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新丸ビルの夜

2014.08.02

日帰りで東京へ出張した夜、30年来の親友2人と飲みました。

私の帰りの新幹線を考慮してくれて、彼らが選んだ店が、東京駅直結の新丸の内ビル内にある「神田 新八」。
店名通り神田に本店がある居酒屋で、私は初訪問です。

品書きを見ると日本酒や焼酎にも相当なこだわりが感じられます。

銘柄を選ぶ際、スタッフの男性と話していて驚いたのは、このお店の「火入れ酒」のほとんどが24BYであるという事。

ちなみに「BY」とは「BREWERY YEAR」すなわち「酒造年度」の事で、その年の7月1日から翌年の6月31日を指します。
仕込みのある冬を中心としているわけですね。

つまり「24BY」とは、平成24年7月1日から平成25年6月30日の間に造られたお酒で、要は1年前のお酒です。

なぜ「火入れ酒」をあえて1年前の24BYで揃えているか、その理由を聞こうと思ったのですが、スタッフの方があまりに忙しそうで、つい聞きそびれてしまいました。
たぶん熟成や品質の安定を考慮に入れての事と思います。

また、ある銘柄の純米吟醸の熟成酒を「冷や」で頼んだのですが、ひと口飲んでこれは「ぬる燗」も合うと友人と意見が一致し、件のスタッフにお願いしたところ、我が意を得たりという顔で「まさにその通りなんです」と言って、同じお酒を絶妙な燗で持ってきてくれました。
旨い!

数年前、当社の「純米しぼりたて無濾過生原酒」を発売した直後、懇意にしている東京の地酒専門酒場の若旦那から「これはぬる燗もいけるよ」と言われ、「冷や」一辺倒でお勧めしていた私は目から鱗の思いだった事を思い出しました。

この「神田 新八」のスタッフも、お店のお酒に対するこだわりを決して押し付けるのではなく、会話の中でさり気なく提案してくれる事で、飲み手を身も心も気持ちよく酔わせてくれます。

そしてお造り、焼き物、出汁巻き・・・出てくる料理のおいしさといったら。
また1軒、素敵な店との出会いでした。

お店を出てから電車までのわずかな時間、友人の勧めで7階へ上がり、バーのカウンターでカクテルを買い求めて、それを持って屋外のテラスへ。

東京駅周辺の夜景をバックに、涼しくなった夏の夜風を浴びながら、束の間の時間を尽きぬ会話で過ごしたのでした。

夏粕

2014.07.12

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夏粕の季節になりました。
当社も発売を開始しています。

板粕と夏粕(練り粕)の違いをよく聞かれます。

簡単に言うと、冬にお酒を搾った時にできるのが板粕です。
お酒を搾り終わったあと、圧搾機や酒袋に残ったものが板粕となります。
そのまま食べたり、粕汁や甘酒に用いられます。

その板粕をタンクや槽の中に積んで踏み込み、夏まで熟成させたものが夏粕です。
こちらは主に漬け物用です。

今年も私が自らタンクに入り、スコップで夏粕を掘っています。
実は私はこの酒粕掘りが大好きで、運動と減量にも繋がるので一石二鳥です。
痩せたい方はお手伝いに来て下さい。

ご存知の方も多いと思いますが、「酒粕」はアミノ酸やビタミンをはじめたくさんの栄養素の宝庫で、「天然のサプリメント」の異名を放っています。

最近は酒粕を使った料理のレシピ本も発売されています。
酒粕に馴染みがない方も、ぜひトライしてみて下さい。

千曲川の旬

2014.06.28

明日の日曜日、神奈川から居酒屋の女将(おかみ)とお友達、合計5名が上田を訪問されます。

思い起こせば3年前の夏。
東京でお世話になっている酒販店の日本酒担当Iさんから「『和田龍登水の会』をやりませんか?」とお声掛けを頂いたそのお店が、田園都市線沿線にあるこの居酒屋Mでした。

