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三遊亭鬼丸 真打昇進披露パーティ

2010.09.01

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6/16の当ブログにも取り上げた上田市出身の落語家、三遊亭鬼丸(きん歌改め)の真打昇進披露パーティが東京九段下のホテルグランドパレスで開かれ、私も出席して参りました。

むせ返るような猛暑の中、会場のホテルに到着すると、ロビーは既にパーティで出席する人で溢れかえっています。
事前に聞いたところでは、今日の出席者はざっと350名との事。
最近では結婚披露宴でもこれだけの人数は滅多に見受けられません。
周囲を見渡すと、私同様わざわざ上田から駆けつけた馴染みの顔もそこここに見受けられます。

待つことしばし、開会の案内があったのでパーティ会場へ移動すると、入口には師匠の三遊亭圓歌と並んで、本日の主役三遊亭鬼丸がお客様をお迎えしています。
そんな鬼丸の一点の曇りもない笑顔を眺めていたら、今日に至るまで彼が懸命に頑張ってきた姿が浮かんできて、思わず目頭が熱くなってしまいました。

一歩会場に足を踏み入れると、大きな部屋の真正面には、支援者から送られた幟や垂れ幕が所狭しと天井から飾られていて、その華やかさに思わず感嘆の声が出ます。

さて、いよいよ開宴。
司会者に促されて、後方の扉よりまずは師匠の圓歌、そのうしろから三遊亭鬼丸が登場、会場のあちらこちらから威勢のいい掛け声が飛び交います。
そのまま壇上に登ったところで、まずは圓歌師匠よりご挨拶。
それにしても落語家の挨拶というのは、プロと言ってしまえばそれまでですが、どうしてこのように粋で楽しいのでしょう?

引き続いて落語協会相談役の林家木久扇師匠、そして新宿末広亭の席亭より祝辞があり、そのあと鏡開きとなりました。

この日の鏡開きの四斗樽は上田市内の蔵元3社から提供され、そのうちの1社が当社です。
司会者の案内とともに3つの樽が壇上に移され、1つの樽に7名ずつ総勢21名、来賓の落語家や鬼丸の支援者の皆様に混じって各蔵元も壇に上げて頂き、鏡を開かせて頂きました。
樽を提供した蔵元を鏡開きの場でちゃんと壇上に乗せる、普段はあまり経験のない事だっただけに驚きましたが、だからこそ鬼丸のさり気ない心遣いに触れた気がして、嬉しい思いでいっぱいでした。

鏡開きのあとは三遊亭歌司師匠の音頭で乾杯、歓談のひとときとなりました。
主役の鬼丸はひとつひとつのテーブルを挨拶して回っています。
遠くから見ていても、鬼丸、いい笑顔です。

一方で多くの奥様方が食事の合間を縫って、林家木久扇師匠や柳家花禄師匠はじめ蒼々たる顔ぶれの落語家のサインをもらうためにテーブルを取り囲んでいます。

そんな中で私が勇気を出してご挨拶に伺った方、それが新宿末広亭の北村席亭でした。
もちろん初めてのご挨拶です。

思い起こせば学生時代、初めて足を運んだ寄席が新宿末広亭でした。
そこですぐに寄席の楽しさに魅せられ、間を置かずして次は同じサークルの仲間約20名を募って再度末広亭を訪れたところ、その日はクローズされていた2階の桟敷席を開放して下さり、仲間と共に思う存分落語の世界を堪能する事ができました。
ちなみにその日の大トリは、今は亡き古今亭志ん朝師匠でした。

それ以降も折に触れ足を運んでいる新宿末広亭。
私は悩んだ末に意を決して、席亭の席まで名刺交換に伺いました。
自己紹介すると席亭は笑顔で応対して下さり、奥様が上田市出身というご縁も含めて、楽しい会話に花が咲きました。
「今度見えたらぜひ声を掛けて下さいよ」
そうおっしゃる席亭のお言葉に、また末広亭に行く楽しみが増えた気がしました。

ちなみにこの日初めて知りましたが、鬼丸の奥様も末広亭で働いていて、それが縁で結ばれたのだとか。
とすれば、数多(あまた)いる落語家の中で、彼がよほど男として魅力に溢れていたという事でしょう。
初めてお目にかかった奥様は、和服の似合う、鬼丸にはもったいないくらい素敵な方でした。

さて、宴もクライマックス。
予定にはなかったという鬼丸の兄弟弟子や来賓の落語家の祝辞で大爆笑に包まれ、打って変わって女性ア・カペラ・カルテットの素敵な歌声に酔いしれ、そしていよいよ鬼丸本人の挨拶となりました。

今日に至るまでの14年の長かった歳月を振り返りながら、これからの決意を力強く語る鬼丸、カッコよかったです。

そして締めの挨拶として、兄弟子の三遊亭歌之介師匠がご挨拶。
これがまた笑わせて酔わせて、そして最後にほろりとさせる、噺家ならではの感涙物のスピーチでした。
最後に歌之介師匠の音頭で、全員で万歳三唱。
気がついたら3時間弱という時間があっという間に過ぎておりました。

お開きになってもそこここで写真のリクエストやお声掛けがやまない鬼丸の姿を目で追いながらそっと会場をあとにしようとした時、うしろから「ありがとうございました!」という鬼丸の声が。
振り返ると彼がこちらを向いて挨拶をしてくれています。
何だかそれだけで再び胸が熱くなって、「おめでとうございます!」と、心の底から思いを込めて声を掛けさせて頂きました。

さて翌朝の10時過ぎ、携帯電話が鳴るので出てみると鬼丸でした。
このたびの諸々のお礼を述べるために電話を掛けてくれたのでした。
その律儀さに心打たれながら、私はその時初めて彼をこう呼びました。
「頑張ってください、師匠!!」