お酒には色があります。
搾った直後のフレッシュなお酒でも、タンクの中を覗けばきれいな淡黄色が確認できます。
これが熟成を重ねていくと、タンク貯蔵でもビン貯蔵でも、少しずつ着色が増していきます。
熟成による着色の原因は今も完全には解明されていません。
しかし主に、清酒中の糖類とアミノ酸とが反応して着色物質を生み出す「アミノ・カルボニル反応」によるものとされています。
また、熟成中のお酒の温度が10℃上がると着色の速度は3倍速くなると言われています。
上でも触れましたが、糖やアミノ酸が多い、いわゆる濃度の高いお酒は、その速度は更に速くなります。
今、メーカーや酒販店がしっかり冷蔵管理をしているのは言うまでもなく品質管理が目的ですが、その中のひとつとして着色を極力押さえる事も含まれるのはもちろんです。
いずれにしましても、お酒には色はあるのです。
何が言いたいかというと、日本酒には程度の差こそあれ、ある程度の色があるのが自然で、決して無色透明ではない事をお分かり頂きたいのです。
お酒を無色透明で提供できるのは、ひとつに「炭素濾過」という技術を使うことに所以します。
「炭素濾過」とは、搾ったお酒に活性炭を入れ、炭素の表面に空いた無数の細かな穴に着色や雑味の原因となる物質を吸着させて、それをそっくり濾過してしまい、お酒に付いた色や雑味を除去する方法です。
同じお酒でも濾過する時期によって色や味は変わるので、その都度投入する炭素の種類や量を調整します。
この「炭素濾過」によりお酒は清澄でクリアな味わいとなりますが、炭素を入れ過ぎるとそのお酒本来の個性や味わいも削り取ってしまう、いわば諸刃の剣です。
昨今は、特にいいお酒になればなるほどこの炭素濾過を行なわない、即ち「無濾過」にこだわる蔵元が増えています。
蔵元の意識と醸造技術の向上、そして酒販店や消費者のニーズ、双方によって、搾ったまま極力手を加えないお酒が支持されるようになってきた事が一因です。
そして何度も申しますが、それに伴い「お酒には本来色がある」という事が一般的に認識されてきた事は本当に嬉しい限りです。
ちなみに弊社は、レギュラー酒クラスでは「炭素濾過」を行なっております。
広く顔の見えないお客様にも安定した品質のお酒をお届けしたいと思うからです。
しかし反面、炭素濾過を行なわないお酒は、多少の差こそあれ色があるにも関わらず、それに関するクレームが一切来ないのは本当に嬉しい限りです。
これは流通の先頭に立っている酒販店や飲食店の皆様がしっかりと説明して下さっている事と、消費者の皆様も日本酒を理解しようと勉強して下さっているおかげだと思っています。