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酒蔵見学in山口

2010.05.17

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写真上:八百新酒造株式会社
写真下:旭酒造株式会社(右にちょっと見える白い建物が新蔵)


先週末、長野県酒造組合の青年部にあたる「若葉会」の、年に一度の研修旅行に行って参りました。

今年の行き先は山口県。
研修の中心は当然酒蔵見学ということで、今回お伺いしたのは2蔵。
「雁木」の八百新酒造さんと「獺祭(だっさい)」の旭酒造さんです。

万年旅行幹事の私としては山口までの遠方でどれだけの参加者があるか心配だったのですが、どちらも魅力ある蔵元という事で大勢の蔵元が参加して下さり、心配は杞憂に終わりました。

そして迎えた旅行当日、前夜は広島市内で交流の花を咲かせた一行は翌早朝から山口県岩国市内入り。
まずは「雁木」の八百新酒造を訪問致しました。

出迎えて下さった社長さんが最初に蔵の方針や造りを丁寧に説明して下さいます。

「雁木」の特徴は、ひとことで言うと、全量山田錦を使用し、純米無濾過生原酒にこだわっているという事。

社長さんはそのあとの蔵見学の間も、我々からの尽きない質問にかなり謙遜されながら答えていらっしゃいましたが、その言葉とは裏腹に、造りや酒質への思いは揺るぎない自信に満ちているように感じられました。
「造り」では麹に付きっ切りになるとおっしゃる社長さんのお言葉通り、「雁木」の麹造りのこだわりの数々は、我々にとっても大いに勉強になりました。

最後に「雁木」の2種類を試飲させて頂き、生原酒とは思えない滑らかな舌触りに感動しながら八百新酒造さんをあとにしました。

午後の見学は、今や日本のみならず世界を席捲している「獺祭(だっさい)」の旭酒造です。
岩国の山奥に位置しながら「この20年間で500%の売り上げ増を達成」(旭酒造HPより)された旭酒造、その桜井社長さんはメディアや雑誌にも頻繁に登場する「時のひと」でもあります。

「獺祭」を人気たらしめた理由はいくつもあります。
・全量山田錦で、純米大吟醸のみの造り。
・時代に先駆けて「磨き二割三分」(つまり精米歩合23%・・・驚異の数字です)の発売。
・「遠心分離システム」によるしぼり。
 etc.
そんな数々のこだわりのもと出来上がったお酒は、私も日頃から、弊社の得意先でもある長野の特約の酒販店さんで購入して飲んでいます。

さて、午後1時の約束にも関わらず正午過ぎに早々到着してしまった我々一行、しかし待つ事しばし、蔵の奥から現れた桜井社長は嫌な顔ひとつせず、すぐに若き杜氏を伴い、見学を開始して下さったのでした。

蔵を回りながらまず驚いたのは社員の皆さんの若さ。
杜氏さんが35歳、皆さんの平均年齢が30代前半との事。

加えてこの旭酒造さんは年間を通しての四季醸造という事もあり、通常の酒蔵はこの時期仕込みは終えている中、どのセクションも造りの真っ只中で活気に満ち溢れていました。

途中、話題の遠心分離システムや完成したばかりの新蔵を惜しげもなく見せて頂き、蔵元の考え方やそれを実現していくスケールの大きさに感嘆しながらひと通りの見学を終え、最後に分析室で試飲をさせて頂きました。

出されたのは出来上がったばかりの精米歩合39%の純米大吟醸、その通常の搾りのものと遠心分離によるものの2種類。
ちなみに同じスペックでも、遠心分離によるお酒は値段が高く設定されています。

興味津々で両方を口に含み転がすと、うん、確かにはっきりと味わいの違いが分かります。
どちらも大変おいしいお酒ですが、遠心分離のお酒のほうが「艶(つや)」がより一層際立って感じられます。
なるほど、遠心分離による酒質はこのようになるものなのかと大いに勉強させて頂いた次第です。

最後は社長さんご夫妻やご子息さん、杜氏さんに見送られながら旭酒造をあとにしました。

そんな訳で今回見学させて頂いた2蔵、持ち帰ったたくさんの感動や知識を、ぜひ今後の自社の在り方に少しでも反映させていければと思いました。
帰宅したのは午前1時、山口の暖かさと打って変わって底冷えする信州の空気を感じながら、しかしこの2日間の「熱」が睡魔の訪れをしばし遅れさせていたのでした。