今日は一軒の酒屋さんをご紹介します。
タイトル通り「こんな酒屋もある」。
神奈川県横須賀市にある「日本酒専門店 Sake 芯」がそのお店です。
こちらのお店、実は店舗がありません。
店主の松尾さんのご自宅の一室、そこがそのまま「試飲室」であり、そして「お酒売り場」なのです。
先日初めてこちらのお店を訪問しました。
京浜急行の横須賀中央駅で下車、坂道が続く閑静な住宅街を歩くこと約10分、左右を見渡しながら注意して歩いていると、普通の家の玄関の脇にひっそりと掲げられた「Sake 芯」の看板を見つけました。
ここに来ようと思わなければまず見つけられない、そんな立地です。
ようやく辿り着いた安堵感と共にベルを鳴らすと、店主の松尾伸二さんが出ていらっしゃいました。
松尾さんに案内されるままご自宅の2階に上がり、すぐ脇の一室に入ると、そこは普通の和室。
1人掛けの椅子と、机を挟んで2人掛けのソファがすぐに目に入ります。
しかしこの和室こそが、松尾さんがお客様をお迎えし、納得のゆくまで試飲と対話を繰り返した上でお気に入りの1本を選んで頂く、いわば接客の場なのです。
松尾さんがこのお店をオープンさせたのは今年の1月。
それまで長年の間、大の日本酒愛好家だった松尾さんは、どうしてもお酒を扱う仕事に携わりたいという思いから、昨年ついに脱サラして酒販免許を取得(この行動力!すごい事です)。
そしてその際に選ばれたのが、商品陳列に頼らず、あくまでも対話と試飲とを最優先したこのスタイルだったのです。
しばし酒談義に花が咲いたあと、それではせっかくだからと松尾さんはお盆に乗ったいくつもの利き猪口と、そして部屋の片隅の冷蔵庫から試飲用のお酒を何本も出して下さいました。
恐縮しながらも、松尾さんが選ばれた極上の1本を次々と堪能。
どのお酒も個性に溢れ、そして松尾さんの愛情に溢れている事がよく分かります。
これらのお酒を松尾さんと語りながら味わっているうちに、気が付けばいつの間にか「Sake 芯」ワールドにどっぷりと浸かっている自分に気が付いたのでした。
ちなみに部屋の片隅の冷蔵庫はあくまでも試飲用のお酒を冷やしておくためのもので、販売用はご自宅の隣にプレハブ冷蔵庫がデン!と鎮座しております。
駐車場の奥に置かれたこのプレハブ冷蔵庫を見た時は正直驚きました。
ちなみにこちらは、生酒が多いために常時-5℃に設定されているそうです。
楽しいひとときはあっという間に過ぎてしまいます。
そろそろお暇しようと席を立ったところ、思いも掛けない嬉しいお申し出を頂きました。
私が横須賀出身のⅩ-JAPANのHIDEの大ファンで、以前横須賀市内にあったhide Musieumにも足を運んだ話を覚えていて下さって、海岸沿いにあったそのミュージアム跡地まで車で案内して下さったのです。
実のところ、せっかく横須賀まで来たのだから、帰りにこの場所に立ち寄ってみようと思っていたものですから、あまりにもタイミングの良いお誘いに感激する事しきり。
車を降り立ち、見渡した跡地は当時の面影は全くなく、それでもここには確かにあのhide musieumがあったのだという感慨で、しばらくの間胸が熱くなったのでした。
写真:店主の松尾伸二さんと「試飲室」兼「お酒売り場」