記事一覧

酒粕の季節

2009.07.27

ファイル 126-1.jpg

今年も夏の酒粕が出荷のピークを迎えています。
主に漬け物用として、漬物の専門店・酒販店・スーパーそして一般のお客様まで広くご利用頂いています。

ここで酒粕についてざっとおさらいをします。
まず「酒粕」とはお酒をしぼったあとに残る固形分です。

冬の間よく見かける板状の粕(=「板粕」)は、お酒をしぼる圧搾機の中の何十枚もの板に、お酒が通る際に分離してくっ付いたものです。
それを1枚1枚丁寧に剥がして「板粕」として出荷します。

「板粕」は、それとは別に夏用の「踏み込み粕」として仕込まれます。
冬の間に「板粕」をタンクや槽の中に詰めた上で、空気を抜くために足でしっかりと踏み込み、あとはそのまま夏まで寝かせます。
酒粕には酵母が多数残存していますから、その間にも粕中では発酵が進み、夏を迎える頃には板状の粕はすっかり姿を変え、半固形状の「踏み込み粕」となります。
ですから時折、夏に「板粕」をご希望されるお客様がいらっしゃいますが、冬に販売する分を除いてはすべて夏用に踏み込んでしまいますので、基本的には夏に板粕は残っていないのです。

そしてよく知られているように、酒粕は栄養の宝庫です。
以前の当ブログでも触れましたが、酒粕はアミノ酸・ビタミン・ミネラルをはじめとした多数の栄養成分を多量に含み、しかも低カロリーの、極めて優れた健康食品です。
今の時代、特に若い方は酒粕に触れる機会が減っているかと思いますが、粕漬けや粕汁などの粕料理に出会った時はぜひ積極的に味わってみて下さい。
栄養はもちろんのこと、味わいも美味しいこと請け合いです。

ウイスキー蒸留所

2009.07.21

ファイル 125-1.jpgファイル 125-2.jpg

上田から車で30分程の、西軽井沢に位置する「メルシャン軽井沢美術館」へ行って参りました。
普段から前を通る機会は多いものの素通りする事が毎回で、今回も近くを運転中、時間に余裕があったのでふと思い立って立ち寄ってみたのは、夏の日差しが降り注ぐ日曜の午後でした。

ここは「美術館」とはいうものの、敷地内で現在もシングルモルトウイスキー「軽井沢」を製造しているれっきとした現役の蒸留所で、その他にも人気のレストラン「エルミタージュ・ド・タムラ」、緑に囲まれた爽やかな庭園、野外で寛ぐ事もできるカフェ、ウイスキーショップやミュージアムショップなど、いくつもの施設が楽しめる開放的な空間となっています。
この日の美術館は次の展覧会の準備で閉館中だったのですが、それでも敷地内を散策しながらの楽しいひとときを過ごす事ができました。

ウイスキーと食のショップ「メルシャンプラザ」に立ち寄ると、ちょうど入口の看板に「ウイスキー蒸留所見学」の案内が出ていて、「次回見学は15時から。ご希望の方は少し前にこちらまでお集まり下さい」と書いてあったので、せっかくだからとそれまでの時間を店内で過ごし、やがてスタッフの女性から声が掛かったのを合図に私もその列に加わりました。

係の女性が集まった10人程を引き連れて、敷地の片隅にある、普段は「関係者以外立入禁止」の蒸留所内へと我々を誘導します。
施設そのものはとても小じんまりとしていて、麦芽の糖化槽・発酵槽そしてウイスキー蒸留のシンボルともいえるポットスチル(蒸留釜)が並んでいる蒸留所、続いて出来上がったウイスキーを長い眠りに就かせる貯蔵庫、その2つの建物を、説明を聞きながらざっと20分程で回り終えました。
印象的だったのは、真っ暗な貯蔵庫へ入った時のかぐわしい香り。
大量のシェリー樽が醸し出す芳香が暗い室内に漂って、その香りが熟成までの長い時間の重みを感じさせてくれたのでした。

ちなみに私はウイスキーも大好きです。
基本はスコッチウイスキーなのですが、日本産のウイスキーの美味しさは、他のウイスキーとはまた一線を画す特徴と持ち味があると思っています。
例えて挙げれば今回のメルシャン「軽井沢」、ニッカ「余市」、サントリー「山崎」・・・。
どれもスコッチやアイリッシュやバーボンに負けない、出色の味わいです。

