いつも暇さえあれば、ジャンルを問わず飲み歩く毎日。
選ぶお店は、どちらかというと「広く浅く」というよりは「深くても狭く」のタイプで、気に入ったお店に何度も通い詰めるのが常です。
東京へ行った時、そんな一軒としてつい足が向いてしまうのが「Chinois シノワ渋谷店」、私が大好きなワインバーです。
時には会食に、時には仕事で疲れた体を癒しつつ深夜に、その時のシチュエーションに合わせて使える、ワインも料理もそして空間も充実した大人のお店です。
渋谷ハチ公口から東急本店へ向かう途中、とあるビルの最上階に「シノワ渋谷店」は特に目立つ看板もなく、さり気なくお店を構えています。
エレベーターに乗って8階に着くとそこはいきなりお店のエントランス、すぐにスタッフが出迎えてくれて、そこからが「シノワ」ワールドの始まりです。
一歩進むと、心地よい賑わいと共に、店内の由来でもある「シノワズリー」模様に囲まれた店内が目に入ってきます。
客席は、中央にL字型のカウンター、そしてその隣に広々としたテーブル席、さらにはカウンター脇の階段を上がると中2階にもテーブル席がある、いわゆるメゾネット構造になっていて、渋谷の片隅にこのような空間がある事に驚かされます。
私のお気に入りはカウンター席、ここでいつも表向きはシャキっと、でも心では気持ちよく酔いどれています。
思い起こせば「シノワ」との馴れ初めは、「シノワ」1号店の「銀座店」オープンの時に頂いたDMでした。
初めて訪問した時からその落ち着いた雰囲気の虜になり、何度か足を運びましたが、決して広くないキャパシティもあいまって、しばらくするといつ行っても満席、それで次第に足が遠のいてしまいました。
そんな時届いたのが、2号店となる「渋谷店」オープンのお知らせ。
銀座店とはまた打って変わって広々とした開放的な雰囲気、加えてオーナーの後藤さんがほとんどはこちらの渋谷店にいらっしゃる事もあって、いつの間にか足繁く通い詰めておりました。
ちなみにオーナーの後藤さんは私と同い年、豊富な知識と柔らかな物腰でファンも多く、いつも後藤さんとお話しすると、よし私も頑張るぞ!と、改めてたくさんの元気を頂いて帰るのです。
さて、肝心のワインや料理はと申しますと、まず嬉しいのが、その日ごとに抜栓された数多くのワインがグラスで飲めること。
最初は軽い白から始めて、最後はフルボディの赤、あるいはデザートワインに至るまで、すべてグラスで通す事も可能です。
しかも自分が飲みたいタイプのグラスワインを悩んでいると、スタッフから「お好きなタイプをおっしゃって頂ければ開けますので遠慮なくおっしゃって下さいね」という、嬉しいひと言が掛けられます。
ボトルに至っては、メインのフランスからこのお店の目玉でもあるカリフォルニアやオーストラリア、ニュージーランドまで網羅して、リーズナブルで豊富なワインがずらりと勢揃いしています。
私がボトルを頼む時は、このお店で大好きになったシャンパン「Deutzドゥーツ」から始める事が多い今日この頃。
でも「今日は喉が渇いたからまずビール」から始めるのもOK、そんな肩肘張らないところもこのお店の魅力です。
お料理は、「その日のお勧め」を含む魅力溢れるひと皿がこれまたずらりと並んでいて、「メニュー選び」の楽しさを満喫できること請け合いです。
あるいは前菜、主菜、デザートからそれぞれ選ぶプリフィクスもあります。
もし余力があれば、「シノワ」名物「フォワグラ丼」をぜひ召し上がってみて下さい。
もち米の上にフレッシュのフォワグラが乗った一品は、その美味しさと共に、和洋の食材のマリアージュに既成概念が覆されます。
ちなみに、アフターディナーでその日の締めの一杯だけ、なんて利用も快く受け入れて下さいます。
私なんかはむしろそちらの方が多いです。
日付が変わる頃に訪れて、グランヴァンの赤、あるいはヴィンテージポートを一杯、その日の余韻を噛み締めながら味わって「シノワ」の夜が更けていきます。
優秀なスタッフに門戸を広げてしっかりと独立させていくのもこのお店と後藤さんの素晴らしさ。
余談ですが、しばらく前にオープンした3号店の銀座「ビストロ・ヌガ」もとてもとても素敵な一店で、ただ唯一の難は、こちらも既になかなか予約がとれない事です。