上田から車で30分程の、西軽井沢に位置する「メルシャン軽井沢美術館」へ行って参りました。
普段から前を通る機会は多いものの素通りする事が毎回で、今回も近くを運転中、時間に余裕があったのでふと思い立って立ち寄ってみたのは、夏の日差しが降り注ぐ日曜の午後でした。
ここは「美術館」とはいうものの、敷地内で現在もシングルモルトウイスキー「軽井沢」を製造しているれっきとした現役の蒸留所で、その他にも人気のレストラン「エルミタージュ・ド・タムラ」、緑に囲まれた爽やかな庭園、野外で寛ぐ事もできるカフェ、ウイスキーショップやミュージアムショップなど、いくつもの施設が楽しめる開放的な空間となっています。
この日の美術館は次の展覧会の準備で閉館中だったのですが、それでも敷地内を散策しながらの楽しいひとときを過ごす事ができました。
ウイスキーと食のショップ「メルシャンプラザ」に立ち寄ると、ちょうど入口の看板に「ウイスキー蒸留所見学」の案内が出ていて、「次回見学は15時から。ご希望の方は少し前にこちらまでお集まり下さい」と書いてあったので、せっかくだからとそれまでの時間を店内で過ごし、やがてスタッフの女性から声が掛かったのを合図に私もその列に加わりました。
係の女性が集まった10人程を引き連れて、敷地の片隅にある、普段は「関係者以外立入禁止」の蒸留所内へと我々を誘導します。
施設そのものはとても小じんまりとしていて、麦芽の糖化槽・発酵槽そしてウイスキー蒸留のシンボルともいえるポットスチル(蒸留釜)が並んでいる蒸留所、続いて出来上がったウイスキーを長い眠りに就かせる貯蔵庫、その2つの建物を、説明を聞きながらざっと20分程で回り終えました。
印象的だったのは、真っ暗な貯蔵庫へ入った時のかぐわしい香り。
大量のシェリー樽が醸し出す芳香が暗い室内に漂って、その香りが熟成までの長い時間の重みを感じさせてくれたのでした。
ちなみに私はウイスキーも大好きです。
基本はスコッチウイスキーなのですが、日本産のウイスキーの美味しさは、他のウイスキーとはまた一線を画す特徴と持ち味があると思っています。
例えて挙げれば今回のメルシャン「軽井沢」、ニッカ「余市」、サントリー「山崎」・・・。
どれもスコッチやアイリッシュやバーボンに負けない、出色の味わいです。
馴染みのバーへ行き、ウイスキーの銘柄だけを指定すると、最近はその中から「カスク・ストレングス」、即ち一切加水していない、アルコール度数60度前後の樽出し原酒を勧められます。
以前はなかなか手に入らなかったこの「カスク」が今はかなり出回るようになっています。
確かに度数も高く、ストレートで飲むにはかなり強いのですが、水割りにするにはやはり惜しく、大抵はロックかトゥワイスアップ(常温で水と1:1で割る飲み方)でちびりちびりと頂いています。
そうしているうちに、おこがましい言い方ですが、以前スコットランドへ行った時、観光そっちのけでウイスキー蒸留所を回った時のあの空気や匂いが鮮やかに蘇って来て、心地よい酔いがさらに体の隅々まで回っていく気がするのです。