馴染みのバーへ行き、ウイスキーの銘柄だけを指定すると、最近はその中から「カスク・ストレングス」、即ち一切加水していない、アルコール度数60度前後の樽出し原酒を勧められます。
以前はなかなか手に入らなかったこの「カスク」が今はかなり出回るようになっています。
確かに度数も高く、ストレートで飲むにはかなり強いのですが、水割りにするにはやはり惜しく、大抵はロックかトゥワイスアップ(常温で水と1:1で割る飲み方)でちびりちびりと頂いています。
そうしているうちに、おこがましい言い方ですが、以前スコットランドへ行った時、観光そっちのけでウイスキー蒸留所を回った時のあの空気や匂いが鮮やかに蘇って来て、心地よい酔いがさらに体の隅々まで回っていく気がするのです。

晩酌の楽しみ

2009.07.03

自宅で晩酌する時は、必ず他の蔵元のお酒を、しかもできるだけ2本以上並べて飲むようにしています。
多い時には5本以上のお酒が卓上を飾ります。
いろいろな蔵元のお酒を味わうことは大変勉強になりますし、またこれは私の持論ですが、利き酒の能力を高める一番手っ取り早い方法は、何本かのお酒を同時に飲んで比較して、心の中でも構わないので自分の言葉で表現してみる事だと思っています。
まあそれはただ単に飲兵衛の言い訳だと周りからは突っ込まれそうですが。
でも、日本中の数限りない銘柄のお酒や、あるいは同じ銘柄の中でも違ったスペックのお酒を飲んでいると、いつも新しい発見や感動があって、おいしさとあいまって、それは本当に楽しいひとときです。

ここのところ、同一銘柄の純米吟醸で、精米歩合が50%と60%のものを一緒に買ってきて飲み比べるという事を何度か繰り返しています。
ここ数回を例に挙げると「大吉野」(長野県)、「獺祭(だっさい)」(山口県)、「大信州」(長野県)、「貴(たか)」(山口県)等です。
長野県と山口県に偏っているのは、これはたまたまです。

こうやって、例えば「純米吟醸」といった同じクラスで精米歩合だけが違う同一銘柄を飲み比べてみると、もちろん使用米や酵母が異なる場合もありますが、「精米歩合」の違いが味わいにどのように反映されているかがよく分かります。
特に「精米歩合50%」と「精米歩合60%」というのは、その違いが微妙なだけに、その「10%」の差が生み出す味わいの差が、比較する事によって明確に体感できます。
言い換えると、お米を削る事によって生まれる、日本酒の深みがはっきりと理解できるのです。

もうひとつ、この飲み方によって、どのお酒にも共通するその蔵元独自の味わいが、ある程度分かってきます。
先日も、いつもお世話になっている酒販店さんにお伺いした際、勉強のために試飲させて頂いたお酒がたまたましばらく前に晩酌で飲んでいたお酒で、いつもの味わいとは趣きを異にしているなあと思ったら、やはりそのお酒は新規需要を呼び起こすための、あえて違う方向性を目指した新銘柄である事を教えて頂きました。
こんな事もお酒を飲む上でのさり気ない楽しみのひとつです。

滋賀の酒蔵

2009.06.13

ファイル 120-1.jpgファイル 120-2.jpg

去る6月9日~10日、長野県酒造組合青年部(通称「若葉会」)の研修旅行で、今年は滋賀県を回って来ました。

早朝出発し、まず蔵元見学で伺ったのが、琵琶湖の西岸に位置する高島市の上原酒造株式会社様。
ここでは専務の上原さんがお相手して下さいました。

見た目は小さな酒蔵ですが、酒造りに対するポリシーは太く大きく、大変感動させられました。
まずここの蔵元は、今の時代に逆行し、大半が山廃仕込み。
即ち、日本酒醸造では雑菌駆除のために欠かせない乳酸を「添加」するのではなく、天然の乳酸菌を取り込んで乳酸を生成させる、昔ながらのの手の込んだ製法を用いています。
更に驚いたのが、酵母無添加。
山廃仕込みは、今の時代、酵母そのものは添加するケースが多いのですが、こちらは家付き酵母を自然に増殖させる、これまた大変時間と労力とが必要な古来からの製法を取られていました。

