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メルボルンからの来訪

2024.03.09

まず新酒のご案内です。
3月下旬より「和田龍登水」第1弾「美山錦」を発売開始の予定です。
今、鋭意準備中です。
大変お待たせして申し訳ございません。

さて、今日の話題です。

先日、驚愕の来客がありました。

Jim Coad(ジム・コード)。

今から40年以上前。
ジムは私が高校生の時、我が家に3ヵ月間ホームステイした、オーストラリア・メルボルンから来た留学生でした。
当時、我が家から上田市内の高校へ自転車で通っていました。

事務所にいた女性社員によると、ジムは突然奥様と一緒に店に入ってきて、「スミオ、いる?」「I'm looking for Sumio!」と尋ねたそうです。

しかしその時私は、何と遠方へ外出中。
すぐに戻る事ができない悔しさに、地団駄を踏みたくなる思いでした。

それからふたりは2時間ほど滞在し、当時、毎日ジムの食事や弁当を作り、部屋を掃除し続けた母と、私の妻と4人で、妻の片言の英語の通訳で楽しく語り合ったそうです。

外出していた私は、ふと思い立って妻の携帯に電話をしました。
「ジム、まだいる?」
「ちょうど今お帰りになるところ」
「良かった。間に合った。スピーカーでジムと話させて」

数秒して
「Hi!Sumio!」
「Hi! Jim!」

その瞬間、涙がこぼれそうでした。

以降はお互い、片言の日本語と英語での会話です。

「スミオ。僕は日本語があまり喋れなくなってしまった」
「いや、ちゃんと分かるよ」

話す中で、ひとつの思い出が蘇ります。

「ジム。ふたりで映画館へ行って『チャンプ』を観たこと、覚えてる?」
「オー、『チャンプ』!覚えているよ。ジョン・ボイドだよね!」

覚えていてくれました。
でもガラガラの映画館に入って「どこに座りたい?」と聞いた時、ジムは若い女の子の隣を指差して「あそこ」と言ったのを必死で制した事も、これまたいい思い出です。

10分ほど話して
「ジム!会いたかったけど、でも話せて嬉しかった!ありがとう!」
「スミオ!ありがとう!」
そして名残惜しくも電話を切りました。

40年の時を経て、わざわざ上田の我が家を奥様を連れて訪ねてきてくれたジムの気持ちを思うと、嬉しさとともに、懐かしさと愛おしさに胸が掻きむしられる思いがしたひとときでした。

会社に戻ると、ジムの直筆の住所とメールアドレスと今自分がしている仕事のイラストが書かれた紙が置かれていました。