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愛知のふた蔵

2008.05.15

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長野県酒造組合青年部(若葉会)の研修旅行へ1泊2日で行って参りました。
毎年この時期、全国各地の蔵元を訪問して勉強させて頂くのですが、今回目指したのは愛知県。
お伺いしたのは「義侠」の山忠本家酒造、そして「蓬莱泉」の関谷醸造株式会社、どちらも今大変勢いのある蔵元です。

蔵内の設備等も大変勉強になりましたが、それ以上に学ぶ事が多かったのがやはり経営方針や今後の方向性といった蔵元の考え方です。
ふたつの蔵元の考え方はある意味対極に位置していました。
しかし、風潮に流されずに我が道をしっかりと進み、結果として多くのファンを獲得し、そしてしっかりと日本酒を売っている姿勢はどちらも同じで、大いに勉強になり何よりたくさんの刺激をもらいました。
不況だ何だと言っているうちに他にやる事は山ほどあるだろう、改めてそんな事を痛感した2日間でした。
(写真は山忠本家酒造)

感動の酒場

2008.05.10

ゴールデンウイークの真っ只中、東京の日本酒専門酒場の若旦那とお母様が長野市へお見えになり、夜の食事にお誘いを頂きました。
この若旦那は以前2007.12.13のこのコラムにも書かせて頂いた方で、日本酒の啓蒙に全身全霊を傾けており、お店はいつも日本酒を愛するお客様で超満員で、そんな若旦那を私も常日頃から敬愛しております。

このお店、初めて訪問した時から衝撃の連続でした。
まず驚いたのは、お酒の酒類の多さと、その徹底した貯蔵及び提供温度の管理。
今でこそそんな事当たり前と言われそうですが、今から十数年以上前からそれをしっかりと実践していたことはやはり凄い事です。
常時数百本の在庫はそのお酒に合ったベストの状態で保管され、例えば「しぼりたて生原酒」をあえて1年寝かせぬる燗で提供する、そんな、若旦那が最もそのお酒が活きるという思いから生み出されるサプライズもざらです。

そして、とにかくお酒が安い!
銘柄に関係なく、どのお酒も驚くべき値段で提供されます。
正一合、きっちり入れられたお酒は、そのコストパフォーマンスの素晴らしさに、おいしさも倍増します。
これも、お酒の素晴らしさを伝えたいという若旦那の信念からくるものです。

さらにさらに、お母さんが作り出す料理がこれまた感動のおいしさ!
実はこれらのお皿の数々は、レシピも含めて何冊かの本になっている程です。
定番メニューはもちろんの事、その季節によって手を変え品を変え出される料理は、それをお目当てに来るお客様でいつも売り切れ必死です。

そして、それらをひっくるめて、このお店を訪れた誰もが感じるのが、若旦那とお母さんのホスピタリティーの高さです。
日本酒を飲みたいお客様なら、おふたりは心から胸襟(きょうきん)を開いて歓迎して下さいます。
知識は関係ありません。
こんな味のお酒が飲みたい、そんな好みを伝えれば、若旦那はベストの一本を選んで勧めてくれます。
お客様もそんなお店の姿勢をよく分かっていて、お互いに気持ちよく相席は当たり前、そして隣席の見知らぬ客と知らず知らずのうちに打ち解けて、日本酒が媒介する素敵な一夜が過ぎていくのです。

お客様として、全国の蔵元も数多く来店されます。
でもそれは営業とかではなく、ひとえにこのお店が好きで、そして日本酒の魅力を余すことなく伝えてくれるこのお店に最高の敬意を表して、ただ単にひとりの客としてお酒と料理を楽しむために訪問するのです。
僕もそのひとりです。

そして、蔵元の知り合いは全国に数え切れないほどいるにも関わらず、若旦那はその蔵元のお酒を蔵から直接購入することは一切ありません。
必ず酒屋さんを通して購入されています。
その事が日本酒業界が少しでも潤うためになる事を、若旦那はよく分かっているのです。

余談ですが、夏の猛暑でも、1日に出るビール(エビスの小瓶を置いています)はいつも数本とのこと。
他はすべて日本酒、日本酒比率は実に99%超、凄いのひとことです。

さて、肝心のお店の名前と所在地ですが、ごめんなさい、実は公表する事ができません。
このお店、これまでにも匿名で名前を伏せて数多くの書面や紙面を飾り、また幾多のお酒のマンガのモデルにもなっています。
でも若旦那とお母さんは、いつも来て下さるお客様をまず大切にしたい、そんな信念から店名と所在地を一切明らかにされていません。
しかしまた、それがこのお店が輝いて見える理由のひとつなのだと思います。

ヒントだけ。
12/13の本欄で取り上げた「うまい日本酒はどこにある?」(増田晶文著)からの抜粋です。
「さて、肝心の名前と場所なのだが、割愛させて頂きたい。私がいくら頼んでもこれだけは譲ってくれなかった。住所は東京・目黒区にあるビルの一階、東急田園都市線の渋谷駅に近い駅で下車する、というのが最大の譲歩だという。」