続いて驚かされたのが槽場(ふなば)、つまりお酒を上槽する部屋です。
目に飛び込んできたのは、長さ5mもあろかという巨大な丸太と、見るからに使い込んである昔ながらの木の槽(ふね)。
初めて見ましたが、要はその木槽(きぶね)の中にもろみを入れた袋をびっしりと重ね、その上から天秤の原理で丸太で圧力を掛け、自然の力でお酒を搾り出す方法なのだそうです。
その「木槽天秤搾り」、通常の圧搾機より搾れるお酒の量は少ない分、出来上がったお酒は雑味のないきれいな味わいとなるそうです。

そしてもうひとつ、熟成に対する考え方も確固たるものでした。
山廃仕込みのお酒は一般的に味わいは太く旨味もしっかりと乗っておりますが、こちらのお蔵ではそんな個性をさらにしっかり主張すべく、ほとんどのお酒を1年以上しっかりと熟成されていました。
この日はすべてのお酒を利かせて頂いたのですが、確かに20BY→19BY→18BYと貯蔵年数を経るほど、それに比例してお酒の旨味や深みも増し、新酒とは明らかに一線を画す味わいでした。
ちなみに商品の一番のボリュームゾーンは3年熟成酒とお伺いして、これまた驚きの連続でした。

続いて今度はぐるりと琵琶湖を回りこんで、もう一件草津市の太田酒造様(メイン銘柄「道灌」)を見学させて頂き、その後向かったのは大津プリンスホテル。
ここでは滋賀県の蔵元で組織する「滋賀県技術研究会」の皆様がちょうどこの日に研究会を開催されていて、我々が滋賀まで足を運ぶということで、急遽合同の「長野県・滋賀県酒造交流会」をセッティングして下さったのでした。

全員が揃ったところでまずは両県の需要開発の報告を交互に行い、そのあとすぐに利き酒会。
滋賀県21蔵、長野県16蔵、この日集まった全蔵元が出し合った純米吟醸酒を片っ端からじっくりと利かせて頂きました。
舌の官能を鍛えるには、1本でも多くのお酒を目的意識を持って同時に利き較べる事が何よりの方法だと個人的には思っておりますので、これは絶好の機会と時間いっぱい勉強せさて頂きました。
そしてそのあとは懇親会。
私自身は滋賀県の蔵元さんとこのようにお話しできる機会は初めてだったので、好奇心丸出しでいろいろと話に花を咲かせて頂きました。

それとお料理に琵琶湖名物の「鮒(ふな)寿司」が出てきて、これは主催者がわざわざ我々のために用意して下さったそうで、好みは分かれるでしょうが、発酵食品大好きな私としては感涙に咽ぶひと品でした。
もったいなくて、発酵が進みつつある鮒の身を箸の先にちょこっと付けては、それを舐めながらお酒をくいくい。
これだけで杯が何杯も進んでしまいました。
最後は皮とそこに付いた身に至るまで食べ尽くそうと取っておいたら、ちょっと目を離している間にホテルのスタッフが皿を持っていってしまいしばし呆然。
顔は笑いながら心は泣いた一瞬でした。
私の鮒寿司を返せ!

写真上:上原酒造様/写真下:太田酒造様

「和田龍 新酒を味わう会」

2009.06.06

ファイル 119-1.jpg

去る6月3日(水)、毎年恒例の「和田龍 新酒を味わう会」を今年も上田市内のパーティ会場にて開催致しました。
本年で23回目を迎えるこの会、日頃から公私ともどもお世話になっているお客様100名をお招きして、今年もお酒やお料理や音楽を存分にご堪能頂きました。

開宴時間の午後6時半、乾杯の前にまずはゲストによる音楽をお楽しみ頂きます。
今年お招きしたのは昨年に引き続き、日本におけるエレクトーン奏者の第一人者、神田将(ゆき)さん。
昨年ご出席された大勢の皆様から熱烈なアンコールを受けて、再度のご登場です。

