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武士道シックスティーン

2010.04.29

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誉田(ほんだ)哲也という作家がいます。

「ジウ」三部作や「ストロベリーナイト」をはじめとする、パワフルな警察小説を立て続けに発表。
そのエンターテイメント性に満ちたストーリー展開と魅力溢れる登場人物に惹かれて次から次へと彼の著書を読み漁る、私もそんな誉田哲也ファンのひとりです。

そんな彼の一連の作品のひとつとして何気なく読み始めた初の青春小説「武士道シックスティーン」。
最初は、誉田哲也が青春小説?そんな思いに駆られながら、しかしページをめくる毎に、私はこの作品にすっかり魅了され、虜となり、あっという間に読了し、最後は惜しむようにページを閉じていたのでした。
喫茶店の片隅で最後の一行を読み終えた瞬間、40歳半ばのこのオジサンは年甲斐もなく、目尻に溜まった涙を周囲にバレないようにぬぐおうとあたふたしながら、しばしその感動を噛み締めてボーっと放心状態のままでした。

物語は、関東の名門剣道部に所属する女子高生ふたりを主人公に、緻密に描かれた剣道の練習や試合のシーン(誉田哲也の本領発揮!)を随所に取り入れながら、彼女たちの出会いや別れ、悩みや苦悩を、笑いあり涙ありで描いています。
オジサン、せめてもう25歳若かったらな、そんな気持ちに思わず駆られてしまった、爽やかで若々しい青春小説です。

ちなみに著者プロフィールの一文「本書は著者初の、人がひとりも死なない青春エンターテイメントである」には思わず噴き出してしまいました。

さて、そしてこの4月。
「武士道シックスティーン」がついに映画化されました。
やっぱ人気あったんだね、この小説。
読み終えてから封切りまでのこの日を指折り数えて待ってました。

それでですね。
先週末、大切な方との会食があって上京した際、翌日に時間を作って早速観て参りました。
(余談ですが、その方との今回の会食のテーマは「ホワイトアスパラガス」。次から次へと繰り出される「ホワイトアスパラ」づくしの品々に、春の香りを満喫して参りました。)

さて、向かったのは新宿三丁目に近いミニシアター。
封切翌日の日曜日だったこともあり、売り切れを恐れて少し早めに劇場に足を運び、全席指定の座席表から私の好きな、少し後方で通路側の座席を無事取ることができました。
ちなみにこの全席指定というシステム、私は嫌いです。
好きな席を好きなように選ぶのも、映画館に通う醍醐味のひとつだと思うのですが・・・。

さて、観終わっての感想。
とても良かったです。

雑誌などで映画評論家の採点を見ると決して高い評価は与えられていないのですが、でも私にはとても面白かったし楽しめました。
原作の冒頭から最後までを忠実に、そして丁寧に描き切っていて、それはそれはとても素敵な作品と思いました。

何から何まで対照的な主人公の女子高生ふたりのやり取りに大爆笑したり、そうかと思いとふたりの心の揺れ動きが自分の心の琴線に触れて思わず涙が溢れたり・・・。

これから観る方のためにストーリーには触れませんが、主人公ふたりの心の動きを、あえて台詞を多用せずにできるだけ表情や動作で表現しようと試みた、その丁寧な作り込みにとても好感が持てました。

あえてひとつだけ難点を挙げるとすれば、主人公ふたりの剣道のシーンは、もっとレベルの高い竹刀捌きを見せてほしかった。
どう見ても、これが全国トップレベルの剣道とは思えません。
まあスタントではなく女優さん本人が実際に演じているのだから仕方ないといえばないのですけどね。

なお小説は続編として「武士道セブンティーン」、さらに「武士道エイティーン」も出ています。
こちらも胸キュン(死語?)の感動ものです。
もしよろしければぜひご一読あれ。