先日、新幹線に乗った時のこと。
隣に座っていた若いサラリーマンがずっとパソコンを打っていました。
最初は気にせず読書に没頭していたのですが、そのうち彼の打つキーボードの音が気になって仕方なくなりました。
決して乱雑な打ち方ではないんです。
でも延々と途切れなく隣でキーボードをカタカタ打っている音を意識し始めるともうタメです。
読書も散漫になり、文字をただ目で追うだけで、内容が頭にまったく入っていきません。
よほど注意しようかとも思いました。
でも一般的な見地からすると、パソコンを打つ音が果たして騒音に入るのかどうなのか今ひとつ確信が持てず、止めてくれと言い出せない自分がそこにいました。
仕方なく、自分が席を移れば問題は解決すると本を閉じた時、彼のキーボードを打つ音が止み、パソコンを鞄にしまう姿がありました。
ようやく訪れた静寂・・・ほっと安堵です。
しかし私が神経質過ぎるのでしょうか。
車内で、しかも2人掛けの席の隣でキーボードを打ち続ける音、皆さんはどう思われますか?
ちなみにこの時読んでいた本は、高校生の時以来の再読となる村上龍の「コインロッカーベイビーズ」でした。
30年以上も前に寝食も忘れて熱中したこの小説の「熱」を、今の私がまた体感できるだろうか、それを確かめたくて久々に手に取ったのでした。
この本には忘れられない思い出があります。
発売当初、ハードカバーで上下巻2冊に分かれていた本作。
1ページ目から心を奪われ、むさぼるように読み続けて、ついに迎えた下巻のクライマックス・・・果たして結末や如何に。
しかし・・・えっ、最後の数十ページがバラバラ。
しかも存在しないページもある。
何と、あとにも先にも唯一経験した乱丁・落丁本だったのです。
呆然とする間もなく、とにかく続きが読みたくて、私は書店へ走りました。
立ち読みしようと思ったのです。
しかし書店を何軒回っても在庫は一冊もありません。
仕方なく私は購入したお店で交換を申し込むと、今度は上田市立図書館へ自転車を走らせました。
日本文学の棚を隅々から探して、ようやく見つけた時の嬉しさといったら。
やっと出会えたクライマックスの興奮は今でも忘れません。
ちなみに「コインロッカーベイビーズ」は、今読んでも、村上龍が20代後半に炸裂させた溢れんばかりのエネルギーに満ち満ちていました。