「登水・純米酒」発売開始

2008.04.26

先日の「登水(とすい)・吟醸酒」に引き続きまして、週明け4月28日(月)から「登水・純米酒」を発売します。
本年度は酵母がなかなか言う事を聞いてくれなくて、もろみをなだめになだめ、予定を大幅に越えてもろみ日数50日!、でも目指す数値まで無事育ってくれました。
原酒のアルコール度数が16.4と低めなので、そのままの状態を味わって頂きたいと思い、加水せずに原酒のまま瓶詰めしました。

ひと口含むと、まず純米酒ならではのフワリとした柔らかさが口いっぱいに広がります。
続いて、きれいな酸(今年は特にこのフレッシュな「酸」が特徴です)がオーケストラの弦楽器のようにシャープに舌の上で踊り始めます。
柔らかさと酸との調和、今年の「登水・純米酒」はこのバランスが昨年以上に個性を放って感じられると思います。
成分等は以下の通りです。

・使用米:美山錦
・精米歩合:49%
・使用酵母:アルプス酵母
・アルコール度数:16.4
・日本酒度:+3
・酸 度:2.6
・アミノ酸度:1.8

価格はこれまでと同じです。
・720ml:1365円(税込み)
・1.8L :2625円

諸物価高騰の折、本当は少しでも値上げしたいのが本音ですが、でもこのお酒は、売って下さっている酒販店様とお買い求め頂いたお客様に私自身を育てて頂いているお酒ですので、感謝の思いを込めて変更なしで臨みます。
弊社HP内「登水」のページに掲載の酒販店様からお買い求め下さい。

「登水・吟醸酒」発売開始

2008.04.14

本年度分の「登水(とすい)吟醸酒」、発売を開始致しました。
おかげ様で昨年度分が完売しご迷惑をお掛けしておりましたが、本日から新酒発売の運びとなりました。
9号酵母から来る落ち着いた華やかな香りと、山田錦ならではの繊細かつどっしりとした味わいのハーモニーをお楽しみ頂けると存じます。
山田錦で仕込んだお酒は夏を越すとまたがらりとスタイルが変わりますので、新酒の今の状態と、夏越えした熟成酒との比較を楽しんで頂くのも一興かと存じます。
なお成分等は以下の通りです。

・使用米:山田錦
・精米歩合:59%
・使用酵母:協会9号(泡なし)
・アルコール度数:15.7
・日本酒度:+4
・酸 度:1.6
・アミノ酸度:1.2

価格はこれまでと同じです。
・720ml:1260円(税込み)
・1.8L :2520円(税込み)
となっております。
当HP内「登水」のページに掲載の酒販店様からお求め下さい。
なお、もう片方の「登水・純米酒」の発売は4月下旬頃を予定しております。
その際はまたご報告申し上げます。

舌の訓練

2008.03.26

日本酒の利き酒も含めて、お酒の味覚の個人差は天性のものと思われますか?あるいは訓練によって鍛えられるものと思いますか?
諸説あるかと思いますが、私は個人的には訓練だと思っています。

今から15年以上前、当時東京都北区滝野川にあった「国税庁醸造試験所」(現在は東広島市に移転し「酒類総合研究所」)に季節講習生としてひと冬入所しました。
その中の「官能検査」という講習の中で、利き酒の「いろは」を繰り返し教わりました。
どんな内容だったか、思い出すままに列挙してみます。

・二組ペアになった水の入ったグラスがあり、そのどちらかにほんの微量の、例えばその日のテーマによってブドウ糖やクエン酸や塩などが入っている。ひと組だけならばどちらに入っているかすぐに分かるが、それが36組並べられており、ほぼ完璧に当たるまで繰り返す。

・マッチング法。数種類のお酒が入ったグラスが2組、組み合わせを変えて並べられており、それぞれの組から同じお酒を結んで一致させる。

・アルコール度数が微妙に変えられたお酒がランダムに並んでおり、それをアルコール度数が高い順番に並べ替える。
 同じことが日本酒度、酸度などでも行なわれた。

・老(ひね)香・ツワリ香・ゴム臭など、お酒に関する「異臭」を実際に嗅いで、それがどれに当たるかを当てる。

・日本酒に限らず、ワイン・ウイスキー・ブランデー・スピリッツ・リキュールがずらりと並べられ、それぞれの味わいと個性を覚える。

以上、思い出すだけでこんな感じです。

もちろんこれは専門的な講習ですので、普通はここまでは出来ません。
ただ普段から、「意識をして味わうこと」そして「2種類以上のお酒を並べて比較すること」、これだけで随分と味覚は鍛えられると私は思っています。
ふたつのお酒を並べて飲んで、それぞれのお酒について思ったことを、頭の中で構わないので言葉で表現してみる、それが上達の早道のような気がしています。

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