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バースデーカード

2018.10.27

東京のホテルに泊まったら、机の上に私の名前入りのカードと洋菓子が置いてありました。

何かと思ったら、私の誕生月のプレゼントでした。

カードの内側には、印刷された文字で

「お誕生日おめでとうございます。
あなたの毎日が幸せにあふれた日々でありますように。

                    〇〇ホテル
                    宿泊支配人
                    〇〇 〇〇」

と書かれていました。

でもこれって素直に喜べるサービスかと言われれば、定型化されただけのマニュアルに過ぎず、驚きはしましたけど、過度の嬉しい思いは湧きませんでした。

以前、私がもうひとつ都内で定宿にしていたホテルでは、部屋に入ると、顔馴染みのフロントレセプションの男性による手書きのカードがいつも置いてあって、たった一文のその「ウエルカム」の思いに毎回心が暖かくなったものでした。
ただその男性が系列の別のホテルに異動したあとのサービスの落差に愕然として、以後そのホテルには泊まらなくなってしまいましたが。

また、かなり前ですが、水天宮のロイヤルパークホテルに泊まった時の出来事です。

遅い時間にチェックインして部屋に入ったところ、冷蔵庫の横には、前の客が書いたままのドリンクのチェックシートが残っています。

少し迷った末にフロントに電話をして事情を話し、「決して気持ちのいいものではないのでお伝えだけしておきます」と言って電話を切りました。

部屋のベルがなったのはその直後でした。

ドアを開けると、山盛りのフルーツが乗ったワゴンを押した男性が立っています。

驚いたのはその山盛りのフルーツに対してではありません。
ワゴンを押してきたのが、ロイヤルパークをサービスに定評のあるホテルとして確固たる地位に築き上げた中村支配人、その方だったからです。

写真では見知っていたあの中村支配人が、たかがこれだけの電話に対して、自らワゴンを押して来て下さるとは。
「支配人 中村」のネームプレートの眩しさに感動しながら、心のこもった支配人のお詫びの言葉を胸に焼き付けていた私でした。

最初のバースデーカードも、支配人直筆の署名ひとつ、あるいは手書きの「おめでとう」の言葉ひとつあれば、随分違ったものになっていたでしょう。

結局は、人の心を動かすのは「物」ではなく「人」なんですよね。

沢田研二

2018.10.22

今回は沢田研二が観客が少ないのを理由に、当日になってライブを中止した件。
9,000人入るさいたまスーパーアリーナで、7,000枚しかチケットが売れていなかった事に沢田本人が納得せず、中止を決定したのだとか。

いろいろな考え方があるかとは思いますが、僕はやってほしかった。
それは20日前、大型台風直撃で公演中止が決定した中で開催された、X-JAPANの幕張メッセでの無観客ライブを観たばかりだから。

当日リハーサル中、中止を知らされたYOSHIKIが「5分考えさせてくれ」と言って、その場で無観客ライブを即決。
急遽ネットで配信されました。

凄かった。
メンバー以外誰もいないアリーナで、無観客をまったく感じさせない、壮絶なまでの熱気に包まれた3時間超。

「お茶の間!お茶の間!We are X!!!」と叫び、プレイするメンバーをパソコン越しに観ながら、その圧倒的なまでの存在感に、感動のあまり思わず涙がこぼれてしまいました。

このライブを視聴した数は何と63万人!
皆が言うように「伝説」のライブとして語り継がれると思います。

ちなみに、過去には観客が少ないライブにも行きました。

聖飢魔Ⅱの中期の頃の長野市民会館でのライブは、客席が5分の1も埋まっていなくて、文字通りガラガラ。
でも、解散直前の1999年の同所のライブでは、「ついに長野も満席にしてやったぞ!!」と雄叫びを上げるデーモン閣下に、思わず身震いする自分がいました。

あのローリング・ストーンズだって、3回目の来日ツアーでは、初来日の時の熱気が嘘のように、何と東京ドームの2階席は解放されずに無人のまま。
まじかよ、ストーンズだぜ?って本当に驚きました。
でも4回目・5回目の来日ツアーは再びチケット完売、どころかステージ裏の見えない席まで売り出される騒ぎで、東京ドームにあの熱気が蘇ってきました。

ちなみに今しばしば見られる、ステージの直近に高額な席を設け始めたのは、ローリング・ストーンズの4回目の来日公演が最初。
「ゴールデン・サークル」と称して65,000円と55,000円の席が売り出され驚愕でした。

もうひとつ、高校時代の思い出。
学校からの帰途、上田市民会館の前を通ったら、男性が手当たり次第に何かを配っています。
私も呼び止められたので聞いたら、演歌歌手Kのコンサートで昼の部がまったく埋まらずに本人が気分を害してしまい、客席を埋めるために夜の部のチケットを無料で配っているのだとか。
でもKじゃなあ~、とチケットを受け取らずに去った、まだ若かりし高校生の私でした。

で、沢田研二。
彼の音楽を求めるファンのためにやってほしかった。

サービスの心構え

2018.09.24

先日、東京で泊まった定宿のTPホテル。
私の大好きな言葉「ホスピタリティ」を存分に体感できるホテルとして、15年来のお付き合いになります。

今回も到着した瞬間、馴染みのドアベルの女性やフロントレセプションの男性の流れるような連携に迎えられながら、心地よいチェックインの手続きを済ませます。
この数分だけで、このホテルを選んでよかったと実感するひとときです。

