将棋棋士、先崎学九段の新刊「将棋指しの腹のうち」を深夜に一気読み。
やはりこの人の著書は面白い。
先崎先生の本は全部持っていますが、どれも彼の文章は明るくて、そしてユーモアとウイットに富んでいて、読んでいて気持ちが明るくなるのが嬉しいです。
前著「うつ病九段」だって、彼がうつ病を患って棋士を1年間休業して闘病した様子を描いているのたけれど、リアルな中にも暗さは微塵も感じられず、読了後はただただ素敵な文章を読んだという清涼感が残る素敵な一冊になっています。
ただ先崎先生が病名を公表せずに休場を発表した時は、何が起きたのかとファンは大変心配したものですが。
先崎先生の文章で素晴らしいのは、交流のある棋士の失敗談を明け透けに打ち明けたりプライベートの姿を面白おかしく茶化したりしているのだけれど、そこには相手への敬意と愛が満ち溢れている点です。
今回の著書のあとがきでも、羽生善治先生をはじめとして、登場した多くの棋士に詫びながらも、でも僕が書くのは僕が大好きな人ばかりです、と明言されていて、彼の手に掛かるとどの棋士も本当に輝いて見えるから不思議です(いや、実際に輝いているのですけど)。
現役時代の加藤一二三先生に、誰も聞けなかった謎をズバリと聞くくだりなんかは爆笑ものです。
そんな先崎先生ですが、何年も前、将棋界の最高クラスであるA級を降級するかどうかの一番をテレビの生放送で観た時の衝撃は今も忘れません。
深夜、いよいよ敗勢に追い込まれて、膝を抱え頭を掻きむしり体をよじって盤上に没入する姿は、いつもの先崎先生とは別人の、闘う人間の凄みと美しさがそこにはありました。
結局彼は破れ、降級が決まってしまうのですが、多くの人の心を激しく打ったことは間違いありません。
病気から復帰され、今はまた元気に活躍されている先崎学先生。
そんな先崎先生と、一度酒席をともにしてみたいなあ。