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昨晩の酒

2009.10.24

昨日は親しい方と上田の街に繰り出して一杯。
その方と飲む時は、酒の種類が豊富というのがお店の選択基準なので、昨夜も上田駅から数分の、日本酒と焼酎がずらりと居並ぶ一軒に足を運びました。

いくつかの酒肴を頼んで、出だしからもちろん日本酒。
グラス一杯売りのところを、いろいろな種類が飲みたいからとわがままを言って大徳利で出してもらい、あとはお互いのグラスに差しつ差されつ。
今日のテーマは「純米吟醸を飲み比べる」です。

まずは、ふたりとも大好きな愛知県名古屋市のM酒造、当主の名前を銘柄にした「K」からスタート。
いつもの通り旨みがたっぷりと詰まった味わいは、酸もそれなりに強いのだけれど、何よりもバランスがしっかりと取れていてキレよく、旨口ながらすいすいと杯が進みます。
やはり素晴らしい出来栄えです。

次に頼んだのは福井県で全国区をひた走るK酒造の、蔵元そのままの銘柄「K」。
私が日頃から大好きな銘柄です。
何よりも、どのお酒を飲んでもしっかりとその蔵と分かる香りと味わいを醸し出している事にいつも感動します。
その中でもこの「純米吟醸」は、私が特に好きな一品。
私のベロメーターによる勝手な推測では、この「純米吟醸」、数年前まではねっとりと舌を覆う、どちらかというと重厚な味わいだったのを一変、味わいのベクトルはそのままで、軽快かつふわりと柔らかな口当たりに変更されたのではないでしょうか?
いずれにしても「K」ならではのおいしさはいつも健在、この日も堪能させて頂きました。

続いては長野県のお酒という事で、今ぐんぐんと勢いを伸ばしている奥信濃の蔵元T酒造店の、金紋錦で仕込んだ純米吟醸「M」。
しばらく前にこの蔵元の同じ金紋錦仕込み「ひやおろし」を飲んで、とろりとした旨みが口いっぱいに広がるその味わいに感動した覚えがありますが、このお酒も同様でした。
口に含んだ瞬間から深く芳醇な旨みがしっかりと感じられ、喉に消え去るフィニッシュでは余韻が心地よく残ります。
そのあと味を心地よく感じながら、ついもう一杯飲み進めてしまうのです。

そして同じ長野県は中信に位置する、明治を代表する文豪の作品名を銘柄にしたO酒造店の「Y」。
私は以前からここの蔵元の姿勢やお酒がとても好きで、今回もそんな思いを抱きながら頼んだ一杯でした。
飲んでみて感じるのは、やはりバランスの素晴らしさ。
甘みや旨みや酸がきれいに絡んで、しかもふわりと柔らかく、最後はスッと口中から消え去るあと味の素晴らしさ。
これまた飲み飽きしない(というのは私の目指すところでもあります)逸品でありました。

最後に頼んだのは、山廃仕込みで有名な石川県S酒造の銘酒「T」。
生酛仕込みや山廃仕込みのお酒というのは、最初は抵抗があるかもしれませんが、一度ハマるとそのままぞっこんになる不思議な魅力を持っています。
このお酒もそれに違わず、複雑かつ濃厚な味わいにシャープな酸がきれいに調和して、ダイナミックな日本酒の醍醐味を堪能できる、秀逸なお酒でした。

いつもでしたらまだまだ追加で頼みたいところですが、この日は飲み始めた時間が遅かったこともあって残念ながらタイムアップ。
文字通りほろ酔いでお店をあとにし、その晩の酒宴はお開きとなったのでした。

ちなみにその後、一度は帰途に着いたものの、そういえばここしばらく馴染みのバー「リビアーモ」(2008/2/25に登場)に行ってなかった事をふと思い出し、急遽Uターン。
久々のカウンターに腰を落ち着けて、まず頼んだローランドウイスキー「オーヘントッシャン12年」をストレートで。
あっという間にグラスが空になるのと同時に、締めの一杯で大好きな「マッカラン12年」をやはりストレートで注文。

ちびちびとグラスを舐めていると、オーナー兼バーテンダーの坂田さんが「実はここのところ2時間掛けてうどんを打っているのだけれど、よかったら食べません?」
迷う事なくお願いして待つことしばし、つゆに浸かった冷たいうどんが目の前に出されて、ひと口食べた瞬間、これがうまいのなんの!
きちんと麺に腰があるのはもちろんとして、こんなにしっかりと粉の味わいが口中に感じられるうどんを食べたのは久方ぶりでした。
噛めば噛むほど小麦粉の旨みが増してきて、本当においしい。
聞いたら塩はゲラントを使用しているとの事、彼らしいこだわりです。
加えて、つゆのおいしい事といったら。
しかも食べ進む途中でサプライズが。
彼がほんのわずかな泡盛をつゆに流し込んだその瞬間に味わいが一変、深みと旨みがいっそう増したつゆに感激しながらうどんを一気にかき込んでおりました。

もともと食事には定評があるこのお店ですが、まさかこんなにおいしいうどんまで食べられるとは。
和食と日本酒に始まり、最後もバーでうどんという思わぬ「和」の邂逅で締めを飾った嬉しい一夜でした。