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蕎麦屋のたたずまい

2015.08.18

東京で名前は以前から知っていたお蕎麦屋さんに先日初めて行った時のこと。

冷酒をグラスで頼んだところ、半分ほど注いでちょうどビンが空になりました。
若い女性スタッフが「お待ちください」と新しいビンを取りに行き、すぐに戻ってきて、開栓して同じグラスに注ぎ足すのかと思ったら・・・。
片手に持ってきた新しいグラスに半分ほど注いで「空けた日が違うのでグラスをお分けします」とひとこと。

確かに栓を空けてしばらく経つとお酒も空気に触れて少しずつ味も変わっていくものですが、日本酒好きを唸らせるさり気ないサービスに感激しました。

お料理も秀逸でした。
「そば刺し」と「鴨のたたき」をつまんだあと、「牛テールと大根の煮込み」を頼もうか迷っていると、先ほどの女性スタッフに「この二品のあとでしたら十分召し上がれる量ですよ」と背中を押され頼んだこの一皿も絶品。
塩だけで味付けした牛テールと、テールの味が染み込んだ大根でお酒の進むことといったら。

締めの蕎麦は「8月限定」と書かれた「トマトそば」に目が行き、男性スタッフに中身を聞くと、「トマトを散りばめたお蕎麦にガーリック風味のおつゆを掛けて召し上がって頂く、カッペリーニのようなものです。人気のひと品で、これだけをお召し上がりに来るお客様も多いんですよ」ということで注文。

これがまた素晴らしかった。
蕎麦の風味や味わいがしっかりと生きていて、洋風に味付けされたソース仕立てのおつゆに負けていない見事なバランス。
正直、普通のカッペリーニよりもはるかに美味しかったです。

このお店、お料理が美味しかったことを伝えるたびに、どのスタッフも「料理長に伝えます。喜ぶと思います」との言葉があり、それがまた心地よい。

我々の席は入口のすぐ横だったので、お会計の祭に思い切って、奥まで続く風情のある店内を「見せて頂けますか?」と頼んだところ、快諾。
予想以上に広いお店を奥に進むたびに、その場にいるスタッフが率先して個室やカウンターを案内して下さり、その真心こもったサービスに酔いしれました。

このお店、原宿の「松原庵 欅(けやき)」といいます。