サインをしたあとに担当の男性曰く。
「(私が予定時間よりも早く到着してしまったため)予定していたお部屋の準備が出来ておらず、申し訳ございませんが別のお部屋にご案内致させて頂きます。ですので(いつも個人的にお願いしている)アメニティが揃っておりません。追ってお届け致しますので、ご容赦ください」

部屋のベルがなったのは、それからすぐの事でした。

ドアを開けると、係の若い女性が、数紙の新聞やミネラルウォーターはじめ、いつもお願いしているアメニティを抱えて立っています。

私も両手が塞がっていたので「申し訳ありませんが、部屋の中まで持ってきて頂けますか」

その瞬間、その女性は笑顔とともに、ドアの前で靴を脱いで部屋に入ってくるではありませんか。

「靴は脱がなくてもいいですよ」と伝える私に、彼女の返答は「いえ、お客様のお部屋に我々が土足で入る訳には参りませんから」というものでした。
備品をきれいにテーブルに並べた彼女はお辞儀をしながら部屋をあとにしましたが、その姿勢にしばし心打たれる自分がいました。

そういえば、以前も部屋の不具合を指摘した時にも、係の男性は靴を脱いで入ってきたなあ。
そういうさり気ないところで、日頃のサービスの心構えって分かりますよね。

今回はその他にも、宿泊後にネットで届くアンケートに、前回素敵なサービスを受けた女性の名前を記したところ、彼女がわざわざ「アンケートに私の事を書いて下さり、ありがとうございました」と挨拶に来てくれたり、私が知る一番古株の宿泊リーダーの男性がセクションを超えてチェックアウトの手続きまで丁寧にお付き合い頂いたりと、いつもながらの非日常の快適な空間を堪能させて頂きました。

と同時に、私も「ホスピタリティ」や「心のこもった接客」を常に心掛けねばと、改めて気持ちを引き締めた次第です。

思い出の店

2018.09.01

普段は滅多に飲まない紅茶を久々に飲んでいて、学生時代に通った喫茶店を思い出しました。

私が住んでいた東京の某私鉄沿線の駅前の、いかにも普通の喫茶店です。

ある時、一緒に入った先輩が紅茶を頼んだところ、何とリプトンのティーバックが浸かった紅茶が平然と出てきました。
値段は確か450円。

「喫茶店でこれはないですよね」「値段もたけえなぁ」とか2人で苦笑する中、先輩が突然マスターを呼びました。

テーブルの横まで来たマスターに、先輩は笑顔でひとこと。
「このお店の紅茶、とっても美味しいですね!」

マスターは無言でカウンターの奥へ去っていきました。

もう1店、以前このブログにも書いた、学生時代に驚いたお店があります。

品川プリンスホテルにテナントで入っていたスパゲッティ専門店。
そのお店の名前を冠した一番安いスパゲッティが、何とお替り自由という事で、喜び勇んで頼んだところ・・・。

出てきたのはただの茹でたパスタ。
ソースがかかっていないどころか、味付けすらしてありません。
そこに、タバスコと粉チーズだけで味付けして食べろという、とんでもないシロモノでした。
しかも値段は忘れもしない780円。
衝撃でした。

やがてこのスパゲッティは、後輩が何杯食べられるかというチャレンジメニューになりました。
3杯が限度でしたけど。
今こんなメニュー出したら怒られるよな。

2度買いの本

2018.08.18

お盆休みの束の間の休息を使って、書物であふれた書架を整理しました。

すると、出てくるんですよねえ。
2度買いしてしまった本。
いかに自分が「積ん読」かが分かります。

貴志祐介「硝子のハンマー」。
村山由佳「ダブルファンタジー」。
東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」。
レイモンド・チャンドラーのシリーズ。
京極夏彦数点。
などなど。

中には、中上健次や開高健、「ゴッドファーザー」や「羊たちの沈黙」シリーズなど、どこでも読めるように、わざと2冊揃えた本もあるのですが・・・。

で、悔しいので、貴志祐介「硝子のハンマー」を早速読み始めました。
そうしたら面白くて止まらない。
深夜、ウイスキーのハーフ瓶をラッパ飲みしながら文字を追い続けました。

貴志祐介といえば、初期の代表作「黒い家」を読んだ時の事を思い出します。

さかのぼる事10年ほど前。
場所は岩手県石鳥谷町、南部杜氏で有名な町です。
ここで毎夏開かれている「南部杜氏協会講習会」に参加した折、持参した「黒い家」のページをうっかり開いてしまったから、さあ大変。
講習会の勉強そっちのけで、それから数時間、脇目も振らずに読了したのでした。

ちなみにこの「黒い家」も受賞している「日本ホラー小説大賞」の作品が私は大好き。
瀬名秀明「パラサイト・イブ」とか、岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」なんか有名ですよね。

中でも私のお気に入りは、遠藤徹「姉飼」と、恒川光太郎「夜市」の2作。

「姉」という異生物を飼い慣らす事に魅了され、自己を崩壊させていく様を描いた耽美主義的ホラー「姉飼」。

片や、夜市という異界に迷い込んだ主人公たちが遭遇するファンタジックな世界と驚愕のエンディングに眩暈(めまい)すら覚える「夜市」。

どちらも、何度読んでも読み飽きない、ホラー小説大賞の名に相応しい作品です。

さて、それでは次はギムレットでも飲みながらレイモンド・チャンドラーでも読みますか。
な~んて事がサマになればカッコいいんですけど。

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