その日は7月の猛暑と午後1時という早い開会時間にも関わらず満席のお客様にお集まり頂き、お店を切り盛りする女将さんとIさんのおかげで、日が暮れるまで楽しく充実した時間を過ごすことが出来たのでした。

しかしそれ以降、なかなか居酒屋Mを再訪する機会に恵まれず、久々に暖簾をくぐったのは今年の4月の事でした。
実に2年半ぶりです。

開店時間と同時にお店に入り、「お久しぶりです。和田龍酒造の和田です」と挨拶した私に、着物姿の女将は一瞬驚いたような顔をされたあと笑顔で出迎えて下さり、そのまま私はカウンターの客となりました。

その後も続々と訪れるお客さんと女将とを交えた楽しい会話。
その中でいつの間にか上田の話題で花が咲き、「6月後半に千曲川は鮎が解禁になります。そうすると千曲川の河川敷に『つけば小屋』が何軒もオープンし、獲れたての天然鮎のフルコースが楽しめます。信州上田の名物です。よかったらぜひお越し下さい」
そう宣伝している、ほろ酔いの自分がそこにいました。

そして翌々日、女将から1本の電話が。
「お友達と5人で鮎のフルコースを食べに行きますので」

何という素早い行動力。
話題には出てもその場限りの事が多い中で、そんな女将のお気持ちがどれだけ嬉しかったか。

私は早速今年の鮎の解禁日を調べ(6月21日)女将に伝えます。
そしてお友達とご相談された結果決まった日程が、明日だったのです。

しかし残念ながら、明日は私は朝8時から夜8時まで展示会で不在です。
その分、出来るだけの事をしなくてはと、まずは馴染みの「つけば小屋」の社長に事情を話して、くれぐれもよろしくと予約を入れます。

そして女将からの、上田市郊外の別所温泉にも入りたいとのリクエストを受け(ここは古くからの日帰り温泉がたくさんあるのです)、別所温泉の地図はもちろんの事、上田市のすべての観光パンフレットを5人分取り揃えました。

ここで郵送するのは簡単です。
でも、わざわざ上田まで来て下さる女将の気持ちに応えるには、直接パンフレットをお届けしてしっかり説明も差し上げたいと思い、先月の出張の折、お昼過ぎにお店を訪問して手渡しして参りました。

ちなみに明日は、展示会の途中で社員と交替し、たとえわずかな時間でも女将はじめ皆さんと会ってきたいと思っています。

せっかくの上田訪問、明日はぜひ晴れてほしいです。
そして「つけば小屋」や「別所温泉」を堪能して頂きたいです。
そしてそして何よりも、上田に来て良かったと、上田の街を好きになってお帰り頂ければ本望です。

魅惑のスナック

2014.06.21

2~3年前までは、いわゆる「スナック」には、自分からは足を運ばないものと思っていました。

人見知りをする私としては、スナックに入ってもママやお店の女性に気を遣わせてしまうばかりで、逆に私も疲れてしまうし、自分はスナックの客としては不向きだとずっと感じていました(もちろん仲間に誘われた時は、仲間との会話を楽しむために喜んで行きますけど)。

そんな中、私が折に触れ足を運ぶスナックが、上田市の繁華街に1軒できました。

スナックF。

このお店の存在を教えてくれたのは、いつも公私ともどもお世話になっている上田市の地酒専門店、宮島酒店の若き店主、宮島国彦さんです。
ちなみに宮島酒店さんは長野県内の地酒に特化して、宮島さんのご自身の舌に叶った商品だけを扱う、長野県のカリスマ的存在の酒販店です。

そんな宮島さんと初めてスナックFにご一緒させて頂いた日、真っ先に感動したのは、スナックでありながら日本酒の品揃えが豊富である事と、そしてそれ以上に、お店を切り盛りするNママが日本酒をこよなく愛して下さっている、その思いに対してでした。

もちろんウイスキーも置いてあります。
でもこのお店では、それと同格で日本酒の四合瓶がずらりと並んでいます。

日本酒のボトルキープはできません。
抜栓したお酒を次にいつ飲まれるか分からない状態で置いておくのが、Nママには耐えられないのです。
ですからこのお店では日本酒はボトルで売り切りです。

