2008.09.16
秋の気配がいよいよ感じられ始めた今日この頃。
信州上田という場所柄もあり、弊社にも多くの観光のお客様がご来店されます。
そしてお時間があるお客様には、(もちろん運転されないことを確認差し上げた上で)心行くまでお酒のご試飲をして頂きます。
その際にお客様からいろいろなご質問を頂くのですが、正直に申し上げますと、お酒のラインナップもいろいろある中で一番お客様にとって分かりにくく、私も説明しづらいのが「本醸造」というお酒です。
ちなみに「本醸造」の酒税法上の定義は以下の通りです。
・原材料は米・米麹・醸造アルコール。
・精米歩合は70%以下。
・香味・色沢が良好である。
・醸造アルコールの量は白米の重量の10%以下(白米1トンに対して100%アルコール116.4リッター以下)とする。
全然分からないでしょう?
特に4点目。
要は添加する醸造アルコール量を普通酒よりも少なめにしっかり制限してますよ、という事なんですけど、お客様にとってはまるっきり意味不明ですよね。
例えば「吟醸酒」なんかは、「精米歩合60%以下。すなわちお米の4割を削って6割以下の大きさにしたお米だけを使用したお酒は全部『吟醸酒』です。でもその味わいは千差万別。あとはお客様の好みでお決め下さい」なんて説明できるのですけれど、「本醸造」は捉えようがなくて難しいです。
「本醸造」の定義にある「精米歩合70%以下」のお酒なんて、今は当たり前ですし。
あえて「本醸造」を私なりにお客様に分かりやすく説明するとすればこんな具合でしょうか。
「原材料の一部である醸造アルコールを添加する量を制限したお酒です。これをじゃぶじゃぶ入れ過ぎてしまうとコストの安い三増酒になってしまうのですけど、しっかりと造り上げたお酒に少量を入れることでそのお酒に軽快さが増して、飲みやすくさらりと飲み飽きしないお酒になるのです」
時にはこんな説明も加えます。
「醸造アルコールはコーヒーで言えばミルクの役割でしょうか。例えばブラックのコーヒー(=純米酒)は豆の味わいや風味がストレートに分かりますけれど、それが強いとか苦手と感じるお客様もいらっしゃいます。そんな時、ごく少量のミルクを加える事で、コーヒーそのもののスタイルは残したまま味わいは優しく、そして飲みやすくなります」
でも結局一番お客様に分かって頂けるのは、「本醸造」がどういう定義なのかではなくて、我が社の「本醸造酒」はこういう特徴です、というそのものズバリの説明なんですね。
「お酒本来の味わいをしっかりと残しながらも、口当たりは軽快で喉越しも抜群。ですので何杯飲んでも飲み飽きしません。
これからは『食欲の秋』ですから食事と一緒に召し上がって頂けると料理もお酒もより一層引き立ちますよ。せっかく信州上田にいらっしゃるのですから名産の松茸をはじめとしたキノコ料理、あるいは香り高い新そば、かような素材本来の持ち味をしっかりと活かした料理と合わせて頂ければ相性抜群です。和食だけでなくバターやクリームを使った洋食にもよく合います。例えばこの季節の鮭を使ったムニエルなんかもいかがでしょうか?」
こんな具合です。