前回クラシックの話を書いたので、思い出話をもう少し。
学生時代、お金が無い中でよく通ったのは、サントリーホールの、それもP席でした。
サントリーホールはステージを客席が360度取り囲む、当時としては画期的なスタイルのホールでしたが、P席というのはその中でも最も安価な、要はステージの真後ろの席でした。
音響が悪いというデメリットはありましたが、しかし通常のコンサートでは観られない指揮者の表情を真正面から楽しめたり、P席の最前列はオーケストラのメンバーの頭に触れる事ができるほどの至近距離でしたのでメンバーの仕草やリアルタイムの楽譜が目の前で楽しめたりと、当時の私から見れば大変コストパフォーマンスに優れた席でした。
ところで当時から私の大好きなピアニストのひとりが、今は亡きクラウディオ・アラウでした。
そのアラウが晩年に来日公演を行なうという事で、喜び勇んで「チケットぴあ」に電話を掛けまくったものの、サントリーホールでのベートーベンの「皇帝」は全公演が瞬く間に完売。
がっかりしながらも、、彼が神奈川県民ホールで1回のみピアノソロのコンサートを行なう事を発見し、早速電話してみたところ、こちらはかろうじてチケットを取る事が出来ました。
でも驚いたのは当日です。
いざ会場に着いてみると、場内は何とガラガラ。
私は一番安い3階席に座ったのですが、演奏が始まっても客席は3分の1ほどしか埋まりませんでした。
私の周りも他の観客の姿はほとんどなし。
サントリーホールとのこのギャップは何なのでしょう?
しかしそんな中で演奏されたリストの「ダンテを読んで」、その素晴らしさといったら。
まさに「珠玉」という言葉が相応しい、圧倒的な迫力に満ちた名演でした。
最後にアラウが客席に向かって深々と頭を下げたあの姿は今も忘れません。
あまりの感動で、弾けもしないのに、そのあとすぐに分厚い楽譜を買ってしまったほどです。
結局最初の数小節で挫折しましたけど。
ガラガラといえば、学生当時たまたま日比谷公会堂の前を通り掛った時に開催されていた渡辺貞夫のライブ。
時間も空いていたし、いい機会だとその場でチケットを買って入ったら、中は空席だらけ。
ナベサダの名演を聴けば聴くほど、もったいないと心の中で叫んでいる自分がいました。
最近ではしばらく前に軽井沢大賀ホールで開かれた、大・大・大好きな矢野顕子のコンサート。
彼女の素晴らしさを娘にも伝えたくてふたりで行ったのですが、こちらも客席の半分以上が空席で、もったいない!のひとこと。
でもそんな中でいつもと変わらず歌って弾いてそして喋るアッコちゃんは相変わらずチャーミングで、娘とふたりハッピーな気持ちで会場をあとにしました。
それにしても彼女の「ROSE GARDEN」はいつ聴いても凄いなぁ。