日本酒の味わいの決め手のひとつは「酸」であると言われていますし、私自身そう思っています。
「酸」の特徴によって、そのお酒の味わいはがらりと変わってきます。
それでは、日本酒の「酸」とは一体どんなものなのでしょう?
お酒が育っている「もろみ」の中で、「酸」は酵母によって生成されたり、麹から溶出されてきます。
その「酸(詳しくは「有機酸」)」とは、具体的に「乳酸」「コハク酸」「リンゴ酸」「クエン酸」の4種類です。
まず「乳酸」ですが、清酒中に最も多く含まれる酸です。
そしてこの乳酸は、お酒の生育中に細菌の増殖を防ぐ大変重要な役割を担っています。
この乳酸を自然に生成させるか(「生もと系」)、あるいは人工的に添加するか(「速醸系」)で清酒はふたつに大別できます。
味わいとしては非常に強い酸味を持っています。
「コハク酸」は「乳酸」と並んで、やはり清酒中に最も多く含まれる酸です。
旨みのある特有の酸味で、お酒の味わいを作る大切なファクターのひとつです。
「リンゴ酸」は乳酸・コハク酸に次いで多く含まれる酸で、その名の通りリンゴやブドウなどの果実に含まれている、爽やかな味わいの酸です。
「クエン酸」はレモンなどのかんきつ類に多く含まれる酸で、ご想像の通り「すっぱい」味わいの酸です。
ひとえに「酸」といっても、上記の通りそれぞれが特有の風味を持ち、実際に味わってみるとその違いに驚きます。
これらの酸が組み合わさったバランスの上で、日本酒の味わいの一角は決まっていくのです。