カウンターの真ん中には専用の酒燗器もあります。
希望があれば絶妙な温度で燗酒が供されます。

数年前に始まった、長野県内一斉に信州地酒で同時刻にカンパイしようという大イベント「カンパイFES」。
当日は多くの飲食店、ホテル・旅館に混じって、このお店はスナックという形態でありながら、たくさんのお客様を集めて毎年参加して下さっています。

スナックFに何度か通っているうちに、このお店は宮島さんを輪の中心として、多くの蔵元や酒販店の皆さんが足繁く通うお店という事が分かってきました。
味とサービスに厳しい、旅館を経営する私の親友が常連である事も判明しました。

そしてNママご自身が、明るくて快活なお人柄の内に、極めて繊細なお心遣いを持ち合わせている方である事が徐々に分かってきて、いつの間にかこのお店のカウンターは私にとって心地よい止まり木の1軒になっていました。

先日も、とある会議の懇親会と2次会が一段落し、せっかくだからとひとりでスナックFのドアを開けたところ、目の前に座っていたのは宮島さんと、もうひとり私も親しくさせて頂いている蔵元O君。
ふたりの世界のお邪魔をしてはいけないとは思いつつ、すぐさまふたりの隣の席に陣取り、楽しい会話の仲間入りをさせて頂きました。

スナック通の玉袋筋太郎が語るスナックとはまたひと味違った楽しみがこのお店にはあります。

エポワス

2014.06.14

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親しい方から素敵なプレゼントを頂きました。

フランスはブルゴーニュ産のウォッシュチーズ「エポワス」。

熟成中に塩水やマールやブランデーで洗うウォッシュチーズ、はっきり言って臭い!です。
中にはくさやに匹敵するような「芳香」を発するものもあります。
これぞまさに発酵食品の醍醐味といった味わいです。

そんな個性あふれるウォッシュチーズ、中でもこの「エポワス」はその代表格で、私は大好物です。

この日も、冷蔵庫で保存していた「エポワス」を食事の数時間前に取り出して、しばらく常温で放置。
そうすると、表皮に包まれた中の部分が流れ出さんばかりにトロリと柔らかくなり、立ち昇る「香り」も一層強まります。

ほど良く熟成感が増したところをスプーンに絡めてすくい取って、パクリとひと口。
臭い!
そして旨い!

口中に残った「芳香」をお酒で洗い流します。

合わせるお酒はブルゴーニュの赤ワインが定番ですが、実はこれ、日本酒にもよく合うんです。
旨みや酸が乗った、繊細かつ芳醇なタイプの日本酒は、ウォッシュチーズと抜群のマリアージュで、こんな時は日本酒の無限の可能性を改めて感じ取ります。

本当は全部食べてしまいたいのを我慢して、残りの「エポワス」は再度冷蔵庫に保管。
数日後にはさらに熟成を増していることでしょう。

余談ですが、数年前に長野県酒造組合の青年部に当たる「若葉会」で行った、毎年恒例の研修旅行。
この年は滋賀県を回り、夜は滋賀県酒造組合の皆様が大津プリンスホテルで懇親会を開催して下さいました。

その中で「今日は長野の皆さんのために奮発して特別に地元の名物を追加しました」と紹介されて出てきたのが「鮒(ふな)寿司」。
ご存知のように、鮒と米を塩とともに長期熟成した発酵食品です。

これがまた旨いのなんの。
中には、匂いで食べられない方もいらっしやいましたが、私はそれをもらい受けて食べてしまいました。

また、妻とともに2年続けて訪れた紀伊半島の突端の和歌山県新宮市。
入った鮨屋で見つけたさんまのなれずし。
あまりの長期熟成で形が崩れ、原型を留めていません。
その白い液状と化した、発酵臭漂うなれずしを箸の隅にちょこんと付けて口に含み、日本酒で流し込む旨さといったら。

臭みと旨みは紙一重。
発酵食品のおいしさを今日も堪能する私でした。

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