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正月雑感

2010.01.03

あけましておめでとうございます。
今日は思いつくままに頭に浮かんだ事を書き連ねます。

年末も押し迫って、折ある毎にお越し頂く埼玉県のお客様Nさんがお見えになりました。
「しぼりたて生原酒」の発売を知って、信州で年越しをされるに当たり、わざわざお買い求めにお寄り頂いたのです。
ここ数年は年内に発売が間に合わず、Nさんにもご迷惑を掛けていたのですが、今年は何とか間に合ってホッとしております。
Nさんと談笑する事しばし、たくさんのお酒を積み込んで目的地に向かわれるお車を見送りながら、このようなお客様おひとりおひとりに支えられながら商売をさせて頂いている事に感謝の思いを新たにした一瞬でした。
今年もまた、弊社そして私を支えて下さる皆様の思いに応えるべく、いつも感謝の気持ちを忘れずに精一杯努力していきたいと思います。

さて迎えた新年、初詣を済ませたあと所要のため慌しく1泊で東京へ行って参りました。
夜半に着いた東京駅、その足でエキナカのショッピング街「グランスタ」に立ち寄りました。
ここは数え切れないほどの弁当・惣菜・スウィーツのお店で賑わっていて、見ていて飽きる事がありません。
ふと思い立ち、その中で出店している酒販業界では有名な「はせがわ酒店」に立ち寄り、今宵の寝酒を買い求める事にしました。

棚に並んでいたお酒を見比べながら選んだ1本は「醸し人九平次<rue Gauche>純米吟醸720ml」1,575円でした。
この愛知の酒「醸し人九平次」、もともと私は大好きな銘柄で、これまでもほぼすべての種類を飲み干しています。
今回この1本を選んだのは、①これまでに飲んだことのない「九平次」だった事、②「山田錦/精米歩合50%/1,500円(税別)」という魅力的なスペックがどういう味わいなのか試したかった事、③「アルコール分13度」に興味が惹かれた事、以上の3点でした。

さて、その晩早速開けたその1本、ひと口飲んだだけでその素晴らしさに感銘を受けました。
まず舌に感じるサワサワとしたガス感、そして「九平次」のスタイルに共通する力強さと繊細さとが兼ね備わったインパクトある味わい、甘さと酸とのバランスが見事なんですね。
そしてスッと切れるフィニッシュの心地良さ。
正直なところ、13度という低アルコールの日本酒でこれだけ素晴らしいものを飲んだのは初めてで、衝撃を受けました。
その証拠に、1時間もしないうちに四合瓶1本がカラになっておりました。
改めて日本酒の奥深さを勉強させて頂いた次第です。

続いては他愛もない話ですが。
翌日、JR山手線の原宿駅に降り立ちました。
いつものように新宿駅に向かって右側のドアで降りようとしていると・・・何と開いたのは反対側のドア。
驚きながらもすぐに合点がいきました。
明治神宮の初詣客に対応するために、正月だけ上下線のホームを分けて混雑を緩和させていたのですね。
そういえば原宿駅を通るたびに、使われていない野ざらしのホームが目に入りましたっけ。
こういう時のためにあのホームは存在していたのですね。
ただそれだけの事でしたが、何だかちょっぴり得をした気分になりました。

そして上田に帰る新幹線、東京駅に到着する新幹線からドッと帰省客が降りてくるのに反して、東京発の新幹線はガラガラ。
今回も自由席に乗ったのにも関わらず、最後まで私が座った車両は半分ほどの座席が埋まっただけでした。

それにしてもいつも感心するのは、東京駅の東北・上越・長野新幹線ホームの清掃スタッフ。
今到着した新幹線が出発するまでのわずか数分の間に、目にも留まらぬ速さで車内を清掃していくのです。

まず倒れている座席のリクライニングを元に戻すと、それを合図に機械操作で全ての座席が逆方向を向きます。
その間にもスタッフは車内に残されたゴミ屑を素早く広い、背もたれのテーブルをひとつひとつ開けては吹き上げ、床にモップを掛け、その間わずか8分程度。
ちなみに彼らの存在のおかげで、東北・上越・長野新幹線は4面のホームしかない中で、現在の過密ダイヤの編成が可能になったそうです。

さて、そしてここからです。
スタッフが車内の清掃を終えると、全員が外に出たあとに一列に並んで、ホームで待っている乗客に深々とお辞儀をするのです。
このサービスを実践しようと考えた方は素晴らしいですね。
たったひとつのお辞儀で、それまで待たされていたイライラが吹っ飛び、逆に「ご苦労様」というねぎらいの気持ちが自然と湧き上がってきて、気持ち良く乗車する事ができるのです。
長野新幹線が開通する前、やはり信越本線の横川駅で、「峠の釜めし」を売っていた売り子さんが特急「あさま」が発車すると列車に向かって深々と頭を下げていた光景と重なります。
気持ちのこもったお辞儀、これってやっぱりサービスの基本ですね。

