去る6月9日~10日、長野県酒造組合青年部(通称「若葉会」)の研修旅行で、今年は滋賀県を回って来ました。
早朝出発し、まず蔵元見学で伺ったのが、琵琶湖の西岸に位置する高島市の上原酒造株式会社様。
ここでは専務の上原さんがお相手して下さいました。
見た目は小さな酒蔵ですが、酒造りに対するポリシーは太く大きく、大変感動させられました。
まずここの蔵元は、今の時代に逆行し、大半が山廃仕込み。
即ち、日本酒醸造では雑菌駆除のために欠かせない乳酸を「添加」するのではなく、天然の乳酸菌を取り込んで乳酸を生成させる、昔ながらのの手の込んだ製法を用いています。
更に驚いたのが、酵母無添加。
山廃仕込みは、今の時代、酵母そのものは添加するケースが多いのですが、こちらは家付き酵母を自然に増殖させる、これまた大変時間と労力とが必要な古来からの製法を取られていました。
続いて驚かされたのが槽場(ふなば)、つまりお酒を上槽する部屋です。
目に飛び込んできたのは、長さ5mもあろかという巨大な丸太と、見るからに使い込んである昔ながらの木の槽(ふね)。
初めて見ましたが、要はその木槽(きぶね)の中にもろみを入れた袋をびっしりと重ね、その上から天秤の原理で丸太で圧力を掛け、自然の力でお酒を搾り出す方法なのだそうです。
その「木槽天秤搾り」、通常の圧搾機より搾れるお酒の量は少ない分、出来上がったお酒は雑味のないきれいな味わいとなるそうです。
そしてもうひとつ、熟成に対する考え方も確固たるものでした。
山廃仕込みのお酒は一般的に味わいは太く旨味もしっかりと乗っておりますが、こちらのお蔵ではそんな個性をさらにしっかり主張すべく、ほとんどのお酒を1年以上しっかりと熟成されていました。
この日はすべてのお酒を利かせて頂いたのですが、確かに20BY→19BY→18BYと貯蔵年数を経るほど、それに比例してお酒の旨味や深みも増し、新酒とは明らかに一線を画す味わいでした。
ちなみに商品の一番のボリュームゾーンは3年熟成酒とお伺いして、これまた驚きの連続でした。
続いて今度はぐるりと琵琶湖を回りこんで、もう一件草津市の太田酒造様(メイン銘柄「道灌」)を見学させて頂き、その後向かったのは大津プリンスホテル。
ここでは滋賀県の蔵元で組織する「滋賀県技術研究会」の皆様がちょうどこの日に研究会を開催されていて、我々が滋賀まで足を運ぶということで、急遽合同の「長野県・滋賀県酒造交流会」をセッティングして下さったのでした。
全員が揃ったところでまずは両県の需要開発の報告を交互に行い、そのあとすぐに利き酒会。
滋賀県21蔵、長野県16蔵、この日集まった全蔵元が出し合った純米吟醸酒を片っ端からじっくりと利かせて頂きました。
舌の官能を鍛えるには、1本でも多くのお酒を目的意識を持って同時に利き較べる事が何よりの方法だと個人的には思っておりますので、これは絶好の機会と時間いっぱい勉強せさて頂きました。
そしてそのあとは懇親会。
私自身は滋賀県の蔵元さんとこのようにお話しできる機会は初めてだったので、好奇心丸出しでいろいろと話に花を咲かせて頂きました。
それとお料理に琵琶湖名物の「鮒(ふな)寿司」が出てきて、これは主催者がわざわざ我々のために用意して下さったそうで、好みは分かれるでしょうが、発酵食品大好きな私としては感涙に咽ぶひと品でした。
もったいなくて、発酵が進みつつある鮒の身を箸の先にちょこっと付けては、それを舐めながらお酒をくいくい。
これだけで杯が何杯も進んでしまいました。
最後は皮とそこに付いた身に至るまで食べ尽くそうと取っておいたら、ちょっと目を離している間にホテルのスタッフが皿を持っていってしまいしばし呆然。
顔は笑いながら心は泣いた一瞬でした。
私の鮒寿司を返せ!
写真上:上原酒造様/写真下:太田酒造様