清酒造りに特に適した米ということで、食糧庁が各都道府県ごとに品種を特定したものが「醸造用玄米」です。
これを酒造業界では「酒造好適米」と呼んでいます。
有名なものでは兵庫県の「山田錦」から始まって、現在約80種以上の品種が選定されています。
長野県の酒造好適米は「美山錦」「白樺錦」「たかね錦」「金紋錦」「ひとごこち」の5品種です。
食糧庁による審査基準は一般のお米に比べて極めて厳格で、各種基準を満たしたものの中から更に「特上」~「3級」まで等級が分けられ、それが価格にも反映してきます。
ちなみにこの「酒造好適米」は高価で収穫量も限られているため、酒造りにはこれ以外の、いわゆる「一般米」も多く使われている事を付記しておきます。
「一般米」だからお酒の出来が劣るという事ではありません。
「酒造好適米」は、より酒造りに適しているという事であって、「一般米」でも造り手の腕でいかようにでも素晴らしい酒は出来上がってきます。
さて、それではその「酒造好適米」の特徴とは何でしょうか?
ひとことで言うと、大粒で、心白が大きく、タンパク質や脂肪が少ない、といった事が挙げられます。
「心白」とは米の中心にある白色不透明の部分の事ですが、この「心白」の部分は、米の主成分であるデンプンの詰まり方が粗く、そして軟らかくなっています。
ですので吸水しやすく、麹菌の菌糸も中に向かって伸びやすい環境にあり、その結果、麹が酵素を生成する力も強くなり、その酵素が「デンプン」を「ブドウ糖」に分解する、いわゆる「糖化」が進みやすくなるのです。
また、なぜタンパク質が少ないほうがいいかと申しますと、米に含まれるタンパク質は、麹菌が生成する酵素によってアミノ酸に分解され、清酒の旨味成分にもなるのですが、このアミノ酸が多すぎると雑味となって酒質を損ねてしまいます。
いずれにしましても、このように厳格な基準を通った「酒造好適米」を、大吟醸酒クラスになると半分以下、更には監評会出品酒クラスになると6割以上削ってしまうのですから、清酒製造とは本当に贅を尽くした、それだけに一粒たりとも無駄に出来ない「魂」の作業と言うことができるでしょう。