相性の悪い店というのはあります。
東京渋谷のCホテル内にある中華レストラン「C」。
中国料理界では有名な大御所の弟子がトップシェフを務め、料理は旨いが値段もそれ相応(つまり高い)。
でもそれを承知で、このお店の料理を一度味わいたくて初めて入ったのはしばらく前の事でした。
その時は料理以前に、我々の席を担当した黒服の態度の横柄さに閉口し、支払いの際には、ポイントが付くと思って出したそのホテルのカードを「当店ではポイントは付きませんから」と、一瞥しただけで返すでもなく、トレイの上にカードを放っておかれたあの不快さは今でも忘れません。
あのまま私がカードを取らなかったらどうなっていたでしょうか。
しかし先月、そのホテルの喫茶で大切な方と打ち合わせをする前に、ランチを取るためにその中華レストランに入ったのは、ホテル内の他のお店はすべて満席だった、それだけの理由でした。
メニューを渡しに来た黒服に、あと1時間しかない事を告げ、その上で彼が選んだコースメニューを選択したにも関わらず、料理は遅々として運ばれてきません。
残り15分を切ったところでまだメインもデザートも出てこない事に痺れを切らし、「もうここまででいいから」と伝えると「あ、1時30分まででございましたね。急がせます」と優雅に振る舞う彼は気を利かせたつもりだったのでしょうが、この時点で君は全然気を利かせてないからね。
そしてほぼ同時に出てきたメインとデザート。
メインの炒飯を瞬時でかっ込み、デザートのプリンはひとくち手を付けただけで即会計。
「すみません」のひとこともなく、そのかわりに「当店は少し前からホテルポイントが付くようになりました。もしカードがございましたら」と言われた滑稽さに、カードを出しながらむしろ笑ってさえしまった、ある意味貴重なランチでした。
料理そのものは秀逸なのに、「人」で美味しさって変わるんですね。