エレクトーンというと、まだ多くの方は結婚式場などでBGMとして流れるあのフカフカした音を思い出されるかと思いますが、現代エレクトーンは全くの別物。
最新の電子技術を駆使し、たったひとりでフルオーケストラの演奏をすべて表現し得る、最新鋭の楽器なのです。
その演奏を初めて聴かれた方は、圧倒的な表現力と音色とに衝撃を覚えること請け合いです。

この日神田さんに演奏頂いたのは次の5曲。
・歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」(サン・サーンス)
・歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」(プッチーニ)
・歌劇「カバレリア・ルスティカーナ」より「間奏曲」(マスカーニ)
・「リバーダンス」(タップダンス劇「リバーダンス」より)
・「フィンランディア」(シベリウス)

これらの曲目が神田さんの軽妙なトークと共に繰り広げられ、エレクトーンの音色と神田さんのテクニックとに酔いしれた40分間でした。

そしていよいよ乾杯。
この日お出ししたお酒は下記の6点。
・和田龍大吟醸(冷蔵)
・登水(とすい)吟醸・原酒生酒(冷蔵)
・登水(とすい)純米・原酒生酒(常温)
・和田龍吟醸生酒(冷蔵)
・清酒和田龍(熱燗)
・和田龍にごり酒(冷蔵)

まず乾杯のお酒として「和田龍大吟醸」。
「新酒の会」ではありますがあえて1年半寝かせた「熟成酒」をお出しし、飲み頃のピークを迎えた大吟醸の醍醐味をお楽しみ頂きました。
お酒によって新酒で味わうもの、あるいは寝かせて味わうもの、そんなスタイルの違いがある事をお分かり頂ければと思いました。

続いて「登水・吟醸」と「登水・純米」は2本同時にお出しして、シャープな「吟醸」と柔らかな「純米」の味わいの違いを感じて頂きました。
特に「登水・純米」は、その膨らみを存分に感じて頂くために、「生酒」ではありますがあえて常温でご提供致しました。
冷たいままですと、どうしても甘さが閉じこもってしまい、このお酒の真価が発揮できないと思ったからです。

続いては当社の冷酒の定番、さらりと軽快で爽やかな「吟醸生酒」と、やはりすっきりした飲み口の当社のレギュラー酒「清酒和田龍」をこちらは熱燗にて、これまた同時にお出ししました。
今は燗と言うと「人肌燗」や「ぬる燗」に人気がありますが、「清酒和田龍」はその軽快な酒質からもあえて「熱燗」の方が真価を発揮すると考えまして、アツアツの「熱燗」にてのご提供です。

そして最後に「和田龍純米にごり酒」。
こちらはお肉やデザートと合わせて、締めの一杯としてお出ししました。
当社のにごり酒はあえて「にごり」をたっぷりと出しているので、こんなにごり酒は濃くて飲めないという方が半分、反面このにごり酒しか飲めないという方が半分の個性的なお酒です。
皆様はどうお感じになったでしょうか?

乾杯から場内は心地よいざわめきに包まれ、途中「和田龍グッズ」(「生酒グラスセット」・「和田龍エプロン」・「和田龍トートバッグ」・「和田龍豆樽」)が当たる抽選会を挟み、最後はアンコールによる神田さんの再度の演奏を聴きながら、時間を見ると時計の針は既に9時前を指しておりました。
皆様のおかげを持ちまして、今年も「和田龍 新酒を味わう会」が無事お開きとなりました。

皆様をお見送りしているとBGMとして流れてきたのが、神田さんの演奏による「タクシードライバー」のテーマソング。
個人的に大好きな1曲で、思わず心の中で「ブラボー!」を叫んでしまいました。

そしてそこからが更にサプライズ。
何と社長のお仲間がずらりとステージ前に勢揃いして、昨年も繰り広げられた、神田さんの伴奏による「青い山脈」の大合唱が今年も始まりました。
中には私がお招きした若いお客様の姿もちらほら。
大声で歌うその楽しげな皆様のお姿を拝見するに付け、何だかこちらまで無性に嬉しくなってきて、最後の最後にほっと緊張の糸が解けた一瞬となったのでした。

皆様のおかげで今年も無事終了した「和田龍 新酒を味わう会」、100名という大勢のお客様が集まって頂いた事への感謝の気持ちをしっかりと噛み締め、これからもおいしい日本酒をお召し上がり頂けるために頑張っていきたいと思います。

ページ移動