「純米しぼりたて生原酒」発売

2009.12.27

今年もこの季節の風物詩、「和田龍純米しぼりたて生原酒」の発売を開始致しました。
仕込み第1号のもろみを搾ってすぐに、一切手を加える事なくそのまま瓶詰めした、まさに季節感溢れるフレッシュなお酒です。

グラスに注いでまず香りを嗅ぐと、レモンやライムを思わせる爽快感溢れる香りが鼻腔を突き、陶然となります。
続いてひと口含むと、甘み・酸味・旨み・苦味、それぞれの味わいがまさに絶妙なバランスで折り重なって口いっぱいに広がります。
どの味わいひとつ欠けていても、この調和の取れたバランスは成り立ちません。
そして、そのトロリと芳醇なひと口をゴクリと飲み干すと、不思議な事にそれまで舌に踊っていた味わいがきれいに洗い流され、口の中にはあと味の良さだけが心地良く残っています。
そしてついもう一杯、次のひと口に進んでしまうのです。

香り高く、そして芳醇さと軽やかさとを兼ね備えた上品な1本、それが今年の「和田龍純米しぼりたて生原酒」です。

ちなみに今年は例年以上にオリも多く絡めてあります。
ですのでお酒そのものも、透明というよりはオリの白さが感じられますが、これもまた今年の「しぼりたて生原酒」のおいしさの要素のひとつと思って頂ければと存じます。

加えて、もちろん炭素濾過(ろか)もしていません。
まさしく搾ったそのままの状態の旬を感じさせる1本、ぜひ味わってみて下さい。

ちなみに今の時期でしたらぜひ鍋料理と合わせてみて下さい。
肉・魚、どちらの鍋でも、具材やお出汁の力強さと相まって、「しぼりたて生原酒」があっという間に進むこと請け合いです。


和田龍しぼりたて生原酒
・1.8L :2,520円(税込)
・720ml:1,260円(税込)

信州の雪

2009.12.19

昨夜から今朝にかけて、上田の地にもこの冬初めて雪らしい雪が降りました。
早朝まずカーテンを開けて真っ白に光る庭を見て早速着替え、雪かきを始めました。
会社の入口、駐車場、周辺の道路等、念入りに雪をかいているとかなりの重労働になり体も火照ってきます。
今日の雪は紙雪で水を含まない軽い雪だったので、思ったよりも短時間で終えることが出来ました。

個人的には雪かきが大好きです。
ただひたすらに肉体を酷使する快感といいますか、小説家の中上健次ではありませんが、単純肉体労働に没頭する喜びみたいなものをいつも感じながら体を動かしています。
ですから大雪になればなる程、さあ雪かきをやるぞ!という闘志に火が付くのです。

ちなみにひと口に信州といいますが、長野県の東信地区にあたる上田地域は比較的降雪量が少ない事で知られています。
上田からたった40kmしか離れていない長野市はかなりの雪が降りますが、大雪の長野市から上田市に戻るとそこは雪ひとつない快晴、なんて事もざらです。
経験でいくと、どうやら途中の戸倉上山田温泉がその境目のようです。
ここを抜けると雪がピタッと止み、道路もきれいに乾いていて、その豹変振りに驚かされる事がたびたびです。

さて、雪が降り本格的な寒さが訪れると、お酒の仕込みもより一層はかどる季節となります。
それは日本酒製造の特徴のひとつに「低温発酵」が挙げられるからです。

もろみ中の酵母が最も活性を示すのは25℃前後です。
ただ、日本酒をこの温度で仕込んだ場合、日本酒は「糖化」(麹菌が米中の「デンプン」を「ブドウ糖」に分解する)と「発酵」(酵母がその「ブドウ糖」を「アルコール」に変える)が同じタンクで同時に進行する「並行複発酵」ですから、品温が高いと酵母の元気が良過ぎて糖化と発酵のバランスが保てず、著しく酒質に影響してしまいます。
ですから日本酒製造では、仕込みの温度を10℃前後の低温に保ち、常に糖化と発酵のバランスを見ながらゆっくりともろみを育てる必要があるのです。

ただし今はサーマルタンクの発達や蔵そのものの全館温度管理化が進んで、昔ほど外気による仕込みへの影響は出なくなっています。
しかし逆に言えばそのような設備が進んでいるという事実そのものが、仕込みにおける温度管理の大切さを示していると言えるでしょう。

励みの1本

2009.12.05

敬愛する、広島県の株式会社天宝一の村上社長から本年度の新酒が贈られて参りました。
「天宝一 八反錦純米生原酒」がその1本です。

村上社長は、私と同年代の熱き五代目です。
数年前に初めて知り合った時から、何かに付けまだまだ未熟な私を叱咤激励して下さり、殊にお酒の製造に関しては、自分の酒造りに賭ける「思い」も含めて私に伝授して下さっています。

