親しい方から本を一冊プレゼントされました。
銀座「MORI BAR」オーナー兼チーフバーテンダーの毛利隆雄さんが書かれた「マティーニ・イズム」。
「MORI BAR」は銀座屈指の名店であり、毛利さんの代名詞とも言えるマティーニをはじめ、珠玉の数々のカクテルを求めて、今宵もたくさんのお客様がお店を訪れます。
私も以前この本を頂いた方と一緒に、2度お店にお伺いした事があります。
一度目は10年以上前。
実はこの時は散々でした。
一歩店に足を踏み入れた瞬間から、憧れの空間と目の前の毛利さんの存在に緊張してしまい、連れに勧められるままにガブガブ。
それまで何も食べていなかったこともあって、気が付いたら一気に酔いが回っており、あろうことかトイレに閉じこもったままの状態に。
結局連れに抱えられるようにして店をあとにしたのですが、自分の失態にしばらくは立ち直れませんでした。
それから数年後、やはり同じ方と再度「MORI BAR」のドアをくぐりました。
もう同じ轍は踏みません。
この時は終始リラックスした中で、カクテルのおいしさと、加えて毛利さんのお人柄の素晴らしさとに心打たれながら、大変楽しいひとときを過ごすことができました。
そして今回プレゼントで頂いた「マティーニ・イズム」。
毛利さんのバーテンダーとしての生きざまや、カクテルに賭ける思いや愛情が綴られていて、あっという間に読了してしまいました。
大変興味深かった内容をひとつ。
ある時毛利さんは、お客様から「今日のマティーニの味はおかしい」と指摘されます。
すぐさま原因を究明していくと、ベースとなる同じ銘柄のジンでも、1本1本の味わいにバラつきがある事に初めて気がつきます。
雑味が多く納得の行かないビンが実に多いのです。
片っ端からテイスティングしていくと、1ケース12本でまともに使えるのは1本という事態まで起こるようになりました。
日本の輸入代理店で納得の行く回答がもらえなかった毛利さんは、すぐさまスコットランドの製造元へ飛び立ちます。
訪れたメーカーで分かったのは、ジンのブレンダーはテイスティングを一切せずに、鼻で嗅ぐノージングだけで品質を決めているという事実。
それを知り、毛利さんは愕然とします。
そのブレンダーにいくらティスティングをお願いしても、彼は香りだけを嗅いで「パーフェクト」と叫び、ついにジンを口に運ぼうとはしませんでした。
以来毛利さんは、マティーニに使うジンをはじめとしてどの蒸留酒も開封する時は必ずテイスティングをし、自身の舌に合格したものだけを使用しているそうです。
毛利さんが1本1本、封を開ける際に味を確かめるのは有名な話ですが、その影にそんな理由があったとは初めて知りました。
それにしても、本書に掲載されているカクテルの写真を見ていると、すぐにでも実物を飲みたくなること請け合いです。
「MORI BAR」、久々に行きたいなあ・・・。