一分」。

橋本崇載は将棋界のトップクラスに君臨する若手棋士です。

片や、NHKの放映ではいきなり金髪パーマで登場して度肝を抜いたり、歌舞伎町の片隅で将棋バーを開いたりと、話題に事欠かない名物棋士でもあります。

そんな彼が、ぬるま湯に浸かりきっているプロ将棋界を一刀両断に切り捨てたのが本書です。

何より凄いのは、閉鎖的なプロ将棋界の内幕や、そこに携わった棋士のエピソードを躊躇することなく描写していることです。
そしてそこには、今プロ将棋界が変わらなければ未来はなく、棋界の存続のためならば自分は喜んで捨て駒になるという強い覚悟が伝わってきます。

棋士の新書というと明らかに口述筆記と思われる軽い読み物が多い中、本書は筆者の魂がこもった迫力の一冊です。

マッカラン ビフォーアフター

2017.01.22

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私が一番好きなスコッチウイスキーを挙げるとすれば、シングルモルトの名品「マッカラン」です。

上田のクラシックバー「Dejavu」で、この「マッカラン」を頼んだ時のこと。
目の前に「マッカラン18年」のラベル違いの2本のボトルが並びました。

オーナーの藤極さんは2本のうち見慣れた左側のボトルをストレートで注ぎながら、「マッカランは1986年を境にラベルも味も変わってしまったんです」と説明を始めました。

マッカランはシェリー樽の不足により、一番樽の使用比率を1986年以降変えざるを得ず、それを機にラベルだけでなく味わいも変わったとの事でした。

私に出されたのは1986年以前にビン詰めされたオールド・マッカランでした。
華やかで優雅で深い味わいで、うーん、これぞマッカラン。

ふと思い立ち、もう1本のニュー・マッカランも出してもらうことに。
比較してみると・・・驚きました。
私がずっと飲んできたマッカランとは香りも味わいも全然違います。

それでもしばらくグラスを回しながら液体を空気に触れさせていると、あのマッカランの香りがしっかりと感じられてきたのには感動しましたが。

個人的には1986年以前のオールド・マッカランが好みですが、どちらもあの偉大なマッカランである事に変わりはありません。
どんなお酒にも物語があり、それを知ると1杯の味わいがより深くなります。

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