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常連への一歩

2014.06.02

酒場に限らず、友人・知人の常連のお店に連れて行ってもらった時、必ず心掛けている事があります。
若い頃に私がお世話になっている方に言われた教えです。

「紹介者に連れていってもらったお店に、次にその方抜きで行く場合、最初の3回は必ずその方にひとこと許可をとること」。

至言です。
以来、私は必ずそうしています。

常連とは、その方がお店と長い時間を掛けて培ってきた信頼関係の成果です。
ですから、たった一度同行しただけの自分が、その方と同じだけの人間関係をお店と築けたと勘違いしては、その方への敬意も含めて断じていけないと思うのです。

その方には随分といろいろなお店に連れて行って頂きました。
若い頃の自分には身分不相応なお店ぱかりです。

中でも銀座の「MORI BAR」、恵比寿の蕎麦懐石「翁」は、今も憧れの名店です。

オーナーバーテンダー毛利さんのドライマティーニを飲みに来る客があとを絶たない銀座「MORI BAR」。
そんな毛利さんと親しく話すその方を見て、いつか私もああなりたいと羨望に包まれた夜を何度も過ごさせて頂きました。

ご一緒した時、メニューにないその方だけの料理の数々をお相伴に預かった恵比寿「翁」。
お勘定の時、払うと言って聞かない私に、「今日は私が払います。でもそこまで言うなら、いくら掛かったかだけ、社会勉強のために見せてあげましょう」と言って見せて下さったその値段の凄さに思わず仰け反り、「払わなくて良かった」と胸を撫で下ろした私。
でもそのお店の料理と空間が好きで、その後何回か行かせて頂きました(ただし通常のコース料理で、ですが)。

私は5千円払って初めてのお店に行くよりも、1万円払って馴染みのお店に行く派です。
何らかのきっかけでお気に入りのお店が出来れば、そこにとことん通い詰めています。

要は、じっくりと時間を掛けて、お店と自分とが価値観を共有し合える1軒に出会えることが、即ち人生の幅にも繋がると思いつつ、今日も夜の街に繰り出しています。