ある年はわざわざ広島県までお招き頂き、それこそマンツーマンで1日掛けてご自身の蔵をご案内頂いて、製造技術を惜しげもなく教えて頂きました。
また、村上社長を慕って集まる若き蔵元の皆様も本当に魅力ある情熱家ばかりで、この方々との出会いが私の大きな財産のひとつとなっています。
今回送って頂いたお酒も、新酒が搾れたこの時期に合わせて「わしも頑張っとるけ、和田はどうじゃ?」という暖かな無言のメッセージです。

さて、早速その晩開けた「天宝一」の新酒、ひと口飲むと・・・昨年よりも更に力強さが増して、まさに村上節全開の1本です。
聞けば今年は若い新人ふたりが蔵に入っているのだとか、確実にパワーアップしています。

まず口に含むと、青竹を割ったようなフレッシュな香りがいっぱいに広がり、そのあと柔らかく厚みのある旨みと、そしてシャープな酸とがバランスよく絡んで口の中で踊ります。
酸がきれいに効いているのでキレよく飲み飽きせず、つい次の一杯に進んでしまいます。

この日の夕食のメインはカキフライだったのですが、これまたこのお酒に合う事といったら。
カキの磯を思わせる複雑な味わい、そしてフライの油、それぞれがこの新酒の力強さに見事にマッチして、気が付いたらあっという間に半分以上がカラになっておりました。
1日で飲み切ってしまうのはもったいないとようやく自制が働き、今日はここまででお預け。
また今晩、今度は少し温度を変えて、そして違う肴に合わせて味わってみたいと思います。

村上さん、今年もありがとうございます。
村上さんの心意気、確かに受け取りました。
私もぜひ皆様にご満足頂けるような新酒を出したいと思います。
差し当たっては年末予定の「純米しぼりたて生原酒」です。

隣の客

2009.11.29

昨日も朝から予定が相次ぎそのまま夜まで、何とかひと息つけたのが午後9時過ぎでした。

初冬の寒さが肌を刺す上田の街を歩きながら、ちょっぴり燗酒で温まろうと、繁華街の片隅にある「海鮮処・祭」(2008/10/25の当ブログにも登場)の暖簾をくぐりました。
このお店は弊社のお酒も扱って頂いておりますが、それ以上に料理のおいしさとご主人はじめスタッフの皆さんの暖かさに心打たれて、折に触れ通う一軒です。

入口から中を伺うとカウンターからお座敷まで満席の盛況。
それでもカウンターの一番端にようやく席を見つけ、腰を落ち着けて、早速日本海直送の鯵や鮪そしてご主人お薦めのハタハタの焼き物を肴に盃を傾ける事しばし。
カウンター席でお客様が入れ替わり、初老の男性がひとり入ってきて座られました。
どうやらこちらの男性もお店の顔なじみのようです。
ご主人や女将と話をしているのを何とはなしに聞いておりました。

しばらくするとその男性、ビールに替えて日本酒を注文したのですが、どうやらいつもは弊社の「和田龍」を飲んで下さっているらしく、メニューの中のその他のお酒と「和田龍」とがどう違うかをご主人に熱心に聞かれ始めました。
そして最初の一杯は「八海山」を頼まれたのですが、そのあともその男性の口から「和田龍」の名前が何度も出てきて、そのたびにこちらは嬉しさと照れくささと、そしてもし批判されたらどうしようという緊張とでドキドキのしっ放し。
お店のご主人はその都度こちらを横目で見てにやにやされているし。

やがてその男性、「このお店には和田龍の社長は来ないのかい?」とご主人に聞かれて、もはやこれまで(笑)。
「いや、実は隣にいるこちらが専務で・・・」
というわけで、それからは打ち解けて、その方と語り合いながら楽しいお酒を飲みました。

こういった場面、時折あるんですよね。
私が飲んでいる隣で弊社のお酒の話題が出てくることが。
でもそんな時は、和田龍のお酒を飲んで下さっていてありがとうございますという感謝の気持ちと、反面、もし少しでも悪く言われたらどうしようという緊張の思いとで、いつもドキドキする毎回です。
大抵は今回と同じく、最後は正体がバレて楽しくお酒を酌み交わすのですけど。
それがご縁で親しくさせて頂いている方も少なからずいらっしゃいます。
まあこれも酒造業という仕事の醍醐味のひとつですね。

さて、予告です。
いよいよ今期の仕込みも始まりました。
第一弾として、12月下旬に恒例の「純米しぼりたて生原酒」を発売致します。
ここ2年ほどは年内に搾りがどうしても間に合わず、年を越しての発売となってしまい、毎年ご購入下さるお客様にご迷惑をお掛けして参りましたが、今年は何とか12月中に間に合う予定でおります。
楽しみにお待ち下さい。

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