2017.09.23
もう何度目になるのか数え切れない中上健次の「枯木灘」を読了しました。
圧倒的な筆致。
むせ返るような濃密な文章。
30歳を越えたばかりでこのような小説を書き上げた中上の才能には、読み返すたびにただただ感嘆するしかありません。
被差別部落を「路地」と呼ぶ、その呼び方も中上によって完全に定着しました。
そんな紀伊半島新宮市の「路地」で生まれ、極めて複雑な家系のもとで育った中上の出自そのものを描いた「岬」「枯木灘」「血の果て至上の時」の3部作は、中上が作品に込めた思いを受け止める覚悟を持って対峙しないと読み進めない迫力に満ち満ちています。
ちなみに「枯木灘」を含む3部作の複雑な家族関係は、文庫版「枯木灘」にのみ載っている家系図を何度も開かないと理解できないほどです。
私はコピーを取って他の作品のページの間にも挟んでいます。
中上が生まれ育ち、数々の小説の舞台となった新宮を2度訪れました。
中上原作で映画にもなった新宮の「火まつり」にも行きました。
高校時代たまたま読んだ中上健次の虜となり、今なお中上の作品を取り出して読むたびに、その文章と筆致にひたすら魅せられる毎回です。