友川カズキのエッセイ集「一人盆踊り」が面白い。
友川カズキといえば、ギター1本でパワフルに歌い続けるフォークシンガーであり、詩人であり、画家であり、酒と競輪をこよなく愛するギャンブラーでもあり、その姿は昨年「どこへ出してもはずかしい人」というドキュメンタリー映画にもなりました。
そんな友川カズキが自身の生きざまを赤裸々に描いたのが、この「一人盆踊り」です。
個人的には、何といっても中上健次との交流のシーンが大好きです。
友川が尊敬し続けてきた中上とラジオ番組で初めて出会うシーン。
自宅のアパートの鍋パーティに呼んで、酔いつぶれて熟睡する憧れの中上の姿を感激の思いでそっと見つめるシーン。
その翌日、書架に並んでいた森敦の自宅に行こうと中上にいきなり言われて訪ね、森と話が嚙み合わないまま憮然として、そのままふたりで新宿ゴールデン街で飲み続けるシーン。
友川の詩集の表紙デザインを中上に批判されて、的を得た指摘だったたけにショックを受けるシーン。
友川の絵の個展に突然中上が現れて、作品を鑑賞した中上から「これだよ。俺が『岬』を書いた時と同じだよ」と絶賛されるシーン。
中上と朝までゴールデン街で飲んで、中上の定宿のベッドで目を覚ますと、中上は不眠のまま、編集者に見張られながら執筆を続けており、そんな中上から「お前は寝ていろ」と優しく諭されるシーン。
挙げ始めるときりがありません。
またこの書の中では、大島渚から「戦場のメリークリスマス」のヨノイ大尉役をオファーされながら、秋田訛りを直す事を条件とされたために断ってしまう有名なエピソードも綴られています。
盟友たこ八郎との日々の交流の描写も素敵です。
飯場を転々としながら歌を歌い続け、友と酒とギャンブルとに浸り続けた友川カズキの光と闇とを描いた「一人盆踊り」。
今日もページをめくる私です。
ちなみに三池祟史監督のカルト作「IZO」。
本人役でスクリーンの中で熱唱し続ける友川も、これまた出色です。
私は映画館で2回観ました。