最近感動した本を何点か。
まずは漫画から。
卯月妙子「人間仮免中 つづき」。
数年前に発売された「人間仮免中」の続編ですが、これは凄い。
若い頃にはカルトAVにも出演して一躍有名になった筆者が、精神の病と闘いながらも、何十歳も年上の彼氏ボビーさんと日々を懸命に過ごす姿を、極めて明るいタッチで描いた自伝です。
特に、筆者が発作的に歩道橋から飛び降りて九死に一生を得てから(前作「人間仮免中」掲載)、ボビーさんの存在の大きさと生きる喜びとを実感するシーンは、涙なしには読めません。
漫画というジャンルを越えたノンフィクションの傑作です。
続いて蛭子能収「地獄に落ちた教師ども」。
35年ぶりに再販された、今をときめく蛭子さんの処女作です。
私が蛭子能収の存在を知ったのは今から35年前の浪人時代でした。
定期購読していた漫画評論誌「ぱふ」で、蛭子さんは「ガロ」系漫画家としてたびたび登場していて、本書を読んで大いに衝撃を受けたのでした。
当時は、こんなグロでシュールな作品を描いている蛭子能収とは一体どんな奴なんだと思っていたのですが、まさかあんなにいい人だとは(笑)。
先日ビレ・バンに並んでいるのを見つめて即買いでした。
もう一点は新書から、橋本崇載「棋士の一分」。
橋本崇載は将棋界のトップクラスに君臨する若手棋士です。
片や、NHKの放映ではいきなり金髪パーマで登場して度肝を抜いたり、歌舞伎町の片隅で将棋バーを開いたりと、話題に事欠かない名物棋士でもあります。
そんな彼が、ぬるま湯に浸かりきっているプロ将棋界を一刀両断に切り捨てたのが本書です。
何より凄いのは、閉鎖的なプロ将棋界の内幕や、そこに携わった棋士のエピソードを躊躇することなく描写していることです。
そしてそこには、今プロ将棋界が変わらなければ未来はなく、棋界の存続のためならば自分は喜んで捨て駒になるという強い覚悟が伝わってきます。
棋士の新書というと明らかに口述筆記と思われる軽い読み物が多い中、本書は筆者の魂がこもった迫力の一冊です。